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悩んだら危ないほうを選ぶ。出会いを大切にしたいから、ギリギリまで待つ。【前編】

映画プロデューサー・小説家 川村元気

日本映画界の若きエース、川村元気さん。26歳の時、映画『電車男』を企画・プロデュースし、その後も『告白』『悪人』『モテキ』『バクマン。』など、映画プロデューサーとしてヒット作を量産。2016年には『君の名は。』を手がけ、名実ともに“時代の寵児”となった。その活躍は映画にとどまらず、2012年には小説家デビュー。『世界から猫が消えたなら』は130万部を超えるベストセラーに。絵本作家や広告のクリエイティブ・ディレクター、ミュージック・ビデオの監督としても活躍中だ。インタビュー前編では、川村流チームづくりについて聞いた。

ーー“多彩な人”という印象があります。まず、ご自身の仕事観について聞かせてください。

自分の基本にあるのは映画を作ることです。映画が“実家”だとするなら、小説を書いたり絵本を作ったりするのは“ひとり旅”。旅をして、成長して実家に帰ってくる。こんな感覚が近いと思います。ただし、映画を作っている時も小説を書いている時も、使っている脳は同じ。日頃感じている個人的な違和感や欲求、絶望みたいなものに対して、「ひょっとしたら100万、200万の人が同じように感じているのでは?」と、感じるところから始める。言葉にするなら、集合的無意識。多くの人が感じているけどまだ言葉にされていないこと、表現されていないことを形にするのが、自分の仕事だと思ってます。

ーー多くのプロフェッショナルがひとつのゴールを目指す映画づくりは、チームワークがあってこそ。映画プロデューサーとして心がけているチームづくりについて聞かせてください。

映画づくりって毎回、監督も変わるし原作も変わる。俳優も音楽も変わります。ゆえに、毎回新しいフェスを立ち上げている感覚があって。このスタイルは自分にすごく合っていると思います。とくに僕の場合、同じ人とずっと一緒に映画を作っていると息苦しくなる。その時の祭りにいちばん適した人とやりたいので、俳優もあまり固定化しません。例えば『君の名は。』の原点には、アニメーション×ロックミュージックをやりたいという想いがありました。加えて、新海誠さんの世界観と野田洋次郎さんの歌詞には、じつは通底するメッセージがあるという自分の中の予感もあった。

この着想の時点で感覚的な勝算はあったものの、現場は生もの。実際に動きはじめると、予期しない出来事が続きました。ストーリーやキャラクターデザインの観点、アニメーターや音楽の観点など、それはもうさまざまに。つまり、映画づくりの醍醐味はここにある。いずれにせよ、悩んだら危ないほうを選びます。そのほうが伸び代があるから。

チームづくりの話に戻すと、「この人と組んだらこういう風になる」とすべてがイメージできる人とは、なるべくやらないようにしています。ダメ出しをしてくれる人のほうがいい。お互い、ギリギリのせめぎ合いをしたほうが爆発力が生まれるんです。映画プロデューサーとしてひとつ得意なことがあるとすれば、優秀な人を見つけて、一番その才能が伸びるような場を提供することでしょうか。

ーークリエイティブへの覚悟をもった“優秀な人”。彼ら彼女たちとはどうやって繋がりますか?

僕の人生のテーマは優柔不断。待って待って、考えて考えて、ギリギリまで待った時に何かあるんじゃないかと思うタイプなんです。人との出会いに対しても同じ。仕事など、具体的な目的がないのに会うことに意味がないと思っているので、「この人とこういう仕事をしたい」と覚悟が決まるまでは、会いません。初めて会うのは1回しかない。その最初の会い方がすごく大事だと思っていて。映画にとって“オープニングの10分”がとても重要なのと同じで、人と出会うシーンも熱量のこもった状態からスタートしたいんです。

 

後編に続きます。

PROFILE

映画プロデューサー、小説家 川村元気

1979年生まれ、神奈川県横浜市出身。上智大学文学部新聞学科卒業後、映画プロデューサーとして『電車男』『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』『バクマン。』『君の名は。』『怒り』などの映画を企画・プロデュース。2011年、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。2012年からは小説家としても活動。『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)、『億男』(マガジンハウス)、『四月になれば彼女は』(文藝春秋)などを上梓。その他の著書として『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』など。8月18日に映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が公開予定。

川村元気著『四月になれば彼女は』文藝春秋 | http://hon.bunshun.jp/sp/4gatsu
©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会 | http://uchiagehanabi.jp/

写真・森嶋夕貴(D-CORD) 編集/文・紺谷宏之

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