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ポケモン誕生から23年。
新作登場で話題のPokémonが仕掛けたデジタルプロモーションの舞台裏

Pokémon × PARTY × I&CO Tokyo × BIRDMAN

2019年11月15日に世界同時発売された『ポケットモンスター ソード・シールド』。3年ぶりのシリーズ完全新作となる本作は、すでに全世界で1600万本以上の販売本数を記録するなど話題となっている。本作の複数のデジタルプロモーションを株式会社ポケモンと共に企画したのが、クリエイティブ集団『PARTY』と『I&CO Tokyo』。今回はプロジェクトの中心メンバーに、ソーシャルメディアで大きな話題となったユニークなデジタルプロモーション施策の制作の舞台裏を聞いた。

全長7m超えの巨大ジオラマ、50種類以上の巨大ポケモン、20万通りのオリジナルムービー。誕生の背景にあったのは、緻密に設計されたベストなチーム編成。

——今回のプロモーション施策はどういったものだったのですか。

高宮範有さん(I&CO Tokyo共同代表):今回発売された『ポケットモンスター ソード・シールド』(以下、ポケモン剣盾)で初めて体験できる機能がいくつかあるのですが、その中でも特に目玉となる二つについて、リリース前に楽しみながら機能をわかりやすく伝えるコンテンツを作りました。

高宮範有さん(I&CO Tokyo 共同代表)

高宮さん:一つ目は、「ワイルドエリア」というプレイヤーが自由に行き来できるスペースを疑似探索できる『Pokémon Wild Area Search』(以下、ワイルドエリアサーチ)。実際に全長7mに及ぶワイルドエリアのジオラマを、ゲームデータから制作しました。ジオラマで精巧に再現されたフィールドで様々なポケモンに出会えるコンテンツなのですが、Googleマップのストリートビューのような感覚で探索を楽しむことができます。

高宮さん二つ目は、ポケモンが巨大化する「ダイマックス」という現象をカメラに収めることができる『Pokémon ダイマックスカメラ』。自分で撮影した「空」が入っている風景画像をアップロードすると、画像解析で空を検出して、そこにダイマックスしたポケモンが合成されます。登場するポケモンは50種類以上。ウェブサイト上で体験できるものに加えて、Twitter上でも、専用のアカウントに写真を投稿すると、合成した画像が返信されるよう設計しました。

高宮さん:この二つとは別にもう一つ作ったのが、思い出のシーンを合成して、個々人の“ポケモン思い出PV”を作ってくれる『Pokémon GREAT STORY』(以下、グレートストーリー)。子どもの時にポケモンをプレイしていたけれど、大人になってからはやっていない、といったしばらくポケモンから遠ざかっている方もターゲットとしたムービージェネレーターです。

高宮さん:冒頭で選んだシーンに合わせたムービーが20万通りの中から自動生成され、そこから自然に最新作である『ポケモン剣盾』の映像につながっていきます。過去作を懐かしく思い出しながら、新作をプレイしてみたいと思ってもらえるように設計しました。

——それぞれ、どのパートを担当されたのでしょうか。

高宮さん:僕と中村さん(PARTY)の2人でクリエイティブディレクターをやっています。僕は全体の戦略を考える役割。中村さんには全体を見てもらいつつ、『ワイルドエリアサーチ』と『ダイマックスカメラ』の企画制作をやってもらいました。『グレートストーリー』の企画を担当したのがBIRDMANさんで、今日はその中でも、ポケモンに詳しい横田さんに来てもらいました。

——ほかにも多彩なクリエイターの面々が参加していますが、どういう基準でアサインされたのでしょうか?

中村大祐さん(PARTYクリエイティブディレクター):『ダイマックスカメラ』も『ワイルドエリアサーチ』も、技術的に難しいことが必要だったので、デザイナーやプログラマー、エンジニアや映像制作会社など、それぞれの領域のプロフェッショナルの力が必要でした。その中でも、技術的に長けている人や、新しいことに対して柔軟に対応できる人たちにお声がけして組織横断型のチームを組みました。

中村大祐さん(PARTY クリエイティブディレクター)

中村さん:一方、『グレートストーリー』に関しては、少数精鋭で制作できるチームにしました。過去作も膨大な量だし、一人ひとりの思い出もそれぞれ異なっていて、特に「どのシーンをキャプチャーすればいいのか」ということに関しては、歴代のポケモンを実際にプレイしていないと分からない専門的な面がありました。膨大なデータの管理と変更に柔軟に対応できるコンパクトなチーム編成で制作した方がいいクオリティになるのではないかと思って。

高宮さん:チームビルディングでいうと、『グレートストーリー』はもちろんですが、『ダイマックスカメラ』も『ワイルドエリアサーチ』も、それぞれ多様なポケモン経験者を入れるようにしていました。過去作を全部やっている人から、初代しかやったことない人まで、いい意味で濃淡が出るようにしましたね。

ゲーム好きな人も、そうでもない人にも。あらゆる人の心に届くコミュニケーションをデザインする。

——今回のプロモーションの企画意図を教えてください。

木山悠さん(株式会社ポケモン開発事業本部 宣伝企画部マネジャー):ポケモンは非常にファンの裾野が広いコンテンツなので、ファンといっても色々な方がいらっしゃいます。ゲーム自体がすごく好きな方、キャラクターが好きな方、過去にポケモンがすごく好きだった方などなど。そういった方々にどう今作の魅力を知ってもらうか、ということを考えてそれぞれにフォーカスして企画を作りました。

木山悠さん(株式会社ポケモン 開発事業本部 宣伝企画部マネジャー)

中村さん:”新しいフィールドが登場する”という情報だけで楽しめる方もいれば、そういった事前情報だけではあまり興味が持てない方もいらっしゃいます。今回の3つの施策は、最終的には『ポケモン剣盾』の情報に繋げたり、『ポケモン剣盾』のモチーフを使ったりはしていますが、言葉や絵だけではなく、楽しい体験もセットにして伝えることで、ゲーム自体にそこまで興味がない人でも楽しめるように意識しました。

——確かにジオラマで再現されたフィールドの中で、ポケモンを探す楽しみを味わえる『ワイルドエリアサーチ』はゲームに馴染みのない方でも、気軽にゲームの世界観を体験できるコンテンツの一つですよね。

木山さん:「ワイルドエリア」は今回の新要素の中でも大きな目玉で、これまでの『ポケットモンスター』シリーズにはない広大なフィールドが魅力の1つです。その魅力をいかに伝えていくかを考えました。この広さっていうのは、やっぱり文字でも言葉でも、一枚のグラフィックでも、なかなか伝わらないんです。

中村さん: ソーシャルメディア上のポケモンに関する投稿で、ぬいぐるみのようなリアルな質感の作品が、結構人気を集めていたんです。世界観全体を、丸々アナログな質感で表現したことはなかったので、ジオラマにしてみたら面白いかなと。実際に作ってみると、フィールドが広いとは聞いていたけれど、ここまで広くていろんな地形があるとは思わなかったので、僕自身も驚きました。

ワイルドエリアサーチ』に使用したジオラマを制作している様子

高宮さん:『ダイマックスカメラ』もそうですが、『ワイルドエリアサーチ』は、いきなり「ゲームをプレイしてください!」と伝えるのではなく、その一歩手前で、まずは『ワイルドエリアサーチ』で散策してみる、というステップを用意することで、ゲームをプレイするハードルを下げる効果を狙っています。

ソーシャルメディアでシェアされる共感型コンテンツ成功の鍵は?

——『グレートストーリー』では、あらゆる過去作の名シーンが多数登場しますが、そのシーンはどうやって制作されたのでしょうか。

横田佳祐さん(BIRDMAN プロジェクトマネジャー&シーンエディター:あれは最初から全部プレイしてキャプチャしました。この企画って、実際、ユーザーと同じ目線で作らないといけないなと思ったので。

選定で意識したのは、携帯ゲーム機と共に進化してきたポケモンの歴史、つまりグラフィックや演出、音楽などが世代を越えて表現できるシーンであること。あとはユーザーの思い出にうまく沿っていなくて「これ違うよ」と思われるのは絶対に避けたかったんです。

横田佳祐さん(BIRDMAN プロジェクトマネジャー&シーンエディター)

中村さん:ムービーの作りについては、本当に何度も何度も改善していただきました。どうすればアップグレードしている流れが見えるか、どういう質問をすると深い思い出につながるムービーができるか、といったことについて何度も動画コンテを作ってもらいました。今回の施策の中では『グレートストーリー』が、最もコアファンの琴線に触れる部分だと思うので。

横田さん:ローンチした時は正直怖かったです。これまでにないほどエゴサーチしました(笑)。ハッシュタグを追って、選定したシーンがユーザーの思い出と添っていたのかを改めて確認するというか。

グレートストーリー』は20万通りの生成数からオリジナルムービーを作ることができますが、ソーシャルにシェアする時にコメントを添えてくれる方が多くて「良かった」と安心したり、こういうシーン欲しいよね、という意見をみて、「それも入れたかった」と共感したりしました。

 

——ユーザーの皆さんからの反響は色々あったと思いますが、ソーシャルメディア上での広がりや、盛り上がるポイントについては、どのように設計されていましたか?

中村さん:シェアするときに人が“どういう感情でシェアするのか”をちゃんと考えるのがポイントです。例えば『ダイマックスカメラ』であれば、自分が撮影した風景の中に、ダイマックスしたポケモンが出現すれば「他の人にも見せてあげたい!」という感情になりますよね。なぜならこの写真は自分しか持っていないから。しかも、ポケモンの出現の仕方も自分の写真だけのオリジナルになっている。そういう“自分の作ったもの”感が出るコンテンツにできるかどうかが重要です。

グレートストーリー』に関しても、自分だけの思い出ムービーが完成したら「私の思い出、どう思う?」と、思わずシェアして他の人に訊きたくなりますよね。あとはシェア画面も、質問に対して選んでもらった三つの答えが、ハッシュタグで自動的につくように作られていて。映像を再生しなくてもテキストだけで固有の思い出だとわかるので、「映像見てみようかな?」という気にさせやすくなっています。

高宮さん: 誰かがやっている感って、結構ゲームをする上で大事ですよね。昔もそうだったじゃないですか、クラスのみんながやっているからやる、という。特に『グレートストーリー』は、一人ひとりの答えが違うので「〇〇さんはそっち選んだんだ?」というコミュニケーションが生まれやすくなっていると思います。

中村さん:ハッシュタグが自動で入る機能をつけない、という選択もできたんですけれど。そういう細かい部分のチューニングが、ソーシャルメディア上で拡がっていくかどうかの数パーセントの確率を上げるところに関わってくるんですよね。

ユーザーの負担をいかに減らし、ワクワクできるものに変えるか。細部への気配りが、共感を呼ぶクリエイティブを生み出す

——一緒に仕事をするクリエイター選ぶ上で大切にしていることは何ですか

木山さん:僕は以前、PR会社や広告代理店にいたこともあって、常々クリエイターさんとは何かものを作るだけじゃなくて、それをどう広めていくか、というところまで一緒に考えていきたいと思っています。今回も、デジタル上でいろんな人に知ってもらえるような仕掛けにしたかったので、クリエイティブのことだけではなく、ソーシャルメディアでの広がりやPRの観点も踏まえた上で一緒に企画を考えられる人を、と考えて高宮さんに声を掛けました。

高宮さん:今回のメンバーは、先ほど中村さんが言っていた「もっと知ってもらう、もっと楽しんでもらう可能性を数パーセントでも高めていく」ことの重要性を分かっている皆さんに集まっていただきました。『グレートストーリー』では、BIRDMANさんが最後ギリギリまで1パーセントをあげるために色々やってくれていたのは、納品した後まで見据えているからこそできる工数のかけ方だと思います。

中村さん:『ダイマックスカメラ』でいうと、興味があって来てくれたんだけれど結局やらない、ということをなるべく減らすために、サイトトップのオープニングの映像で、何ができるかを端的に伝えています。

高宮さん:画像をアップロードしてから生成するまでも、どうしても時間がかかるので、その間にローディングの演出を入れて、待ち時間も楽しんでもらえるようにしました。こういうことを一つひとつ、地道にチューニングしていったんですよね。

中村さん:ユーザーの皆さんは、自分にとってそれが価値があるのかないのかを瞬時に判断します。そこで「見なくてもいい」「やらなくてもいい」という判断をされないように細部までこだわることが、広告やPRでも大事かなと思います。そもそも読んでくれない、見てくれない、やってくれない前提で作らないといけないので。

あとクリエイターの皆さんに伝えたいのは、教養として、ポケモンをプレイした方がいい、ということ。実は複雑なシステムなのに、いかに簡単にシンプルにゲームの世界に入り込めるようにしているかというところが、ユーザーとのコミュニケーションのとり方として、とても勉強になります。

高宮さん:やっぱりゲームってすごいですよね。結論、クリエイターはポケモンやるべき!だと(笑)。

中村さん:本当に素晴らしいので、ぜひ!

 

 

PROFILE

株式会社ポケモン

1998年設立。現在はポケモンのブランドマネジメントを目的とし、「ポケモンをプロデュースする会社」として、あらゆる分野に展開するポケモンの各事業、およびそれらのシナジーの最大化を行う。プランニングやプロモーション活動を通じて、ポケモンを永続的なブランドへと育てるべく日々活動している。

PROFILE

PARTY

社内外、国内外から、アイデア・デザイン・テック・ビジネスを越境し、交流し、チームで実装するクリエイティブ集団。ビッグデータやVR、IoTなど、最新テクノロジーとストーリーテリングを融合し、未来の体験を社会にインストールする。

PROFILE

I&CO Tokyo

クリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏をはじめ、企業戦略やインキュベーション、デザインなどあらゆる領域のプロが集う、ビジネスインベンションファーム。「デザイン」「データ」「テクノロジー」を掛け合わせることで新しい機会を見出し、最善のカスタマー・エクスペリエンスを構築する。

PROFILE

BIRDMAN

ソフトウェアからハードウェア開発まで、さまざまな分野のプロフェッショナルがそろう、デジタルデザインスタジオ。2004年設立。クレイジーなアイデアを先端技術で実現、驚きのデジタル・エクスペリエンスを感動に変えることで、企業やブランドのコミュニケーション課題を解決する。



CREDIT

Interviewee:Yutaka Kiyama (The Pokémon Company), Norikuni Takamiya (I&CO Tokyo), Daisuke Nakamura (PARTY), Keisuke Yokota (BIRDMAN
Interviewer:Yuki Inoue, Sera Nakata
Editor / Writer:Yuki Inoue
Photographer:Junichi Higashiyama
Director:Sera Nakata

 


 

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