MENU

クリエイターのためのクレジット・データベース

MENU
CLOSE © COPYRIGHT BAUS, ALL RIGHTS RESERVED

100年先を見据えた実験区、「100BANCH」の挑戦

Panasonic × Loftwork

100年先に向け、100のプロジェクトを生み出す。その実験区で、世界を豊かにする価値創造に挑む。こんなコンセプトを掲げ、昨年の夏に開業し、目下話題沸騰中の「100BANCH」(東京・渋谷)。取材当日、かつて倉庫として使われていたという建物を訪れると、なるほど“実験区”と呼ぶに相応しい佇まい。全館にリノベーションが施され、とても居心地がいい。オープンして3ヶ月弱、これまで一般公募から選ばれた30ほどのプロジェクトが始動し、「GARAGE」と名付けられたワークスペースには日夜を問わず、多くの若き挑戦者たちが集っている。「常時、20組ほどのプロジェクトチームがこの場を拠点として活動しているんですよ」。100BANCHに常駐するパナソニック・経営企画部の則武里恵さん(写真・左)が話すと、共に100BANCHのコンセプトを作り、運営に携わるロフトワークの松井創さん(同・右)も、「各分野のトップランナーによるメンタリングの機会を提供し、チーム個々の活動を支援しているところも“らしさ”ですね」と続く。イノベーション、働き方改革……いまの時代を象徴するテーマと向き合う「100BANCH」では、いま何が起きているのか? その全貌に迫った。

ーーまずはじめに「100BANCH」開業の経緯を聞かせてください。

則武さん:2018年、パナソニックが創業100周年を迎えるんです。この100周年を未来への中継点として、次の100年にどう繋げていくか、そのためにできることを考えています。検討をはじめたのは2016年夏頃。100BANCHの開業が今夏なのでちょうど1年ぐらい前のことです。

松井さん:僕たちロフトワークにお声がけいただいたのが、秋頃でしたね。若い世代が気軽に集って何かコトづくりできる、カフェのような場を作りたい。当初はこんな感じの依頼でしたよね? そこからプロジェクトチームが発足し、ディスカッションを重ね、これからの時代を担う若い世代の活動を支援できるような場を作ろうという話にブラッシュアップされ、今につながる100BANCHの構想に至りました。

則武さん:骨子が決まってからはあっという間でしたね。拠点をどこに置くか? パナソニックとして足場の弱い西側を拠点とし、大学が多いエリアからアクセスの良い地域だと何か新しいことが始まる予感がする。だとすれば、再開発が進み、クリエイティブ視点を持った多様な人たちが集まる渋谷エリアがいいのでは? コトづくりの場とするなら、多くの人が日々集える敷地も確保したい。こんな風に、ロフトワークさんと1つ1つ話を前に進めていき、縁あってカフェ文化や都市のライフスタイルを牽引するカフェ・カンパニーさんともコラボレーションという形でご一緒することができました。

松井さん:物件ベースでいうと、谷根千エリアにも銭湯の跡地っていうすごくいい物件があったんですが、若者層に加え、より多くの世代が出入りしやすいという視点、かつて倉庫として使われていたという敷地の広さなど、トータルで検討して今の場所に決めたんです。

則武さん:銭湯の跡地もすごく良かったんですけどね。

松井さん:拠点が決まってからは則武さんが言うとおり、あっという間でした。2017年7月7日のオープンに先がけ、建物のリノベーションに始まり、施設の空間設計、一般公募によるプロジェクトチームの選定、プロジェクトが社会へ実装するための知恵を渡すメンターのアサイン、運用ガイドラインづくり、コミュニケーションデザイン……など、やるべきことはさまざまに。多くのスタッフと奔走しました。

則武さん:ですね(笑)。2年間で次の100年を作る100のプロジェクトを世に送り出す。100BANCHの核となる計画もこの頃、同時並行で議論を深めていって。かくして開業に至ったわけです。

 

ーー100BANCHの“他にはない”コンセプトのひとつに、各プロジェクトチームを支援するメンターの存在があります。このあたりの話を詳しく聞かせてください。

松井さん:100BANCHに入居できるプロジェクトチームは一般公募から選ばれます。ちなみに第1期の応募総数は68件。通常、選定する際には合議制や審査員同士の申し合わせにより、決まることが多いと思いますが、100BANCHの場合は審査方法が異なります。「このプロジェクトチームを応援したい」。こう思うメンターが一人いれば、プロジェクトがスタートするんです。

則武さん:“イノベーションの種”は思いがけない発想から生まれるものですよね? 正確な分析やマーケティングの数字に基づいて審査会をしたら、採択できるプロジェクトが限られてしまいます。常識にとらわれない“新しい価値観”を持った多様なプロジェクトと出会いたいという思いから、支援するメンターが一人いればOKとしました。ですから、100BANCHのメンター陣はじつに多種多様。メディアアーティストの落合陽一さん、予防医学研究者の石川善樹さん、「the OPEN BOOK」店主の田中開さん、『WIRED』日本版 編集長の若林恵さん、渋谷区長の長谷部健さん、写真家の池田晶紀さん。ほかにも、各分野を牽引するトップランナーの方々がメンターとして、始動したプロジェクトが夢やプランで終わらず、社会へ実装するための支援をしてもらっています。

松井さん:メンターとのやりとりは両者にお任せしているので、直接会ってアドバイスを受けるチームもいれば、マンスリーミートアップで定期的に進捗共有し、課題解決に向けたディスカッションやプロジェクトの実現に向けたアドバイスやサポートをしてもらうチームもいます。

則武さん:応募資格を35歳未満にしているところも100BANCHならではですね。それぞれの年代がそれぞれ頑張っているのは承知した上で、いまいちばん機会を必要としているのは若い世代だとも思っていて。現在プロジェクトを進めるチームの中には、スマホひとつで民泊運営をできる未来を目指すためにサービスアプリを開発している高校生もいるんですよ。

松井さん:一家に一台のロボット普及を目指す高校生チームもいますね。みな、本当にエネルギッシュ。大きな夢を持っていてビックリさせられるばかり。

則武さん:短期集中でプロジェクトを進めていくので、皆さん真剣。他のプロジェクトチームがどんなことをしているのか。お互い、交流しながら士気を高め合っている姿も日常のワンシーン。メンバー同士も、とても仲が良いんです。

 

ーー本格始動して5ヶ月。これまで100BANCHという実験区を舞台に、どんなプロジェクトが進んでいきましたか?

松井さん:それはもう、いろいろありますよね?(笑)

則武さん:ですね。例えば、昆虫が「食」として魅力的なものになるよう、昆虫食をデザインしている「Future Insect Eating」というチームがいて。100BANCHのほかのメンバーも興味津々で、コラボ展開している最中にあったり。

松井さん:ふんどしの世界展開を目指す「FFF」は、世界ではじめての「ふんどしファッションフェスティバル」を開催。多くのメディアに取り上げられ、次はアートやテクノロジーとコラボして、日本文化の“次の100年”と呼ばれるにふさわしいふんどしのアウトプットに奔走しています。多くの仲間と出会い、次の仕掛けに向け、奮闘中です。

則武さん:3Dプリンターなどを活用して、オーダーメイドを簡単に作れる世界を目指す「MonoConnect」も、100BANCHにいる3ヶ月でサービスの検討を繰り返し、実際にサービスをスタートしました。

松井さん:都市と地域をむすぶ「おむすびツーリズム」を実践するチームは、クラウドファンディングで「旅するおむすび屋さん」プロジェクトで目標金額を達成し、次の仕掛けに向け、動き出している最中です。

則武さん:いま100BANCHでどんなプロジェクトが始動しているのか、気になる方はぜひ、ホームページで確認してください。多様性と呼ぶに相応しいプロジェクトがたくさんあります。ご興味のある方は、見学もできますので、お気軽にお越しください。

ーー最後に100BANCHのこれからについて聞かせてください。

松井さん:個人でもチームでも、ぜひ多くの人たちに応募してほしいですね。学生さんや個人事業主だけでなく、ビジネスマンとして働いている人にこそ、いまあるアイデアを形にすべく、チャレンジしていただきたいです。実際、今でも昼間は会社員として働き、夜や週末に100BANCHでプロジェクトを始動している人も多くいるんです。

則武さん:100BANCHにいるメンバーはみな、野心的で魅力的です。その交流を通して、新しい仲間ができるかもしれない。毎月審査会をし、毎月卒業生がいて、毎月新しいメンバーが入ってくるので、その環境も刺激的だと思います。次の100年をつくる人と出会えることを楽しみにしています。

松井さん:1階にオープンした地中海料理店「LAND Seafood」も美味しいので食べに来てくださいね。

則武さん:ですね(笑)

PROFILE

100BANCH

100年先に向けた100のプロジェクトを生みだす実験区。今夏、「未来をつくる実験区」というコンセプトのもと、パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーのコラボレーションにより誕生。1階はカフェ・カンパニーが企画・運営する未来に向け新たな食を探求するカフェスペース「KITCHEN」、2階はさまざまなプロジェクトが同時多発的に展開するプロジェクトメンバーのためのワークスペース「GARAGE」、3階はパナソニックが次の100年を創りだすためのコラボレーションスペース「LOFT」。日々、イノベーションのシーズが誕生中。

写真・池本史彦 編集/文・紺谷宏之

関連記事

  1. McCANN MILLENNIALSの「世代で区切るのはもう古い」

    READ MORE
  2. 勇気とは? 広告とメディア、トップランナーの確信

    READ MORE
  3. プロデューサー対談、「納得できる仕事づくり」【前編】

    READ MORE