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いつか、待ち合わせ場所を作りたい。

magma

2017年10月、活動10年目を迎えるアーティストユニット「magma」(マグマ)。杉山純(写真・左)と宮澤謙一(同・右)、彼らふたりが手作業で創りだす作品群がいま、多方面から注目を集めている。廃材、おもちゃ、電動器具、誰かに一度捨てられた物……彼らの手にかかると、身の回りにある“あらゆる物”が素材となり、立体的にコラージュされ、独自の世界観を纏った作品に仕上がっていく。どこか懐かしさを感じさせるアナログ感と、ポップで鮮やかな色彩。作品の形態は数あれど、ふたりが創りだすアートワークは、一見するにつけ、magmaだとわかる個性を放ちはじめる。本稿では、開催迫る「magma’s -magma 10th Anniversary exhibition-」(ラフォーレミュージアム原宿・10月28日~11月5日)を前に、magmaの現在地に迫った。

ーー結成の経緯について聞かせてください。

杉山:ムサビの空間演出デザイン学科で出会い、仲良くなって。「君たちは就職しないほうがいいよ」みたいなことをゼミの教授に言われ、真に受けました(笑)。学校を卒業する1年ぐらい前から、屋号をもち、ユニットで活動することにしたんです。

宮澤:“空デ”は空間と関連することだったら、ジャンルを問わず、学べる学科で。インテリア、内装、ファッション、舞台美術……いろんなことに興味や関心があるタイプだったので、「いろいろやってみよう」っていう。

杉山:今年で結成10年目なんですけど、これまでの活動を振り返ってみると、かなり作風が変わっている気がします。一人で活動してたら、もっとガチガチに固まったアウトプットになってたと思うけど、僕らの場合ユニットなので、お互いに影響し合いながら、前に進んでいるんだと思います。

宮澤:フィギュアをコラージュするような作品づくりから始まって、個人宅の家具を作ったり、店舗の什器を作ったり。気づくと、だんだん大きなものを作ることが楽しくなり、個人宅で飾れないようなサイズ感の作品も作るようになりました(笑)。実用性がないのに欲しくなっちゃうもの。なぜ欲しいのか、言葉で表現しづらいもの。そういう作品を作れたら冥利に尽きますね。

ーーmagmaの作品はパーツのひとつひとつが変わっている印象です。magmaらしい「ものづくりの手法」について聞かせてください。

杉山:セルフワーク、クライアントワークともに、「こういうパーツが必要」といった着想から素材を集めることもあるけど、基本的にはあまり考えず「この素材がいいな」と思ったら、その素材が起点となって作品づくりがスタートしていく感じが多いですね。

宮澤:廃材だったり電動器具だったり、おもちゃだったり。立体的にコラージュする前のパーツって、一般的にみると不恰好なものが多いんだけど、組み合わせた時に新しい価値観が生まれることがあって。その瞬間が面白い!

杉山:だから、探すことが制作の原点。

宮澤:近所にある解体屋さんがやってるリサイクルショップにマメに顔を出したり、人づてに「あの古い家、壊すらしい」という情報を聞いたら、トラックでその現場に行って捨ててしまう家具や置物をもらったり。パチンコ店の看板もストック済み。いますぐに使う予定はないけど、いつか使うつもりでさまざまなパーツを日々、収集していますね。

杉山:僕らのものづくりは、パソコン1台だけではできないので、ヤドカリのように作品づくりに必要なものをたくさん背負って動いている感じ。ゼロから作ったほうが意外とお金がかかったり、時間がかかったり、自分のやりたいように作れる気になるけど、じつは予想外の完成というのが少なかったりします。そんな理由もあって、magmaの場合、作りながら形を決めていくことが多いですね。

宮澤:クライアントワークだとそうも言ってられないけど、基本的には完成図を明確に決めないものづくりが好きですね。この手法だと、作業的には誰でもできると思うんですが、例えばプラスチックと別素材をくっつけるにはどうすればいいか?みたいに、日々研究しないといけないことが多くて。職人的な技術も身につけて、作品の幅を広げたいと思っています。

ーークライアントワークの面白さはどんなところにありますか?

杉山:関わる人の数が増えてくるので、僕らが普段作っているものとは、まず規模感が違います。その規模じゃないとできないものを作れるのは、理屈抜きに面白いよね?

宮澤:いろいろな人たちが参加して1つの方向に向かい、1つの作品を作るのって、大変な部分もあるけどたしかに面白い。

杉山:例えば、ゆずさんのミュージックビデオ『終わらない歌』。北川(悠仁)さんと岩沢(厚治)さんがからくり人形に扮して登場し、数々の装置とともに楽曲を演奏するんですが、僕らは映像内に登場する装置の制作を担当。廃品や廃材を使い、コンセプトでもある“からくり時計”の中の世界に住むアナログロボットを約30点作りました。

 

 

宮澤:ロボットの壊れそうで壊れない動きだったり、同じ動作を繰り返しながらも、生きているかのような動きになるように考えて作りました。それにしても短納期だった(笑)

杉山:ひとりだったら、心が折れていたかもしれないです(笑)。ちょっとしたラフスケッチを描くだけでイメージを共有でき、それぞれやるべきことを進めていけるのは、長い間一緒に作品を作ってきた強みかもしれないですね。

 

ーーmagmaの現在地、これからについて聞かせてください。

杉山:今年10月に活動10周年を迎えるにあたり、ラフォーレ原宿さんからお声がけいただき、ラフォーレミュージアム原宿で大規模な個展を開催させていただきます!(10月28日~11月5日)

宮澤:初期から現在までに制作した立体・平面作品、家具、プロダクトなどのアートワーク、そのほかにも制作風景やスケッチ画など、約100点の作品を展示する予定です。つまり、ご来場いただくと「magmaの現在地」を感じ取っていただけると思います!

杉山:今後という視点で話すと、モアイ像やハチ公前みたいな、待ち合わせ場所を作ってみたいな。

宮澤:クライアントワークでありアートワークであり、それが一緒にできたら最高だね。仕事として。あとは……太陽の塔のような、巨大なものを作ってみたい。

杉山:大きな夢だね(笑)

PROFILE

magma

杉山純と宮澤謙一によるアートティストユニット。2008年、武蔵野美術大学在学中に結成。studio magmaを構える。セルフワークでは、キネティックアートやオリジナルプロダクツの制作を主とし、個展も開催。2016年には、KENPOKU ART 2016茨城県北芸術祭に出展。高い評価を得る。クライアントワークでは、ムービングディスプレイや什器、舞台美術(ギミックワーク)、アナログロボットなどを制作。主な実績は、ゆず『終わらない歌』MV、アリーナツアー「TOWA」ツアータイトルデザイン、サカナクション、きゃりーぱみゅぱみゅ、木村カエラのMV美術。「Music Japan」(NHK)の番組セット、keisuke kanda新宿店の店舗内装なども手掛ける。2017年10月、活動10年目を迎える。

写真・下屋敷和文 編集/文・紺谷宏之

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