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次をイメージしながら、技術的なチャレンジを続けたい。【後編】

TASKO × Invisible Designs Lab.

ものづくりが得意な制作会社は数あれど、「技術的にチャレンジすれば、できるかもしれない」という予感を“道しるべ”とし、大半のプロジェクトを進めていく会社がどれほどあるだろうか。「TASKO」と「Invisible Designs Lab.」。両社ともにそれを実践する、オンリーワンなものづくりに定評のある会社だ。「アイデアを思いつくのは僕ら人間です。だから一度できると判断したら、できます(笑)」。こんな風に話すのは「TASKO」設計製作事業部・工場長の木村匡孝さん(写真・右)。同社と共作することの多い「Invisible Designs Lab.」コンポーザー/サウンドアーティストの松尾謙二郎さん(同・左)も、「スタートした時点で完成が見えない仕事をする時はワクワクしますね」と話す。そしていま、その実績は“世界”で注目されている。インタビュー後編では、TOYOTA PHV 「driving the piano」をとおし、両社が実践した「ものづくりの流儀」に迫った。

ーー前編では、オンリーワンなクリエイティビティ、そのこだわりについて聞きました。後編では実際に手がけたプロジェクトを例に、連携し、答えを導き出していく「ものづくり」について聞かせてください。

松尾さん:今年2月に公開したTOYOTA PHVの海外向けプロモーション映像「driving the piano」は、TASKOさんと一緒にした仕事の中では、すごく印象に残ってますね。Invisible Designs Lab.は音楽を担当しています。

木村さん:TOYOTAプリウスの新ハイブリッド方式「PHV」を表現する映像なんですが、車がまったく登場しない“車のプロモーションムービー”なんです。TASKOが担当したのは映像を見てもらうと分かるんですが、フルアナログの演奏装置「Trinity Piano」です。映っている什器のほとんどを製作させてもらいました。

 

 

松尾さん:ちなみに「PHV」とはプラグインハイブリッドの略。電気モーターとガソリンエンジンの両方を効率よく使う駆動システムのことで、この新しい車のカタチ、TOYOTAが実現するドライビング体験をどう表現するか、というのが最初のテーマでした。プロジェクトをスタートするタイミングで映像制作会社さんに音楽担当として声をかけてもらい、音楽的なところまで一緒に突き詰めて考えてくれる会社はTASKOさんしかいないと思い、すぐに声がけした次第です。

木村さん:スタートした時点で完成イメージがまだなかったので、それはもうワクワクしました(笑)

松尾さん:最初、依頼をもらった時、「自動演奏を使って何かできたら」と言われていて。木村君が合流するとすぐに、どんな装置を作るか、いろいろと話し合いましたよね。音楽的な表現の幅が圧倒的に低くなるので、自動演奏をテーマとしながらも楽器自体を作ろうとは思わなかった。本件では、ドライビング体験をどうやって気持ちよく表現できるかがキモになると思ったので、まず、音楽面でのクオリティの高さにこだわることにしました。

木村さん:制作チームで話し合いを重ねていく中で、きちんとした楽器を使おうという方向性で固まっていき、最終的にピアノの自動演奏に決まって。装置、つまり機能そのものがデザインになるのは、どんな設計にするのがベストか。実制作期間がタイトなプロジェクトでしたが、この部分はすごく悩みましたよね。既にある自動演奏ピアノを使うだけでは面白くないので、結果、オリジナルの楽器に仕上げるっていう。

松尾さん:試作を進める過程で、最終的には電気を使わずに動く設計になったじゃないですか。モーター駆動やエアー駆動ではなく、フルアナログで動くピアノにしたっていうところに、TASKOさんの職人魂を感じました。

木村さん:フライホイールの回転で装塡されたパンチカードを送り、その情報を読み取ってピアノの鍵盤を演奏する。言葉にするとこういう仕様になるんですが、映像を見てもらったほうが分かりやすいと思います(笑)。制作中はずっと、Invisible Designs Lab.さんと密にやりとりし続けましたね。「この仕様だと、こういう演奏しかできない」。綿密な計算のもと、音楽として表現できること、その可能性を出来うる限り洗いだし、美しいハーモニーを奏でる演奏装置を完成させる……今思い返しても、かなりカロリーを使う実作業でしたね(笑)

松尾さん:かくして、装置と音楽とパフォーマンスが一体となったアンサンブルが完成。おそらく多くの人が見たことのないプロモーション映像になったと思います。今度はどんなプロジェクトを進めていけるのか。今から楽しみです。

木村さん:技術的なチャレンジを含めて、日々勉強ですね。

PROFILE

TASKO inc. 

舞台制作、機械製作、デザイン・マネジメントを専門とするメンバーにより、2012年4月に設立した21世紀型総合アートカンパニー。ユニークな提案力と確かな技術を擁する。アートユニット「明和電機」から独立したものづくり集団でもある。

PROFILE

Invisible Designs Lab. Ltd

「見えないものこそ大切だ」を信条とする、音と音楽に特化した制作会社。「音」という見えないメッセージと「アイデア」という見えないデザインを「見える」様にしていくことを目標に活動する作家集団でもある。国内外のクリエイティブアワードの受賞歴多数。

写真・下屋敷和文 編集/文・紺谷宏之

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