MENU

クリエイターのためのクレジット・データベース

MENU
CLOSE © COPYRIGHT BAUS, ALL RIGHTS RESERVED

体験型コンサート、和田永「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」〜本祭I:家電雷鳴篇〜の舞台裏に潜入!

電化製品が楽器として甦る奇祭とは?

11月3日(金・祝)から5日 (日)の3日間にわたり、和田永「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」〜本祭I:家電雷鳴篇〜が開催される。和田氏といえば、これまでにオープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド「Open Reel Ensemble」が世界的に高い評価を受けた他、ブラウン管テレビを楽器として演奏するパフォーマンス「Braun Tube Jazz Band」にて第 13 回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞。ISSEY MIYAKE のパリコレクションでは、現在までに 10 回 に渡り音楽に携わるなど、多方面から高い評価を集める。今回は、リハーサル現場に潜入。「古い電化製品を楽器として蘇生させ、人間と電磁とが交錯する奇祭」とも呼ばれる謎多きこのイベントについて、その見所について和田氏本人に話を聞いた。

古い電化製品を楽器として蘇生させる

和田氏といえば、オープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド「Open Reel Ensemble」が世界的に高い評価を受け、各地でライブを重ねてきた。また、2013年にはブラウン管テレビを楽器として演奏するパフォーマンス「Braun Tube Jazz Band」にて第 13 回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞、古い電化製品を楽器として蘇生させ、その音楽で人々を魅了してきた。今回はその集大成ともいうべき、イベントだ。

リリース情報を見ただけで、何やらすごい取り組みが行なわれているこということは分かるのだが、百聞は一見にしかず。イベント開催に向け、準備が進められるリハーサルスタジオに潜入させてもらうことにした。

リハーサルスタジオの中に入ると、扇風機をギターさながらに抱えながら演奏をする和田氏の姿。なんでも、扇風機を解体し、扇風機に穴の空いたオリジナルの羽根を取りつけ、「楽器」を作ってしまったのだという。回転することで光が点滅し、計算によって導き出された穴の違いで、音の高低が生まれる原理なのだそう。扇風機をエレキギターのように構え、ソロを披露してくれる。ちなみに左手で扇風機の回転数を変え、右手で光を音に変えることで音程を操っている。

 

こちらは、「Braun Tube Jazz Band」でも披露された、ブラウン管テレビ。テレビに映る縞模様の本数で音程が規定され、画面から出ている静電気を拾って体内に電気信号を伝播させてギターアンプを通して音が鳴る仕組み。パーカッションのように叩いている様子をみせてもらった。

何故このような取り組みをはじめようと思ったのか。リハーサルの合間に和田氏に話を聞いてみた。

 

ジミヘンの魂が扇風機の中に宿っている?

そもそもどのような経緯からこの企画が立ち上がったのだろうか。

「古いメディアやテクノロジーにある身体性を伴った操作と独特の音の響きに魅了されて、オープンリール、ブラウン管テレビと過去2つのプロジェクトを実行してきました。Maker Faire Tokyoのイベントでブラウン管テレビを使った演奏を体験した人や、茨城で開催されたKENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭で滞在制作をするなかで出会った企業のエンジニアやデザイナー、そして試みに興味を持ったミュージシャンの仲間たちが集まってきました。今では、東京だけでなく日立と京都にも家電楽器を開発したり、開発した楽器で演奏をしたりするチームができて。

そうして生まれた新しいメディアアートプロジェクトの集大成として、奇祭を執り行うビジョンが頭に浮かびました。古いメディアから生まれる新たなサウンドを都市空間のなかに解き放つ、身体性を伴うテクノロジーイベントをやりたくなったんです。そして、電化製品の供養と蘇生を行いつつ、それらを映し鏡として人間としていい汗をかく祭典ができたらいいなと。電気的で奇妙な音楽祭が始まるというのは小学生の頃から妄想していた世界だったので、まずは人に理解してもらうべくそのイメージの絵を描きました」

和田氏が小学生の頃から妄想として描いていた世界のイメージ絵

テレビ、扇風機、エアコンなどの生活家電から生まれる音をどう音楽的に解釈するか、という視点から和田氏のプロフェッショナリズムと熱が疼いていたようだ。

「まずはアトリエを設けて、近所から古くなった家電を集めるところから始めました。その中味を僕が開けて、楽器としてどう再解釈するか、という可能性を探り始めました。電化製品のふたを開けて、システムを知っていくと古くなって今使わなくなっているとはいえ、そこに当時のサイエンスの英知が詰まっていました。テレビや電話の仕組みを理解して紐解いていくと、そこには音楽として転用させる要素が隠されていることを発見できたんです。まるで石器を発掘していくような興奮を覚えました。考えてもみてください。家電の中に、ジミヘンがロックにおいて人々を魅了したようないかにも電気的なサウンドの魂が宿っているんですよ。それを発見したら、もう音楽を搔き鳴らしたいじゃないですか。そこからどんな風な表現ができるのかをメンバーとともに妄想し合いながら家電を楽器として作り直し、僕は僕でその楽器を用いた曲作りをしていきました」

家電のなかに音楽の根源を発見、興奮した

テクノロジーの原理を知ることで、振動が生まれる原理もあぶり出されてくる。そこから新しく家電を解釈する実験が続けられていった。そのことを「大人の夏休みの自由研究みたい」と和田氏は話す。

「扇風機の回転数から音程の違った音の出し方を実験していくと、古くから人類がやってきた音階の発見を追体験していくことができました。今は12平均律と呼ばれる調律があらゆる楽器の基本になっていますが、扇風機の場合はちょっと違くて、もう『扇風律(せんぷうりつ)』と呼んでいます(笑)。ちなみに1秒間に440回空気が振動したら『ラ』の音という定義になっていますが、扇風機の場合は1秒間に50回波打つ電気コンセントが関係しているので、既存の楽器とはチューニングが合わないんですよ。

参加するエンジニアやデザイナーも、一つひとつ音の出る原理を家電のなかに発見するたびに興奮して、『どうやったら綺麗な音が出せるか』『綺麗な音階を扇風機で表現できるのか』と執念を燃やし改良を重ねていく。無駄をいかに省くか、いかに生活を便利にするかがテクノロジーの役割なはずなのに、役割を終えたら、大いなる無駄を楽しむ道具となっているんですよ(笑)。メンバーの中には本当に家電製造に携わる人もいて、昼間はものづくり、夜は魔ものづくりだそうです」

 

さらにプロジェクトの進み方は参画するメンバーによって展開が変わっていく。大喜利のようだったと話す。

「楽器作り自体が即興の一部と捉えることができますね。誰が何を発見するかで方向性が決まっていきました。例えばエアコン掃除をしているのが、琴を演奏しているように見えると参加メンバーが絵を描いたところから、『エアコン琴』という楽器や奏法が生まれました。扇風機で弾くならボブ・ディランの『風に吹かれて』だよね、という誰かの言葉があって、よし、その曲を弾けるまでアップデートするぞ、となったり。誰かの言葉が具体的なアイデアに転換されていく姿が日々あってそれ自体が即興セッション的ですよね。子供も大人も問わず自由にイメージを出し合って、アイデアを膨らませていきました」

その大喜利とセッションの集大成が11月3日からのイベントで見られる。メディアアートとしても、盆踊りのような地域のお祭りにも解釈できるこのイベントを和田氏はどんな風に楽しんでもらいたいと考えているのだろうか。

「まずは迷い込んで目撃してほしいなと思っています。『家電を楽器に改造して演奏し、参加者みんなで電磁盆踊りをする』と聞いてもきっとピンとこないですよね。まずは観てもらって体験してもらうのが一番はやい。11月5日はコンサートと電磁盆踊りが同時に体験できるので、最後は参加者のみなさんと砂嵐のなかで一緒に踊りたいですね。人間もロスト・テクノロジーもAIもETも大歓迎です!(笑)」このエクストリームな音楽祭に参加すれば、今までの常識や尺度を一度壊して、新しい視座で物事を解釈できるようになるかもしれない。私たち取材陣がスタジオを後にした後あらゆる家電が楽器に見えるようになっていったように。

 

[イベント概要]
◆ 家電楽器体験!トークイベント!!電磁盆踊りリハーサル!
日時:
2017年11月3日(金・祝) 14:00-20:00(トークイベントは18:00-20:00)
2017年11月4日(土) 11:00-17:00(トークイベントは13:00-15:00)
会場 : スターライズタワー STUDIO JUPITER (東京都港区芝公園4-4-7 東京タワーメディアセンター内)
入場料 : 無料 申込不要 ※ドリンク代別

トークイベント:
11月3日「天翔けるその妄想を産み落とせ!」
トーク出演者 : 八谷和彦(メディア・アーティスト)、鈴木康広(アーティスト)、林千晶(ロフトワーク 代表取締役)、和田永

11月4日「蛙と魚と蟹と未来予想」
トーク出演: 藤浩志(美術家)、土佐信道-明和電機-(アーティスト)、津田大介(ジャーナリスト)、和田永

 

◆ 体験型コンサート!電磁盆踊り大会!
日時:2017年11月5日(日) 開場 17:30 開演 18:30
会場:スターライズタワー STUDIO EARTH (東京都港区芝公園4-4-7 東京タワーメディアセンター内)
入場料:前売券 3,000円/当日券 3,500円(全自由)
※ドリンク代別、小学生以下無料、再入場不可

出演:和田永 / 向井秀徳 / 快快-FAIFAI- / 市原えつこ / 飛鷹全法 / 松崎順一 / 吉田匡 /東京 Orchest-Lab / 日立 Orchest-Lab / 京都 Orchest-Lab / ほか
主催:ELECTRONICOS FANTASTICOS! 実行委員会(Sony Music Artists Inc. / VINYLSOYUZ LLC / NPO TOPPING EAST)
協力:DigitalDish studio inc. / MTRL KYOTO / TechShop Tokyo / cocoon / 橋の下世界音楽祭

関連記事

  1. 子どもたちが教えてくれる? フォークのクリエイティブラボの始点と視点

    READ MORE
  2. 松江翔輝の「学生クリエイターが見ている『今と未来』」

    READ MORE
  3. Adobe MAX 2019で作品を発表。2人のクリエイターが考える、世界で通用するキャリアの描き方

    READ MORE