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どんなときも陽の当たる道の真ん中を堂々と歩みたい。柴田陽子事務所が掲げる仕事の美学

柴田陽子事務所

「仕事に美学はあるか」そう尋ねられて、どれだけの人がきちんと答えられるだろうか。特に今の時代は、簡単に答えを見つけ出そうという風潮が強い。インターネットに接続して検索窓にキーワードを入れれば、ほんの数秒で回答が得られてしまうから。やもすれば、プロセスはないがしろにされてしまう。そんな中において、“シバジム” の愛称で知られるブランディングカンパニー柴田陽子事務所は、とにかくさまざまな美学であふれている。その惚れ惚れしてしまうほどの存在感はどこから生まれるのだろうか。代表の柴田陽子さん(写真・中央)をはじめ、ともに働くメンバーの方々に尋ねた。

「普遍的か」「強い個性はあるか」「市場競争力はあるか」「社内の人が共感できるか」を常に考える

外食企業での新規業態開発や、化粧品会社での商品開発などに携わっていた柴田陽子さんが、独立して事務所を立ち上げたのは2004年のこと。当時、有限会社を設立するのに最低限必要な資本金300万円を自身の貯金から捻出してのスタートだった。

そして、すぐに事務所のコンセプトを固めた。「Go to the Center、道の真ん中を歩こう」これが前に進んでいくためのビジョンになった。どんなときも陽の当たる道の真ん中を、笑顔でたくましく歩き続ける。そんな会社にしたいと10年、20年先を見据えて考えたという。

 

柴田さん:一人ひとりのキャラクターを理解し合い、思いやりにあふれた強いチーム。クリエイティブ豊か。小さな会社だけど、夢のある大きな仕事を手がける。プライベートも楽しく、それぞれが豊かな日々を送っている。そんな10年以上も前に描いた理想が、今のシバジムのスタイルなんです。

それから14年の歳月が流れ、現在は20名程度の社員が在籍する。コンサルティングディレクター、アシスタントディレクター、デザイナーからなる最小構成のチームが4チームあり、それぞれが6~7案件を担当。常時30案件ほどが動いている。そのすべてに社長の柴田さんは目を通す。だから、どんな仕事にもシバジムらしさがあふれている。

 

柴田さん:仕事は自己成長の場であると私自身は捉えています。たくさんの可能性と選択肢がある中で、この小さな会社に入ってくれたメンバーには、仮に私が倒れたとしても路頭に迷わないだけの力を身につけてもらいたいと思っています。

 

仕事は王道を貫く。奇をてらわず、強い個性があり、普遍的で、クライアントの経営者だけでなく現場チームからも共感される。これがシバジムの考えるブランディングだ。それは携わってきたプロジェクトを見てみるとよくわかる。渋谷ヒカリエでは、レストランフロアを2層とし、大人が満足できる食の場に。グランツリー武蔵小杉では「愛」をテーマに施設を総合プロデュース。2015年に手がけたミラノ万博では、日本館レストランをプロデュースし、海外の食通たちをうならせた。

これまでシバジムが携わってきたプロジェクトの一例。商品開発から空間プロデュースに至るまで多彩な案件に携わっている。

こうした評判を知って、多くのクライアントがシバジムへ相談に来る。だから、営業を担当するメンバーはいない。コンサルティングディレクターは、予算管理から企画立案、プレゼン、ディレクションまで担当し、ときにはヘルメットをかぶって現場にまで足を運ぶ。一方のデザイナーは、ブランドコンセプトを理解し、ビジュアルを提案する。コンセプトからクリエイティブまで一気通貫でブランディングを行う少数精鋭のチームだからこそ、それぞれの持ち味を最大限に生かし、クライアントの期待に応えているのだ。

 

「ブランドコンセプトブック」があるからブレない。だから、シバジムは強い

では、さまざまなプロジェクトを成功に導くためにどのような方法論をとっているのだろうか。その答えとも言えるのが、プロジェクトごとに全力で取り組んでいる「ブランドコンセプトブック」の制作。これから生み出されるサービスや施設は、誰にどう思ってもらうための存在なのか、どのような世界観を持つのか。ブランドのあるべき姿を50ページほどの本にまとめるのだ。

これは決して世の中には出ない提案資料のひとつだが、すべてがオーダーメイド。構成も、書いている内容も、伝え方も異なる。その制作は、クライアントの経営者やプロジェクトチームとの対話、マーケット調査などから始まる。そして、柴田さんがコンセプトの根幹となるアイデアを考え、それをより具体化するためにコンサルティングディレクターが一冊に編集していく。しかも、コンセプトと世界観を伝えるために、ロゴや空間、パッケージに至るまで、デザイナーと詳細に詰めていくというのだ。だが、この本の制作にどうしてそこまで労力を費やすのだろうか。その理由をコンサルティングディレクターの中原真理さんと松山千恵さんは次のように話す。

 

中原さん:私たちの仕事は、まだこの世の中にないものを想像して生み出すことなんですが、そこで重要になるのがコンセプトと世界観の定義。例えば「表参道にホテルを建てたい」という話があったとして、問題になるのはそれぞれに抱くイメージが異なること、またプロジェクト進行時に方針がぶれていくことだと思うんです。どんな人にどのような過ごし方をしてもらう、どんな魅力を持ったホテルなのか。その微妙なニュアンスを伝えるためには、言葉やデザインなどでイメージを具現化していかなければいけません。それも細部まで詳細に。

松山さん:そのために必要なのがブランドコンセプトブックなんです。これが源泉になり、その末端としてロゴや店舗のデザイン、メニューや接客スタイルなどが決まっていくので、私たちはとにかく考えます。依頼してくれたクライアントはもちろん、その先にいる人たちのことまで意識して。

もちろん、デザイナーの役割はブランドコンセプトブックの制作だけにとどまらない。イメージが固まったら、実際にロゴやパッケージを制作することも。つまり、世の中にないものをゼロから生み出す仕事にオールインワンで携われるわけだ。しかも包括している領域もグラフィック、空間、プロダクトと幅広い。このシバジムでの仕事にどのような気持ちで取り組んでいるのだろうか。デザイナーの関亜紗子さん、大石愛さん、嶋澤真紘さんに尋ねた。

 

関さん:柴田からは、私たちの想定を超えるユニークなアイデアが出てきます。それをそのままの鮮度で、しかも高い感度を持って具現化していくように意識しています。

大石さん:それに矢継ぎ早に状況が変化していくので、一瞬一瞬をしっかりキャッチしていくスピード感と、課題に対する答えをピンポイントで見つけ出す直感力も必要です。特にコンサルティングディレクターは頭脳派が多いので、対等にやりとりするためには最善の手段を自分から提案していくことが求められます。非常に刺激的な毎日ですね。

嶋澤さん:僕は、コンセプトから提案し、それが実際に形になっていく過程に携われるのが面白いなって。それが完成した姿を見ると高揚しますね。もちろん余韻に浸ってる暇もなく、次から次に新しいプロジェクトに携わることになるんですけど(笑)。

 

どんなハプニングが起きても、前向きに乗り越えて、後から楽しかったとみんなで笑いたい

どんなときでも明るく振る舞う。 “人こそすべて” の考え方のもと、出会いを大切にする。そして、とにかく結果にこだわる。そんな柴田さんの生き様が、シバジムでの仕事の美学になっている。もちろん、この考え方に共感してくれる人と一緒に働きたいという想いが、柴田さんはもちろん、メンバーにもあるだろう。だが、あえてシバジムの一員になるために必要な素養があるとしたら。それを最後に聞いてみた。

 

松山さん:コンサルティングディレクター、デザイナー問わず、柔軟に考えられる、フレキシブルに対応できる人ですかね。私たちの仕事って決まったプロセスがあるわけでもないし、携わる業界も多岐にわたるから。もし途中で状況が変わっても、「こうしたらいいんじゃない!?」など柔軟に対応できる人じゃないと、クライアントをうならせるアイデアはなかなか出てこないと思うんです。

中原さん:あとはトラブルも後から楽しく話せるような精神的にたくましい人とか。やっぱり、大きなお金が動くプロジェクトが多いだけに、ひと筋縄ではいかないこともたくさんあるんです。だから、なんだか大変なんだけど、その状況を笑顔で乗り越えられる人の方が向いているかもしれませんね。

 



<Recruit Information>

柴田洋子事務所では下記の職種を募集しています。
・グラフィックデザイナー
・ブランディングコンサルタント

募集内容については下記よりご確認ください。
>>http://www.shibajimu.biz/recruit/

PROFILE

柴田陽子事務所

コンサルティング事業部を主軸に、アパレル事業部(レディスファッション「BORDERS at BALCONY」)、飲食事業部(カフェ「WELCOME CAFE」)の3つの事業を行っている。主な実績にセブン&アイ・ホールディングス「グランツリー武蔵小杉」総合プロデューサーのほか、東急電鉄「LOG ROAD代官山」、「渋谷ヒカリエ レストランフロア」、2015年ミラノ国際博覧会における日本館レストランのプロデュースなどがある。

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