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イラストレーター・南 夏希の夢「iPhoneと指先で、みんなに笑顔を届けたい」

イラストレーター・南 夏希

イラストレーター・南 夏希さんの画材は、iPhoneと指先。1万3500人のフォロワーがつくInstagramに投稿すれば、瞬く間にみんなを笑顔にしてしまうイラストを描く。南さんのイラストは、渡辺直美さんや鈴木おさむ・美幸夫妻をはじめ、多くの著名人に届き、親交を育んできた。そんな南さんは、意外にも5年前までふつうの会社員。法人営業として働く中、ふと気づいた自分の感情に素直な行動で答え、わずか5年で、イラストレーターとして活躍するいまの自分に近づいた。「本当にラッキーなんです」と話す彼女に、運を呼び込むに至ったiPhone指描きイラストと、脱サラして挑戦した日々を質問する。

ーー線と差し色が魅力的な南さんの絵は、すべてiPhoneと指先で描いているんですよね?

南さん:はい、奈良から大阪のアートスクールへ通っていた時、片道1時間の電車通学中にiPhoneと指先で描きはじめました。当時、LINEクリエイターズスタンプが流行っていて、つくりたいなと思って。「コンピュータが使えないと、つくれないのかな?」と思っていたんですけど、調べてみたら、入院中の人でもスマートフォンアプリでつくれたというブログを見つけて。その方は、背景を消すアプリ、絵を描くアプリ、画像サイズをそろえるアプリ、3つあればつくれるって紹介していたので、同じアプリをダウンロードして、簡単な絵でスタンプをつくったことがはじまりです。通学の1時間を無駄にしないように、電車でできることからはじめました。通学の時間が短かったらスマホで描いていなかったので、ラッキーなんです。

Mizuno Webページ WAVE LIMB SERIES

【3分動画】気になるiPhone作画シーン

ーーInstagramも利用していますよね?

南さん:私の絵を見てほしかったから。人に直接見せてしまうと、相手は褒めることしかできないじゃないですか。どう言っていいか困ると思うので、SNSなら見せやすいんですよ。見ている人はスルーできるし、コメントやlikeすることもできる。最初はプライベートアカウントに投稿していたんですけど、イラストばかりになってきてしまったので、専用アカウントをつくりました。「どれだけの人が私の絵を見たいと思って、こっちのアカウントにきてくれるんやろう」って思っていましたよ。

 

ーー実際にイラスト専用のアカウントをつくったら、見にきてくれる人はいましたか?

南さん:アップするたびに、「この人も見にきてくれた!」って嬉しくなって。ハッシュタグを使い出すと、海外の人のlikeがきて、「うれしいな」って。つづけていたら、ある日、スザンヌさんが私の絵をブログで紹介してくださって。友達から聞いて知ったんですけど、とってもうれしかったです。そのあと、いろんな方々に絵を見てもらえるようになっていって、Instagramを開けるたびに100名ぐらいずつフォロワーが増えていって。驚きつつ、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

ーーどんな絵をあげると反響がいいですか?

南さん:明らかに違うのは渡辺直美さんのイラストですよ。人の目にとまるみたいで。でも反応がいいから描くっていうのは嫌で。あまり頻繁には描かないようにしています。そのぶん描く時は「直美さんと友達になれますように!」って気持ちを込めて描いています。直美さんに限らず、「絵になる人」を描くのが好きです。たとえば、ヨーロッパの人は目がいい感じに綺麗で、まつげの流れも好きだし、そこまで掘りも深くないので描いていてたのしい。直美さんは、彼女の持っている幸せなオーラが絵になるなって思います。

 

ーーどの絵を見ても、女性が幸せそうに描かれていますよね。

南さん:うれしい! 私の描くコンセプトは、「目で見るハッピー」なんですよ。私が描いた笑顔の女の子を見たら、その人にも笑顔が移って微笑むかもしれない。それって素晴らしいことじゃないですか。笑顔は伝染するんです。

ーーハッピーな気分で描くために、音楽を聴いたりしますか?

南さん:ミスチルさんや、Salyuさん、スピッツさんなどを聴いています。いつかCDジャケットを描いてみたいなって思うんです。特に、桜井和寿さんは好きなので、桜井さんに南 夏希ってイラストレーターがいることは、いつか気づいてほしいです。

 

ーーどうすれば桜井和寿さんに気づいてもらえるでしょう?

南さん:今までのやり方だったら、Instagramのタグ付けなんですけど、きっと桜井さんは見ませんよね。最近、ミスチルのライブメンバーに加わった人は、トイレに貼ってあったチラシを見て、桜井さんがその人を知ったそうなんです。だから、私もいろんな人が無意識のうちに見てしまうような仕事をしたい。いろんなところで知らない人が見て、「かわいい」って思ってくれるのもありだし、知り合いが立ち寄った場所で、「これ、なっちゃんの絵じゃん!」って喜んでくれるのも、すごい夢です。

 

ーー夢っていいですね。今までにも、仕事で叶った夢はありますか?

南さん:全部、私がやりたかったことです。雑誌の挿絵もそうだし、「誰でも知ってる雑誌で描きたい」と思ったらゼクシィさんで描けて、親がすごい喜んでくれました。「私自身も取り上げられたい」って思っていたら、CanCamさんがインタビューしてくれて。「大きな絵が描きたい」って思ったらイベントに呼ばれたり。全部、全部やりたかったことです。

ーー絵を描くこと自体は、子どもの頃からの夢でしたか?

南さん:小っちゃい頃から好きでした。3歳から絵と、ピアノが好きで。小学校になってからは、『セーラームーン』『ご近所物語』『怪盗セイント・テール』とかまねしてました。漫画を描いて、学校に持っていったり。ただただ可愛い女の子の顔やお洋服を描いていて。でも、中学では部活ばかりやっていました。バレーボール部です。ピアノをやっていたから、怒られましたけど、楽しかった。それで、高校からプリクラが流行って。友達からプリクラ帳の表紙を描いてほしい、1ページを絵で埋めてほしいって頼まれてました。その子がディズニー好きだったら、ディズニーで1ページを埋めてあげて。教科書の隅にパラパラ漫画を描いたりもしましたよ。棒人間ですけどね(笑)

 

ーー子どもの頃から「人を笑顔にすること」がうれしかったんですね。当時からプロになろうと思っていましたか?

南さん:いえ、現実味がないなと思っていたので。ピアノの先生かイラストレーターになりたかったんですけど、イラストで食べていくって想像つかなくって。音大を目指そうと思って。でも、音大って楽器だけでなく歌もうたえないといけなくて、やってなかったからあっさり諦めました。美大って頭もなくて、「4年間、続けられることはなんやろう」と思って、心理学を選んだんです。卒業する頃には就活もしましたよ。好きなプリンがつくりたくて、お菓子メーカーを受けたり。とりあえず、「クリエイティブなことがいいねん」って思って、旅行業界に入りました。

 

ーーイラストレーター以外の仕事をしていたんですね。

南さん:はい、とりあえず3年。法人営業していて超大変でした。テレアポや飛び込みで、「御堂筋のビルを端から攻めるよ」って。でも、働いてよかったなと思ってます。仕事は自分でとってくるものだし、数字も自分であげるもの。わからないことは、先輩だけでなくお客さんにも聞いて、ちゃんと人を頼ること。添乗員もしたので、はじめて行った場所での臨機応変さも身につきました。

 

ーーなぜ、諦めていたイラストレーターを目指すことに?

南さん:会社では、もう目標がないと思って。配属先のチームに恵まれていて、新人賞を受賞できたんですね。東京で表彰式に出て、盾をもらったりして。その時、「これ以上出世したいとも思わへん」って気づいて。部長になりたい、支店長になりたい、社長になりたい、それもない。給料が大幅にアップする会社でもないから、「じゃあ、今がやめるタイミングか」って。自分の人生が自分のものっていううちに、悔いのないようにやっておこうと思いました。「27歳から、ちゃんとしよう」と思って、25〜26歳はフリーターをしてから、アートスクールに通いはじめて。そのあとは、これまでお話ししたような感じで。2017年から東京に上京してきました。

南さん東京憩いの場「THE LOCAL COFFEE STAND」。この日は店員さんも偶然、同じ赤い服!
店頭でオリジナルポストカードも販売中(2018年1月現在)

ーー会社をやめたり、上京したり。新しいことに一歩踏み出すのは怖くないですか?

南さん:何か悪いことがあったとしても、「まぁ、なんとかなるやろう」って思っちゃうんです。会社をやめても食べていく方法はあるし、東京にくる時もイラストレーターだけでやっていけるとは思っていなかったし。「まぁ、どっかで働こうかな」って。

 

ーーとはいえ、ピアノ、心理学、旅行業と、やることをいろいろ変えてきた南さんも、イラストレーターに落ち着きましたね。

南さん:はい! 本当にやりたかった仕事です。何十年後も、私は今の仕事を続けたいと思っていて。その何十年後も仕事をお願いされるには、人とのつながりがないと、「南さんにお願いしたい」ってならないじゃないですか。だから、直接お会いして、絵だけじゃなくて、私の性格も全部知ってもらったうえで、私のことを一人の人間として雰囲気的に好きだなって思ってもらいながら仕事を続けていきたいです。

 

ーー最後に、今後の目標を教えてください。

南さん:私にはできないことがあるので、仲間がほしいです。平面図は描けますけど、立体図は描けませんし、動画もつくれません。写真も撮れないから、できる人とつながって、一緒につくっていきたい。そのためにも、謙虚と感謝を忘れないようにします。私自身、一緒に仕事をする人が上からものを言うような方だったら嫌ですし。調子に乗ったら終わりだと思うので。私、パソコンのディスプレイの下に、ローマ字で「KENKYO」「KANSYA」って貼っているくらいなんですよ(笑)

PROFILE

南 夏希

1987年奈良県生まれ、神奈川県在住。イラストレーター。アートスクール在学中、バリスタとしてアルバイトをしていたコーヒーロースターで、自身の絵がパッケージに採用される。それを端緒に、コーヒー業界の知人・友人が増え、2017年には東京・青山通り沿いの「THE LOCAL COFFEE STAND」(当インタビュー会場)にて個展を開催。土日在廊時に実施した似顔絵サービスは、予約が満席になるほどの人気者。LOFTクリエイターズダイアリーで手帳も販売されている。

写真/動画・雨森希紀(Maran.Don) 文・新井作文店 編集・Orie

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