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「心惹かれた企業に自らアプローチ」21歳映像クリエイターの仕事観

クマ財団の若き実力者たち #4 映像クリエイター 清水良広

1996年生まれ21歳の清水良広さんは、実写からCG、360°映像技術やプロジェクションマッピングまで幅広い映像制作を手がけるクリエイターだ。国立極地研究所から与えられたミッションにより、アラスカで撮影した世界最高解像度の360°オーロラ映像が公開されたばかり。一方では、大手百貨店に個室授乳室を作るプロジェクトを企画、実現。映像を強みに、企業に対して様々な提案を主体的に行う積極性には目を見張る。そんな彼は、若きクリエイターを支援する「クマ財団」第1期生のメンバーでもある。技術と表現の間で自らの道を模索する、彼の素顔に迫る。

世界で最も高解像度な360°オーロラ映像撮影のためにアラスカへ

ーーまず、清水さんが手がけてきた作品について教えてください。昨年の春にアラスカでオーロラの撮影をされていたとか…?

清水さん:アラスカ州フェアバンクスに独自システムの360°カメラを持っていき、世界最高解像度での360°オーロラ撮影(*1)に挑戦しました。もともとTDKさんから国立極地研究所に企業ブランディング活動に関するご相談があり、僕も別件のNASAバルーンプロジェクトのカメラ制作に関して国立極地研究所に相談していたことも相まって、オーロラの撮影に携わることになったんです。

*1:清水さんが参加したTDKオーロラプロジェクトはこちら

ーー実際にアラスカまで出向き、撮影したんですよね。

清水さん:そうですね。世界最高解像度で撮影できる360°カメラを制作し、昨年の3月に極寒のアラスカに旅立ちました。自分は現地に1週間しかいられなかったので、現地のカメラマンに撮影方法を一通りお伝えし、一番いいタイミングを見計らってオーロラの映像を撮影してもらいました。幸運にも自分の滞在中にも小さなオーロラを観ることができたのが嬉しかったですね。

ーー撮影した映像をどのように加工したのでしょうか。

清水さん:複数の画像を一つに繋げる作業をステッチと呼ぶのですが、360°映像をつくるためにある程度は計算で繋げることはできたものの、最後は特異点を検出して地道に手作業でステッチを行いました。世界最高解像度を誇る高精細なオーロラ映像を撮影しアーカイブとして保存するのが今回のミッションだったので、RAWの画像連番で画質を優先して最終的に映像に仕上げました。この映像はプラネタリウムやVR機器でも上映できるデータなので、いま様々な方面で活用できないかを企んでいるところです。

ーーオーロラ360°映像撮影プロジェクトの他に印象に残っている制作はありますか。

清水さん:クマ財団さんにもご協力いただいた「武蔵野美術大学芸術祭2017 美術館プロジェクションマッピング」です。武蔵美生にとって、毎年3万人が訪れる学園祭は一大イベント。そのトリを飾ったのが、このプロジェクションマッピングなんです。
使用する実写映像は芸術祭期間中に撮影したため、投影日の朝から編集しなければいけないというハードスケジュール。当日は台風が直撃したせいで閉会時間が急遽早まり、プロジェクションマッピングを投影する数分前に修正した映像の書き出しが終わるという……。時間を表示する演出があったのでそこはどうしても拘りたかったんです。今ではいい思い出ですね(笑)。

ーー実写からプロジェクションマッピングまで幅広い映像制作を手がけられているんですね。清水さんは自身の強みをどのように捉えていますか。

清水さん:様々な映像ジャンルをカバーしていることが強みだと考えています。実写もCGもわかっていれば、お互いのクリエイターと共通言語を持つことができます。ディレクション側も担当できるので、自然と仕事の幅が広がってきています。

 

心惹かれた企業に積極的にアプローチする姿勢

ーー清水さんは大学生でありながら、様々なクライアントの映像制作にも携わっていますよね。

清水さん:ありがたいことに、映像だけではなく「そもそも何をつくるのか」という部分からご一緒することも増えてきて。まずは予算をいただき、その予算をロゴや映像制作、コピーライティングやWEB制作などに割り振り、全体のディレクションを行っています。もし映像を作る必要がある場合は自分で制作を担当することもあります。

ーー企画などの上流から関わる仕事は、どのように獲得していますか。企業から相談を貰うことが多いのでしょうか。

清水さん:実は、そうでもないんです。ユニークだと思った企業の担当者に自らツテをたどって直接アプローチし、自分ができることを示しながら仕事を獲得します。アプローチする企業や団体に共通しているのは、「取組みや事業が関係者みんなを幸せにしていること」です。

ーー清水さんが心惹かれ、映像制作に携わった会社を具体的に教えていただいてもいいですか。

清水さん:完全個室ナーシングルーム「mamaro」というプロダクトの映像制作ですね。授乳室はそれ自体がお金を生み出さないため、大手の百貨店でもカーテンで仕切った簡単なものであることが多い。そこでTrim株式会社は、個室のナーシングルームをつくり「授乳用の個室があるからお店に行きたい」と思ってもらえるブランドづくりに取り組んでいました。
さらに同社は、授乳中の数分間暇にしているお母さん向けにサイネージ広告を設置、ナーシングルームを設置する施設に広告収入が入る仕組みを構築しています。まさに関わるすべての人が幸せになるプロダクトでした。

ーー清水さんの積極的に仕事を獲りにいく姿勢は印象的です。自ら仕事の提案をする上で心がけていることはありますか。

清水さん:クライアントに合わせて、提案の仕方を変えています。たとえば、スタートアップと仕事する時は、安い価格で仕事を請けることもあります。その分野の第一線で活躍する人と仕事をすると学べることが多く、企業の成長に貢献できるのも嬉しいですよね。その企業が成長した時にまた仕事を貰えればと思い、将来に投資する感覚で取り組む仕事もありますね。

 

いい機材を使えば、いい画が撮れる。時間も生まれる。

ーー仕事で稼いだお金は何に使っていますか。

清水さん:映像制作で稼いだお金は、機材の購入などの投資に費やしています。いい機材を使えば、思い通りのいい画が撮れる。すると編集で悩む時間が少なくなり、空いた時間で新しい仕事に取り組めたり、質の高いオフの時間を捻出できたりします。クマ財団の奨学金も、即日全額機材に投資しました。

ーーストイックに映像制作に向き合う姿勢に驚かされます。クマ財団の奨学金も清水さんの映像制作に活きているとのことでしたが、そもそもクマ財団に応募したきっかけは何だったのでしょう?

清水さん:純粋にかっこいいと思ったからです(笑)。「クマ財団の一期生になれるとイケてるんじゃないか」と思って応募しました。応募する際は勢いと個性を大切にしつつ、同じ学校の先輩である市川稜さんなども応募していると知っていたので、自身は映像表現の中でも360°映像の撮影プロジェクトをポートフォリオに載せましたね。
僕も老舗のクラブであるWOMBのメインフロアでVJをやっていましたが、市川さんはULTRA JAPANで同じことをしている。やはり規模では見劣りしてしまいます。何事にも勝ち残る為には他との相対的なポジショニングを考えることが大事ですよね。自分が最も輝くことができるフィールドを探して。一旦逃げることも作戦です。あらゆる状況に対処できるよう、常日頃から鋭利な武器を増やそうと企んでいます(笑)。

ーー「映像」という分野の中でも、自身の立ち位置を明確化する必要があったわけですね。「映像」以外の分野でも、クマ財団には様々な強みを持ったクリエイターの方が参加しています。同期と交流する中で、得られたものはありますか?

清水さん:クマ財団に入って驚いたのは、世の中には想像がつかないようなジャンルのクリエイターがいることです。彼らの活動を見ていると、自分はまだまだ視野を広げる必要があると感じます。特に昆虫食を提供する篠原くんの情熱には感動しました(笑)。視野の広がりを肌で感じましたね。
もともと映像に関心を持ったのは、子どもの頃にディスカバリーチャンネルやアニマルプラネットを観て、それらの番組で幅広い知識を得ることが好きだったからなんです。自身も映像の分野に身を置いていれば、幅広い分野に関わり続けられると思いました。クマ財団に入ってから、そんな映像という仕事の可能性を改めて考え、異なる専門性を持った同期とコラボレーションしたいと考えるようになりましたね。

技術と表現、そのどちらを追うべきか

ーー清水さんは現在大学3年生ですよね。大学卒業後の進路はもう決まっていますか。

清水さん:いくつかの選択肢の中から、まだ絞りきれていません。ひとつは、大学院に進学して「人類の映像技術の発展のために猛進すること」。今声をかけていただいている京都大学のとある研究室が候補です。もうひとつは、「映像制作と表現に取り組むこと」。映像制作を含め、様々なクライアントワークでお金を稼ぎ、空いた時間で様々な表現に挑戦できるのが理想的ですね。

ーー今後の目標はありますか。

清水さん:「映像」というジャンルに身を置く以上、2020年の東京五輪は意識してしまいますね。僕が映像を始めたのは、映像ならば言語の壁を超えて世界中にメッセージを届けられると感じたからなんです。次の東京五輪は、言葉が通じない人にも映像という新しい言語を通じてメッセージを伝えられる一大イベント。その先に広がっている未来に今からワクワクしますよね。

PROFILE

清水 良広

1996年生まれ。武蔵野美術大学在学。高校在学時より実写を主体とした包括的な映像表現を模索する。アラスカ州フェアバンクスにて世界最高解像度でのTDKオーロラ360°映像撮影プロジェクトに参加。NASAバルーンプロジェクトに同乗する撮影装置を制作。スタートアップやメーカー、行政機関などの多岐にわたる領域に映像技術の立場から携わっている。

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写真・小林真梨子 文・岡田弘太郎 編集・上野なつみ

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