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エンジニアも“クリエイター的視点”を持つべき。学生エンジニアが考える、これからの時代に求められるスキル

クマ財団の若き実力者たち #3 エンジニア 藤坂祐史 × 宮代理弘

新しい挑戦に、もはや年齢は関係ない。第一線でエンジニアとして活躍し、様々なアプリの企画から開発まで手がける学生エンジニアを見ていると、そう思う。ふたりの学生エンジニア、藤坂祐史さん(写真・左)と宮代理弘さん(同・右)は、若きクリエイターを支援する「クマ財団」第1期生のメンバーでもある。「エンジニアもクリエイターの視点を持つべきだ」と語る、ふたりの想いに迫った。

「まずは自分が欲しいものをつくる」

ーーおふたりはエンジニアとして様々なアプリやサービスの開発に関わっていますよね。まず、宮代さんはどのような想いでアプリ制作を行っているのでしょうか。

宮代さん:「人がするべきことにフォーカスできる」社会を目指して、アプリを作っています。代表的なものはスマホアプリをブラウザ上で開発できる「Processin.ga」というサービスです。
iOSやAndroidのアプリ開発は環境構築に時間がかかるため、そこで挫折してしまう人も多い。環境構築の敷居を下げることで、プログラミングを始めやすくすることを目指しました。あくまでプロトタイプの制作用ツールですが、ブラウザでコードを打ち込むと、書いたコードは保存されてQRコード形式で他のデバイスに共有することができます。QRコードを送るだけでユーザーテストに参加してもらえるサービスです。

ーーアプリ開発における環境構築とユーザーテストの敷居を下げたわけですね。制作のきっかけを教えてください。

宮代さん:基本的には自分が欲しいと思うアプリやサービスを作ります。自分が使いたいと思っていれば、制作に取り組むモチベーションも湧くじゃないですか。

ただ、自分のアイデアがあまりに人に理解されないと悲しいのでアイデアで終わらせずに「作って見せてやる」という気持ちも、原動力になっていますね。最近は論文執筆のためのツールを作っているのですが、最初は「Wordでいいじゃん」と言われてしまって。実際に使ってもらえるようにサービスとして作りこみ、使ってもらうことで「これは書きやすいね」と言ってもらえるようになりました。

ーー自分が一番のユーザーなんですね。藤坂さんの開発しているアプリについて教えてください。取材などでも使えるボイスレコーダーアプリでしたよね。

藤坂さん:そうですね。「Recoco」という振り返りやすさにこだわったボイスレコーダーアプリを開発しています。大学の講義やゼミで、ふと考え事をして話を聞き逃したり、その場では理解したつもりでも忘れてしまったりするので、後から聞けるように録音していました。
標準のボイスメモアプリだと90分の中から聞き返したいポイントを探すのは大変です。話を聞きながらその場で音声にタグ付けしておけば、手軽に効率よく聞き直し、振り返りができるのではないかと思い作りました。

https://recoco.audio/

ーー藤坂さんも最初は自分のためにアプリを開発されたんですね。自動文字起こしの精度はどれくらいなのか気になります。

藤坂さん:細かなチューニングは独自で行っていますが、今はAppleが提供する音声アシスタントのSiriと同じ技術をベースに使っています。音声認識の精度はマイクまでの距離や声の大きさに結構依存していて、遠くの声はほとんど認識できない場合もあります。近距離での会話程度なら、完璧でなくても、なんとなくキーワードから話題が分かる程度に認識できたりします。Recocoは、聞き返したいポイントを探すのが主目的だったので、ある程度割り切っているところはあります。ちなみに、外部マイクを繋げば認識精度は高くなりやすいですね。

ーーRecocoは30万ダウンロードを超えて、様々な目的で使われるようになったとお聞きしました。より多くの人に届けるためにどのような工夫をしましたか。

藤坂さん:面倒臭がりの自分がどうやったら使い続けるかを考えて改善していきました。自分も含めて、人間は基本的に怠惰な気がします。ただ録音するだけでは、きっと後から振り返らずに積み上がっていくばかり。
でも、音声中の大事なポイントがわかって、すぐに再生できるくらい簡単になればきっと使うはず。さらに「カレンダーや位置情報から名前を自動でつけてくれる」など、保存から検索、再生まで積み重なる操作一つひとつに楽にする機能や工夫を加えていくことが、使いやすさに繋がったと思います。

 

クマ財団で出会い、約半年。お互いのアプリに抱く印象は?

ーークマ財団で出会ってから約半年、お互いのアプリやサービスに対してどのような印象を持っていますか。

宮代さん:藤坂さんが作っているアプリはかなりのユーザー数がいるので、凄いなと思います。多くの人に価値を理解してもらい、使ってもらえているのは羨ましいです。

藤坂さん:僕は宮代くんの作品に優しさや愛を感じています。自分が便利だと感じたり、使いたいと思うツールを“翻訳”してITリテラシーが高くなくても使えるようにしている。それによって様々な人が可能性を発揮できたりする。優しさだと思います。

 

アプリ開発のこれまでとこれから

ーーおふたりは自身が企画から関わるアプリの制作だけではなく、テック企業でインターンもしているんですよね。どのようなスキルを身につけるためにインターンしているのでしょうか。

宮代さん:大きく2つあります。1つは、一人でアプリを開発しているだけでは、大規模なサービス開発に関わることができないからです。今はWantedlyでエンジニアとして働きつつ、大規模なサービスを運用する経験を積んでいますね。2つ目は、自分の知らない技術を効率よく学べると思ったからです。やはり自分一人では知識を得ることに限界がありますよね。

藤坂さん:僕も宮代くんの考えに近いですね。技術力が高いエンジニアやディレクターがいる環境で刺激を受けたい気持ちがあります。今はクックパッドでエンジニアとして働いています。

ーー成長のために様々な経験を積んできたと思います。将来の進路をどのように見据えていますか。

藤坂さん:今は就職を考えています。副業もできる会社で優秀な人に囲まれて成長しながら、自分のプロジェクトも進めていくのが直近でやりたいことかなと思っています。起業やフリーランスなどの選択肢もあると思いますが、長期的に見て「自分が一番やりたいことを叶えられるか」を考えて、状況が変わればその都度選択していきたいです。そのためにも腕を磨いて、視野を広げるのが大事かと思っています。

ーー宮代さんは大学院の修士1年生ですよね。今後の進路をどのように考えていますか。

宮代さん:今はまだ人生をかけて取り組みたいことが見つけられていないので、まずは共感して働ける企業に入りたいと考えています。そこでスキルを磨き、挑戦したいことが見つかった時に備えます。

 

エンジニアもクリエイターの視点を持つべき

ーーおふたりはクマ財団に、どのようなきっかけで応募したのでしょうか。

宮代さん:学生生活の終わりが近づく中で何か新しいことに挑戦してみたい、という想いがきっかけでした。クマ財団に入ると、今まで通りの生活を送っていたら経験できないようなことを経験できたのが嬉しかったです。たとえば、昆虫食を食べたりとか(笑)。

ーー昆虫食は驚きますね(笑)。クマ財団のメンバーの取り組みの中で刺激を受けたものはありますか?

宮代さん:LISPという、今のエンジニアから見てもマニアックな言語があるのですが、その言語を使いながら音楽を奏でる芸大生がいたことです。技術の使い方の枠組みを崩されて、とても刺激的でしたね。

ーーありがとうございます。藤坂さんはどのような動機でクマ財団に応募したんですか。

藤坂さん:最初は奨学金とメンタリングに惹かれました。お金に余裕があれば、新しい機材が必要になった時も買いやすいと考えて。でも、入ってから気づいた魅力のほうが大きいです。宮代くんも言っていましたが、普通に暮らしていると他ジャンルのクリエイターと出会う機会は少ないんですよ。特に彫刻や日本画の人と出会うことはほとんどない。普段接することのないクリエイターの方と合宿などで話すと、自分と全然違う考えに面白いなと思ったり、一方で何かを作り出す上で根底に意外と似た部分を感じられたり。思ったよりも仲良くなれて、それが新鮮でした。

ーー様々なジャンルのクリエイターと出会う中で、ご自身の制作に変化はありましたか。

藤坂さん:これまで自分のことをクリエイターだとは捉えていなかったんです。エンジニアの多くは、そうだと思います。でも、クマ財団でクリエイターの方と接する中で、“コードを書くだけ”のエンジニアではなくクリエイター的な視点も持つべきだと考えるようになりました。

宮代さん:すごく共感します。最近はプログラミングを始めるハードルは下がっていて、コードは書こうと思えば誰でも書けます。その価値は相対的に下がり、自分はどう差別化を図っていくかを考えると、やはりクリエーションの部分が重要になるのではないかと考えますよね。

ーーエンジニアでありながらもクリエイターの視点を持つきっかけをもらえた、ということですよね。宮代さん、藤坂さん、今日はありがとうございました。

PROFILE

藤坂 祐史

筑波大学在学中に「Recture 〜復習しやすい授業記録アプリ〜」を開発し、U-22プログラミング・コンテスト2015での経済産業大臣賞など複数受賞。2016年、IPA 未踏IT人材発掘・育成事業に採択され「Recoco」を開発。未踏スーパークリエータ認定。ラーニング・イノベーション グランプリ2017にて最優秀ラーニングイノベーション賞受賞。 https://recoco.audio

PROFILE

宮代 理弘

「ひとがすべきことだけをする」ことをモットーに活動するソフトウェアプログラマー。プログラムで済むことは自動化し、必要な作業を単純にすることを目指している。その延長線として、扱いづらい技術を最適化して、より多くのひとが使えるようなプログラムを作る。 https://app.mikumiku.moe

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