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W+K TOKYOに聞く、「対話するクリエイティブ。今、これから」

Wieden+Kennedy Tokyo

さまざまなメディアを自由自在に操りながら、世の中をアッと驚かすクリエイティブを創造し続けるクリエイティブエージェンシー「W+K Tokyo」。「W+K(ワイデン アンド ケネディ)」は、1982年にダン・ワイデンとデビッド・ケネディの2人によって、アメリカのポートランドで創業。「W+K Tokyo」は1998年に設立された。以来、そのクリエイティブは、ファッションやアート、スポーツに留まらず、日本企業の海外進出のブランディングを手がけるなど、クライアントの業種も多種多様だ。また現在、メンバー5人を募集中の次世代クリエイティブ増強プログラム「The Kennedys」にも、各業界から注目が集まっている。サプライズなクリエイティブを生み出す彼らの根源にあるものとは? そして「The Kennedys」とは? 長谷川踏太さん(写真・左)とマイケル・ファーさん(同・右)、ふたりのエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターに、「W+K Tokyo」の“今”について聞いた。 

ーーさまざまなクリエイティブを創造している「W+K Tokyo」ですが、近年の代表作を教えてください。

長谷川さん:2016年に行なった『NIKE』の”  “#身の程知らず”というタグラインがついた、「JUST DO IT」のキャンペーンですね。このキャンペーン自体は、今の若い人たちが「なぜスポーツをやらなくなったのか?」というリサーチから始まったのですが、最初から自分で可能性を消してしまうような声が、結構出てきたんです。それに対して『NIKE』というブランドが、日本の社会に対して、どういうメッセージを投げるのか? が重要でした。

マイケルさん:『NIKE』との仕事においては、刺激的で挑発的な視点を提示できるように心がけています。このキャンペーンでは“ヘイトとラブ”、つまり両極端の意見を持つ人が生まれました。でも、そこに会話が生まれて話題になっていく。そこもこのキャンペーンの重要なポイントのひとつですね。

 

ーー「W+K Tokyo」としてのクリエイティブの創り方、仕事の進め方についてお聞かせください。

長谷川さん:初めてのブランドの場合、こちら側で「このブランドが何者なのか?」をリサーチして再定義します。社内のさまざまな領域の方に話を聞いて、そのブランド独自の“何か”……僕らはそれを“ブランドボイス”と呼んでいますが、まずはその“ブランドボイス”を見つけることから始めます。

マイケルさん:私たちの仕事は、消費者とブランドとの良い関係を築いていくことだと考えています。そのため、ブランドの“ブランドボイス”をきちんと把握した上で、“どう見られたいか?”よりも“世界をどう見ているのか?”を理解するように努めます。そして、そのブランドにしか出せない独自の声を抽出し、顧客の皆さん(消費者)に向けてメッセージを発信していきます。

 

ーークリエイティブの制作過程において、ユニークな部分はありますか?

マイケルさん:社員59人のうち、75%が日本人で、25%は外国人です。クリエイティブの制作においては、通常2人の日本人クリエイターと、必ず1人外国人のクリエイターが入るようにチームを結成します。なぜかといえば、日本人側から出たインサイトに対して、外国人の違った視点が加わることでサプライズが起こるかもしれないから。クリエイティビティはカオス(混沌)の状態から生まれる。私たちはそう信じています。西洋人と日本人、男性と女性、若手とベテラン……。バックグラウンドや感性が違う者同士がコミュニケーションを重ねると、マジックは起きるもの。いつもカオス状態の機会を作ることが重要だと考えています。

長谷川さん:同じ言葉を話せないのは障害ではありますが、それが良いハプニングを起こす可能性もある、ということですね。

 

ーー仕事をする上での心構えとして、社員の皆さんに指針として伝えていることはありますか?

長谷川さん:「見たコトない!」とか、常にそういう新しいアイデアを生むことですね。

マイケルさん:働いている人たちにとって、人生の中でいちばんの仕事ができる場所になってほしいと思っています。そうなることが我々の使命だとも考えています。「W+K」には、さまざまなフレーズがあるんです。例えば、「Walk in Stupid!(バカになって会社に来なさい!)」。前日には「バカだと思われるんじゃないか?」と怖がって言えなかった意見も、次の日にはリセットして言ってほしいんです。続いて、「Fail Harder(失敗をたくさんしなさい!)」。安全なものばかりを求めていると、サプライズとか、アイデアは生まれない。そして、「Move me, dude!(俺を感動させてみろ!)」。笑ったり泣いたり、何かしらの感情を呼び起こさせるために、「人の心を動かす“何か”を作れ!」ということですね。

ーー「W+K」では、アムステルダム、ロンドン、上海、サンパウロに続き、ここ日本でも、次世代クリエイティブ増強プログラム「The Kennedys」が間もなくスタート。現在、参加者を募集中です。聞けば、エントリーにあたって10の質問があり、例えば「“ありきたり”の写真を撮ってください」など、質問項目がとてもユニークです。意図するところは?

長谷川さん: いま、良い写真を撮ろうとするカルチャーの中心にインスタグラムがありますよね。これはその逆。「何がつまらないんだろう?」と考えることは、「何が面白いんだろう?」と考えることと対だと思っていて。そういう視点をもった人を探しているんですよね。

マイケルさん:“ありきたり写真”として撮ってきたものに、(自分が)どういう風に心を動かされるのか? その思考のプロセスを聞けるのがとても楽しみです。

長谷川さん:この質問に限らず、「いちばん破壊したい概念は何ですか?」など、出題させていただいた10題にはすべて意図があります。質問に対してどうアプローチするのか? どういうプロセスで臨むのか? このあたりの独創性に期待させてください。

ーー応募人数は5人。メンバーに選抜されると、7ヵ月の間、「W+K Tokyo」でどんなプログラムをしながら過ごしていくことになりますか?

マイケルさん:まずは、クライアントプロジェクトですね。直接クライアントとの関係を築きながら、我々やクリエイティブディレクターがサポートをしながら、実際にクライアントワークをしていくことになります。予算やディレクション、プレゼンテーション、そういう基盤づくりのすべてをやってもらう予定です。また、そのほかにも「W+K Tokyo」のメンバーによるワークショップや、外部のスピーカーによる講義、私の英語のクラスなども考えてます(笑)

長谷川さん:英会話教室の英語って……つまらないじゃないですか。だから、「コンセプトについて話す時には、こういうボキャブラリーが必要!」といった風に、クリエイティブなイングリッシュスクールをやったら面白いのかなと。

マイケルさん:私自身。英語の先生をやったこともあるんです。英語を使ったプロジェクトの進め方、海外オフィスでの働き方、外国人と共創する面白さなど、さまざまなことを体験し、学んでほしいと思っています。海外拠点と一緒に、プロジェクトを進めていきたいとも考えています。「The Kennedys」とはつまり、「W+K Tokyo」本体としてやっている仕事に対するアナーキー、言うなればパンクなんです(笑)

 

ーー最後の質問です。現在、テクノロジーの進化に伴って“メディアのあり方”が変わってきています。それに対してお二人はどのような考えをお持ちですか?

長谷川さん:そのあたりはニュートラルにみています。共通して言えるのは、面白いアイデアやクリエイティブを作る能力は、テクノロジーが進化しても時代が変わったとしても、一緒なんですよね。だからこそ、自分のクリエイティブ力を信じてほしいですし、その力を発揮できるように常に備えておく姿勢も大切だと思っています。

マイケルさん:たき火の周りで話をしたり、みなで歌をうたったり。遠い昔に遡ると、プリミティブな方法でモノゴトを伝えていた歴史があります。では、現代はどうでしょうか。五感を延長・拡大させるツールとして多くのメディアが生まれ、いまはソーシャルメディアによるコミュニケーションが花盛りです。でも根本の表現の部分は、たき火の周りで語り合うことと変わってはいません。大切なのは対話です。私たち「W+K Tokyo」は今後も、さまざまな人たちと対話しながら、価値あるクリエイティブを作っていきたいと思います。

PROFILE

Wieden+Kennedy Tokyo

米国・ポートランドに本社を置く独立系クリエイティブエージェンシー。ニューヨーク、ロンドン、アムステルダム、上海、デリー、サンパウロ、東京にオフィスを構える。企業と顧客との間に“強く刺激的な関係”を創出するハイブリッドな会社として、さまざまなバックグラウンドを持ったクリエイターたちが得意分野やスキルを生かし、ブランド構築を必要とする企業に新しい視点とクリエイティビティを提供している。

写真・三宅祐介 文・カネコヒデシ(TYO magazine) 編集・紺谷宏之

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