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映像のトップクリエイターが集結!「デザイン夜話 vol.4」潜入レポート

最高の映像を生み出す秘訣、ちょっとだけ教えます。

大好評の「すごい勉強会」、今回のゲストも「すごい」クリエイター陣!

株式会社リクルートホールディングス新規事業開発室が提供する「すごい勉強会」。中でも、「デザイン夜話」シリーズは、クリエイティブ業界のトップランナーたちを招いて行う大好評の企画です。今回は、BAUS MAGAZINEが「デザイン夜話 vol.4」に潜入。3時間にわたる濃密なイベントの様子をレポートします。

広告業界に着目したvol.1、書籍執筆者や会社経営者を招いたvol.2、企業のクリエイティブ担当者が集まったvol.3に続き、今回のゲストは映像クリエイターの3人。「映像とデザイン」をテーマに、作品づくりの秘訣をお話してくれました。

ゲストのプレゼンテーションが始まる前に、「デザイン夜話」のファシリテーター・萩原幸也氏(株式会社リクルートコミュニケーションズ/コミュニケーションデザイン部次長)が登壇。萩原氏自身も、先日カンヌで行われたカンヌライオンズにてモバイル部門でグランプリを受賞したトップクリエイターです。

つづいて、ゲストによる自己紹介を兼ねたプレゼンテーションへ。

はじめに登場したゲストは、関根光才氏。関根氏は、国内外でさまざまな作品を発表し続けている映像作家です。2005年のカンヌ新人監督賞グランプリ、2014年のカンヌ国際広告祭で日本人初のチタニウム部門グランプリなど、多数の受賞歴を持つ実力派。現在は広告のみならず、映画の領域にも活動を拡大しています。近年、関根氏は、アクティヴィズム・アート(社会活動的なアート)にも関心を広げ、プロダクションユニットNIONやアートプロジェクトNOddINなどを立ち上げ、社会問題へのアプローチを続けています。

続いては、映像ディレクター・TAKCOM氏が登場します。TAKCOM氏の作品といえば、JR新幹線のキャンペーン映像を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は彼は広告業界出身ではありません。CGやモーショングラフィックの制作経験を活かし、現在はさまざまな企業のPRを手がけています。プレゼンテーションでは、特別にCG制作のためのコンテを披露してくださいました。

印象的だったのは、「(作品の多くは)漠然としたイメージをビジュアライゼーションすることが目的。絵でコミュニケーションをとるイメージです」という発言。作品づくりでも、何度もカメラリハーサルを繰り返し、視覚的に面白いポイントを探っているといいます。

最後は、株式会社CEKAIの代表をつとめる井口皓太氏によるプレゼンテーション。今回のゲストの中で最年少の井口氏は、武蔵野美術大学在学中に株式会社TYMOTEを設立し、さまざまな経験を積んできました。クリエイティブディレクター、映像ディレクター、モーショングラフィカー、アートディレクターを兼任する井口氏ですが、スタートはグラフィックデザインだったといいます。グラフィックの基礎を理解しているからこそ、文字や画像が動き出したときに、グラフィックとモーションのあいだを翻訳できることが、井口氏の作品の魅力につながっています。

世界観を大切にする関根氏、視覚的な刺激を追究するTAKCOM氏、ロジカルな思考にもとづいて映像を生み出す井口氏。三者三様のプレゼンテーションに、1時間はあっという間に過ぎていきました。

斬新なアイデアはどこから?それぞれのものづくり観。

ゲストによるプレゼンテーションが終わると、いよいよトークセッションへ。荻原氏を司会に、クリエイターたちのトークセッションがはじまります。

 

萩原:まずはじめに、制作の「コアアイデア」について伺います。皆さんはどんなタイミングで作品のアイデアを思いつくのでしょうか?

関根:僕は作品のストーリーに関心があって、企画やアイデア、「どういう意味でものを作るのか」などをコアに、ストーリーを組み立てます。実はこの前この期間にたくさんのアイデアが生まれました。

TAKCOM:ご自身でアイデアを作品に落とし込むケースだけでなく、例えばクリエイティブディレクターがアイデアを持ってくる案件もありますよね。そういう場合、関根さんはどうやって作品に昇華しているんですか?

関根:ケースバイケースです。演技の指定などはある程度従いますが、自分からアイデアを提案することもありますよ。最近は、依頼者側が自由度の高い依頼をしてくれることも。

TAKCOM:僕の場合は、寝る、食べる、走る、などの原始的な行動をしているときにアイデアを思いつくことが多いです。自分がまだ見たことのない一枚絵が叶えられたらいいなと思いながら組み立てていますね。ビジュアルでコミュニケーションすることを大切にしながらも、言葉がなくても伝わるようにはしたいと思っています。

関根:TAKCOMさんの作品は、言語やストーリーを越えてビジュアルのおもしろさ、心地よさを探っている感じがします。

萩原:井口さんの作品はロジカルな印象があります。

井口:自分のやり方は、言い訳っぽいなとも思うんです。僕は二浪したとき、自信があると思っていた自分のデザインが受け入れられず、否定された気分になって自信を失ったことがあって。そんな時に出会ったグラフィックは、数字を組めばうまくできる。そこにはまっちゃって。今も、普遍的に気持ちいいと思うデザインを追求しています。

「だれか」と作るクリエイティブ。仕事のスタイル、作品のルーツをさぐる。

萩原:続いて「チーム、協業、共創」について。自分の作りたいものに対して、どういうチームを組んでいますか?

TAKCOM:ケースバイケースなので、なんとも言えません。チームを解散していろいろな人とやってみたり、1人のクリエイターと組んでやってみたり。

井口:僕も、ケースバイケースが美しいと思っていた時期があります。実写も毎回違う人とやっていました。でも、言語の違うもの同士が新しいところからスタートするのは大変な部分もありますよね。作品のカラーが毎回同じになってしまうのは問題だけど、やりやすいチームというのはあると思います。

関根:そうですよね、僕も最初はいろんな人と仕事をしていましたが、今は固定チームで製作することも。僕はある時期から海外案件が増えたので、コストの面も考え、海外の人をアサインすることも多いんです。日本と海外では、言語の壁はもちろん、海外では撮影監督の意見がすごく強かったり、カメラマンが照明もできたり、ギャップを感じることもあります。僕はどっちかというと海外のほうがやりやすい。ブレーンが少ないほうが研ぎ澄まされたものができる気がするんです。

萩原:皆さん、現在の仕事に至るきっかけや影響というのはあったのでしょうか。

井口:僕はずっと野球をやっていて、キャッチャーだったんです。試合の状況を見て、同時多発的な動きを判断するのが好きでした。ロジックを大切にする分析的な手法は、ここにルーツがあるかもしれません。人をどうやってプロジェクトに巻き込んでいくか、人をどうやってデザインしていくかも重要だと思っています。

TAKCOM:僕はピンクフロイドやU2など、音楽にまつわる映像に影響を受けました。学生のころ、映像をステージングに入れるアイデアが流行っていました。リッチな映像を見せることのおもしろさに気が付いたのはその頃です。

関根:昔はアートに感心がなくて、高校の時は普通のサラリーマンになりたいと思っていました。でも留学時に写真を撮っていたら、フィルムが紙に焼き付けられていく瞬間に感動し、そこからアートに開眼。今となっては、美大行ってればよかったなって(笑)

 

これからの映像は、どうなる?トップクリエイターの未来予想図とは。

萩原:今の世の中、映像の使われ方はとても多様ですよね。一般の人が映像を撮ってコンテンツとして見せ合う状況が発生しています。そういうものと自身の作品を切り離していますか?

関根:気にはしているけど、気にしたところでどうすることもできないとも思います。なにをもって映像を自分の仕事だと規定するのか、曖昧になっている部分もありますが、今後も変わらず自分の強みを生かしていきたいですね。

TAKCOM:好きだからやっているので、作った作品には「必然性」がないとダメです。周囲の映像コンテンツの増加については、僕の場合はあまり気にしていないかもしれません。

井口:フォーマット化しているものがあふれていますよね。フォーマットにハマっているとそれらしく見えるので、そのレベルでOKだと認識する人は増えているかもしれません。だからこそ、自分が手を動かすことを重視し、クラフトへのこだわり、自分の姿勢を確立させたいと思っています。しっかりと自分の中で哲学をもって取り組みたいですね。

萩原:こだわって作っていることが、再び価値化される瞬間があるような気がしますね。最後に、今後の目標を教えてください。

関根:今、長編映画に取り組んでいます。まずはその映画を完結させたいですね。長期的には、個人を超えて、社会的に良いインパクトがあることをやっていきたいです。

TAKCOM:僕も、来年に向けて長編のストーリーを作り始めています。

井口:ストーリーがあるものを僕も作ってみたいです。そういった作品も、今やっている仕事の延長線上にある気がしています。あせらずに続けていきたいですね。

3人それぞれの仕事観が明らかになったトークセッションの後には、勉強会の参加者からの質疑応答のコーナーが。クリエイティブを仕事にすることの難しさや、新規性の壁にぶつかったときの乗り越え方など、クリエイターを目指す若い世代の疑問や不安に向き合う時間となりました。

 

関根氏、TAKCOM氏、井口氏、それぞれの作品は異なる方向性を持っていますが、作品に対するひたむきな姿勢は同じ。問題意識をもって新たな作品づくりに邁進する3人は、単なる仕事だけではなく「ライフワーク」としてのクリエイティブに挑戦し続けているのかもしれません。映像表現への飽くなき探求心は、クリエイターはもちろん、他業種の参加者にとっても刺激的なものであるといえるでしょう。

今回潜入した「すごい勉強会」は、毎回異なるゲストを迎えて今後も開催予定です。ここでしか聞けないトークは、たくさんのアイデアや人と出会える場所でもあります。ぜひチェックしてみてください。

写真・石亀広大 文・齋木優城 編集・上野なつみ

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