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プロデューサー対談、「納得できる仕事づくり」【前編】

TOKYO × AID-DCC

語り口は、いたって穏やか。しかし時折、会話にハッとさせられる。「ほどほどじゃ、やっぱり駄目」。こんな風に口を揃えるのは、「TOKYO」の武井寿幸さん(写真・右)と「AID-DCC」の山中雄介さん(同・左)。ふたりの肩書きはプロデューサー。国内外のクリエイティブアワードで多くの受賞歴をもつ制作会社に所属中だ。「僕からみて、山中くんがすごいなと思うところは……」。対談中、武井さんがこう話しはじめると、「人が集まる飲み会でよく見かけることですか?(笑)」と山中さん。「それもあるね(笑)」とした上で、「ウェブ含めたデジタルの領域は勿論、きちんと映像のことも理解していて、それをプロデュースもできるところ」と武井さん。得意な領域は違えども、お互いの仕事ぶりを知る仲なのである。そして今、両氏は謙遜することしきりだが、クリエイティブの分かるプロデューサーとして注目の最中にある。インタビュー前編では、それぞれのプロデューサー論を聞いた。

ーー普段、プロジェクト全体を見渡し、統括する立場にあるプロデューサーとして、どんなことを考えていますか?

武井(TOKYO):限られた予算の中でどれだけ面白くできるのか? どんなメンバーをアサインするとより最適なチームになるのか? プロジェクトが始まるときは、いつもそんなことを考えていますね。いちばん楽しいのは企画打ち合わせの時。プロジェクトの設計図を思い描いている時間です。現場ももちろん大好きだけど、やはり現場の主役は監督であり、カメラマンであり、PMであり。各々のパートのプロフェッショナルたちですよね。やはり僕は、いちばんプロデューサーとしての存在意義を残せるのは“企画打ち”の時だったりするのかな、と思います。

山中(AID-DCC):デジタルってもはやみんなの生活に欠かせないものになっていて、いろんな表現に活用されているので、「webのことだけ詳しい!」「webなら任せておけ!」では、生き残れないと思うんですよね。僕らはあくまでwebが得意分野なだけで、他の領域のことも理解しリスペクトして、企画やプロデュースをしていかないとクリエイティブもビジネスもスケールしていかないと思っています。

最近ですと、LINE乗っ取りのキャンペーンとして、「LINEサイバー防災訓練」というコンテンツを制作しました。LINE乗っ取り被害を疑似体験できる体験型ムービーなんですが、この仕事では、LINE App中で体験できる映像コンテンツというお題はあったものの、ストーリーや世界観、そこに紐づく技術的なアプローチまで全て、初期段階から考え抜きました。ここでも映像チームと何をどこまでできるのか等の表現部分、仕様部分を密接にやりとりして決めていきました。10〜30代の間で話題にしやすいポイントと40~50代の間にも刺さるような映像コンテンツにするのはどうすればいいか? 新しい体験をデザインするため、細部にこだわりました。

武井:クライアントが何を望んでいるのか。きちんとコミュニケーションをとりながら、企画の輪郭を作っていけると、プロモーションの全体像が見えてくるじゃないですか。僕らプロデューサーに求められているのは、打ち合わせで出てきたアイデアに対しての方法論として、「何が最適なのか?」ってことを同時に考えていけることだと思っています。こちらからアイデアをご提案させてもらうこともありますし、出てきたアイデアに対してどこまでそれをジャンプアップできるのか、そこが一番重要なポイントかなと。

ーーチームづくりの流儀はありますか?

武井:すごく生意気な言い方になるかもしれませんが、僕らチーム全体がプロフェッショナルでありたいなと考えています。(スタッフに)発注だけ出来ればあとはお任せで、なんてやはりできないですよね。そのために僕らも、知識や経験をよりつけていかないといけないなっていつも思っています。

少し前に制作したTVCM GREEさんの「消滅都市2」では、少しだけ手の込んだ仕掛けを施しています。スマホのゲームなのですが、テーマは記憶。“他者の記憶に自分を刻み込むこと”の大切さを臨場感をもって伝えるために、透過スクリーンに映写した東京の雑踏の映像を池松さん(俳優の池松壮亮さん)にプロジェクションしているのですが、実際の完成した作品には見えない大変さが結構ありました。

山中:CM、観ましたよ。どうやって撮影したのか気になっていました。

武井:今回CAVIARの田中(祐介)監督に無理を言ってご協力いただけました。時間や予算等、どんな仕事でも制約は当然あるものですが、そんな条件の中、どうやってスタッフの方々が思い描く理想の完成予想図に我々制作チームが近づけていくことができるのか。「このチームと仕事をしたら、きっとこちらの思い描く完成型にしてくれるはず」。こんな風に思ってもらうには、古い考えかもしれませんがやっぱり情熱で勝負するしかないのかなと。

「これ、(スタジオより)ロケのほうが面白いよね?」「これ、透過スクリーンを入れたほうがより表現として面白いんじゃない?」と出て来た提案に対しては、まずは可能性として形に出来るよう最善を尽くしてみる。アイデアをより良い形で仕立てることができるかは、スタッフの皆さんあってのことだと思っています。それは僕らでは出来ないことだったりもするし。だからそこに対しては我々ができることは全力で頑張るっていう。きちんとスタッフに対して信頼関係を作れるようなチームになりたいんですよね。

山中:日頃から関係性を作っておくのって大事ですよね。個を活かしてもらうために僕はなるべく個別にアサインした理由と期待していることを言葉で伝えるようにしてますね。僕自身も感じることなのですが、何を期待してアサインされたのか不明確な時はやりづらさを感じるので、少なくともスタッフに対しては提示するように心がけてます。あとはその個性を発注側へなるべく伝えるようにしてます。その個性がそもそもはまってなければ、アサインした後にお互いハッピーにならないと思うので。

武井:あとは表現に対して、やっぱりウソとか知ったかぶりをしないことでしょうか。僕が所属するTOKYOってテクノロジー領域にも強い、そういった作品もあるかもしれませんが、僕ら自身実は知らないことのほうがほとんどなんです。その道のプロフェッショナルなクリエイターの方々と仕事する時は、分からないことは分からないと素直に言うようにしてます。

山中:僕自身も、超プロフェッショナルな人たちと仕事をすると燃えるタイプだったりします。デジタル領域の人間だからといって、「映像やイベントやPRのことがわからない」「興味がない」「お任せします」というのは、違うと思います。お互いプロフェッショナルとして仕事するので前提としてリスペクトが必要で、本当の意味でリスペクトするために相手の得意分野を本気で勉強しないと嘘かなと思うし、アサインしたチームにも申し訳ないと思うんです。

PROFILE

TOKYO | 太陽企画株式会社

東京を拠点に企画・演出・撮影・CG・編集、そしてクリエイティブディレクションに至る、すべてのプロセスを一貫として担うことのできる、世界で活躍する全く新しい、エッジの際立つ最先端のクリエイティブプロダクション。CANNES LIONS Grand Prix、CLIO Grand Prix、メディア芸術祭 Grand Prix、ACC GOLD他、国内外の広告賞で数多くの賞に輝くなど、確かな実績・経験をもとに、世界に通じる高度な映像表現を発信し続ける。

PROFILE

株式会社エイド・ディーシーシー(AID-DCC)

2004年設立のインタラクティブクリエイティブ・プロダクション。企業や社会の「aid=助力」になるべく、ウェブとインタラクティブの分野を中心に多岐にわたる領域・表現・技術で数多くの仕事を手がける。“複雑に変化し続ける世界”を見据え、その中で生まれるさまざまな課題の解決を目指し、既成概念にとらわれないクリエイティブのかたちを追求する。Cannes Lions8年連続受賞、他にも国内外のクリエイティブアワードの受賞歴多数。

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