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古市憲寿の「チョコレートとジレンマ。」

#4 お祭り

東京ではいまいち盛り上がらなかった今年のハロウィン。直近の週末が雨だったのと、月末が平日だったなど、いくつか理由はあるが、ちょっとピークを過ぎた感もある。
それはハロウィンが決して下火になったということではなくて、ハロウィンさえも日常になったということなのかも知れない。

現代社会の祝祭を考える上で、欠かせないツールはSNSである。特に今年は、ちょっとしたハレを求める行動が、流行語になってもおかしくないほど注目を浴びた。「インスタ映え」だ。
インスタ映えの基本は、「他人とは違うこと」や「他人からうらやましがられること」をいかにバランスよく投稿できるか。たとえば「高級旅館に行く」とか「ソウルなおしゃれなカフェ」とかはわかりやすい。
しかし誰も知らないマニアックな場所は羨望の対象になりにくいし、逆にみんながよく行く場所だと、誰からもうらましがられない。

その意味で、ハロウィンは少しずつ微妙になりつつあるのかも知れない。もちろん、ハロウィンは非常にフォトジェニックなイベントであることは間違いない。ジャック・オー・ランタンに代表されるように、ダークでファンタジーな世界観は、相変わらず大人気だ。

だけど、頑張って仮装をして、張り切ってパーティーを準備したところで、その光景は一年前や二年前と大きく変わるわけではない。ハロウィンがただの子どものイベントではなく、大人までが仮装をして街で大騒ぎするイベントになってからもうしばらく経った。その間に、随分とハロウィンの新味は失われてしまったようだ。
きっとハロウィンには、もう少し新しい仕掛けが必要なのだろう。「男の子にチョコを渡す日」であるバレンタインや、「大切な人と過ごす日」のクリスマスに比べて、ハロウィンは日本におけるコンセプトが定まりきっていないと思う。

しかもこれから数年の日本(特に東京)は、ただでさえお祭りごとにあふれている。先の選挙で自民党が勝利したことで、2018年には憲法改正論議が本格化するだろう。改憲を問う、日本初の国民投票は2018年から2019年のどこかで実施されるはずだ。

また2019年には改元がある。崩御による改元ではないため、様々なイベントやセールなどが企画されるはずだ。そして2020年には東京オリンピックが控えている。どれも一生に一度経験できるかどうかの規模のビッグイベントである。

 

インスタグラマーでなくても、お祭りはわくわくするもの。来年からしばらく“ハレの時代”が続くのだろう。もっとも、いくらお祭りを繰り返しても、日本が抱える少子高齢化や巨額の財政赤字といった問題は解消されない。2021年から長くて暗い“ケの時代”が続くことになるのだろうか。

PROFILE

古市憲寿

1985年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目される。最新刊は、東京が「大都会」ならぬ「大田舎」であることを都バスを使って明らかにした『大田舎・東京』。NHK「ニッポンのジレンマ」MCを務める。好きな食べ物はチョコレート。

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