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デジタルとフィジカルを横断。グラフィックデザイナー3人のアパレルブランド「ALOYE」の挑戦

ALOYE(中沢理洋、佐藤寛、西崇徳)

2011年にスタートした東京発のカットソーブランド「ALOYE(アロイ)」。日本人の体型に合わせたこだわりのカッティング、肌触り抜群の上質なコットン、そして大胆なカラーブロックのデザインは、当ブランドならでは。しかも最近は、さまざまなブランドとコラボを繰り広げるなど、その存在感は増すばかり。海を越え、ロンドンやパリなどでも高い人気を誇っている。そんな「ALOYE」のコアとも言えるデザインを手がけているのが、中沢理洋さん、佐藤寛さん、西崇徳さんの3人。実は彼ら、専門はグラフィックやデジタルのデザインで、これまでに服飾を学んだ経験はゼロだという。では、どうしてアパレルブランドを展開するに至ったのだろうか。服づくりに駆り立たせるものとは? デジタルとフィジカルを巧みに使い分けるアプローチの手法について聞いた。なお、本記事はWebメディア「DiFa(ディーファ)」とのコラボ記事。そちらもぜひチェックしてほしい。

グラフィックデザイナーがファッションに挑む理由

ーー3人は幼馴染ということですが、どういった経緯でブランドを立ち上げたのでしょうか?

中沢さん:もともとは僕が2人に声をかけたところから始まっているんです。佐藤も西もプリントTシャツとかをつくっていたし、同郷で昔から仲も良かったから。

佐藤さん:確か、僕と西が加わったのは、ALOYEを立ち上げる前に、中沢がひとりでプリントTシャツのレーベルをやっていたときだよね。

西さん:それから「もっと本格的に洋服づくりに挑戦してみたい」と思うようになって。それで、名前を「ALOYE」に改名して本格的に活動するようになったんです。

ーー現在、中沢さんは専業で、佐藤さんと西さんはグラフィックやWebのデザイナーとして活動する傍らALOYEに携わっているそうですが、それぞれに役割分担はあるのでしょうか?

中沢さん:もともとのALOYEのコンセプトを考えたのが佐藤なんで、トータル的なクリエイティブディレクションは彼。デザインは3人で話あって決めるんですけれど、基本的には西が具体的なデザインを発案して、それ以外の実務的な作業は基本的に僕。仕様書をつくったり、営業をかけたり、会計したり。2人は他でも仕事をしているので、ALOYEを専業としている僕が細かい部分を担っている感じです。

 

ーー並行して別の仕事をしていると、時間の取り方が大変そうです。

西さん:そこは中沢がきちんとスケジュール管理をしてくれているので、うまくバランスが取れているかもしれません。

佐藤さん:あと、ALOYEは基本的に春夏と秋冬の2シーズンでデザインを展開するから、デザインに集中する時期がある程度決まっています。だから、そのタイミングを見ながら他の仕事とバランスを取っているんです。

西さん:それにデジタルの仕事しかしていないと、息が詰まることも多くて。基本的にモニターに張り付く時間が多いじゃないですか(笑)。だけど、ALOYEは自分たちでやらないといけないことが多い分、いろんな景色を見ることができるんですよ。服をデザインするだけじゃなく、サンプルの仕上がりを確認したりとか、ルックブックを制作するために撮影に立ち会ったりとか。

 

プロダクトデザインをヒントに生まれたミニマルな世界観

ーーALOYEの洋服は非常にミニマルなルックスが特徴ですが、どのようなアプローチでデザインしているのですか?

佐藤さん:着想の切っ掛けのひとつは北欧のプロダクトデザイン。例えば北欧の食器って、シンプルなフォルムをベースに、カラーリングという最低限の装飾だけで、選択する楽しさを与えてくれるじゃないですか。そんなミニマリズムと楽しさの同居に魅力を感じていました。それをTシャツに落とし込むとどうなるのかなって。

ーー確かに、プロダクトデザインの発想法はTシャツと相性が良さそうです。

西さん:そうですね。カットソーってキャンバス的な感じが強いから、発想も湧きやすいかもしれません。

 

ーー3人はどのような行程でデザインを決めていくのでしょうか?

西さん:基本的なシーズンコンセプトを僕が決めて、それから3人でアイデアを出し合うことが多いです。

佐藤さん:それで出てきたアイデアを3人で揉んで、最終的にバランスを考えて「このくらいがちょうどいいね」っていうところでまとめます。

 

ーーその過程で意見が衝突するようなことはありませんか?

中沢さん:ないですね。そこはもう長い付き合いですし、ある程度お互いにわかっている部分があるというか。

デジタルとフィジカルの相互作用

ーーグラフィックやWebはデジタル領域の仕事ですが、そこで得た技術や知識がTシャツづくりというフィジカルな領域で役立っていることはありますか?

佐藤さん:ほかのファッションデザイナーさんがどういうやり方で服づくりをされているのかわかりませんが、僕らはデザインの手法が特殊かもしれません。

 

ーー特殊というのは、具体的に言うとどういうことでしょう?

中沢さん:アイテムが平面的でシンプルというのもあるんですけれど、スケッチするということがなくて。デザインするときはフォトショップに生地のパターンを複数登録して、それを白いTシャツに合成するようにしているんですよ。もちろん切り返しの幅とかもこれで全部できます。仕様書もイラストレーターで作成しています。昔、図面を引く仕事をしていたことがあって、そのときの経験が活きているのかもしれないですね。

佐藤さん:あとは洋服づくりだけでなく、その周辺のことを自分たちでできるのが特徴です。Webサイトはもちろん、印刷物のデザインや写真のディレクションもする。そういう意味ではデジタルやグラフィックのデザイン経験が活かせていますね。

西さん:普通のファッションデザイナーだったら外注することも、自前でできるのはデジタルのノウハウがあるからかもね。だから、ブランド設立時からスムーズに活動できていたのかも。

ニューバランスのブランドを象徴する“グレー”からインスピレーションを受けてTシャツを制作。各シューズのカラーリングにマッチするようなデザインが施されている。

ーー逆に、服というフィジカルなものづくりが、デジタル領域の仕事に活かされることもあったりするんですか?

佐藤さん:服づくりを通じて日頃から流行には敏感になっているかもしれませんね。あと、ALOYEに携わっている経験に期待されて、仕事を依頼されるケースもあります。

西さん:だから、アパレルに携わることで培われる経験が、他の分野でも役立つことが多くて。

佐藤さん:うん。仕事の幅は広がった気がする。

 

3人だからこそ生まれるシナジー

ーーこれまでの経験を活かして挑戦したいことはありますか?

中沢さん:なんだろう…。僕は新しいことをやりたい気持ちが強いかも。いっそのこと服から離れても面白いんじゃないかなって思いますね。極端な話、飲食店をやっても楽しいだろうし(笑)。

佐藤さん:僕はカットソー以外にもつくるものを広げていきたいですね。もっとアパレルブランドとして構築していく方向にも興味があって、それなら全身を包括的にディレクションしていくことは必須かなと。

国民的人気キャラクタードラえもんをフィーチャーした秋冬アイテムのカプセルコレクション.「タイムトラベル」がコンセプトの左半身のみヴィンテージ加工したロゴプリントスウェットシャツなど、5アイテムをラインナップした。

西さん:僕はミュージアムとか。なんとなく僕らと相性が良さそうじゃない? 日本には魅力的な施設がいっぱいあるから、そういうところのショップにオリジナルのアイテムを置けたら面白いなって。

中沢さん:それ良いかも。ALOYEはファッションブランドというだけでなく、プロダクトブランドとしても打ち出せるから。いずれにせよ、まだまだ3人でやれることがたくさんありそうだね。

PROFILE

ALOYE

中沢理洋さん、佐藤寛さん、西崇徳さんの3 人のグラフィックデザイナーが東京で設立したファッションブランド。2011年、9色のTシャツをコレクションとしてオンラインで販売することからスタートした。ユニセックス展開の国産カットソーがメインアイテム。「ALOYE」はワロン語でひばりの意味。

関連記事:グラフィックデザイナー3名による実験的なアパレルブランド「ALOYE」
(日本初のデジタル×ファッションメディア「DiFa」内)

写真・ALOYE提供 文・伊藤千尋(GOODIES GOOD,GOOD COMPANY.) 編集・村上広大

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