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面白おかしく、くだらなく。でも徹底的に真面目に。

マルチクリエイター・Pantovisco

Instagramのフォロワー数が32万人超。2014年から活動をスタートさせ、これまで企業からのオファーは400社以上。雑誌・WEBの連載が現在、12本。こんな数字からも分かるとおり、マルチクリエイターのPantoviscoはいま、多忙の日々を過ごす。すでに知っている人にとってはおなじみの人だけれど、Pantoviscoという名をどう読めばいいか分からない人も少なくないはず。彼の名はパントビスコ。いったい彼は何者なのか? Instagram発の気鋭クリエイターの実態に迫った。

ーー現在、Instagramのフォロワー数が32万人超。いったいPantoviscoさんって何者ですか?

職業欄はマルチクリエイター。普段は会社勤めをしつつ、日常での気づきを表現手法を問わず、“面白おかしくくだらなく”をモットーに毎日、Instagramにイラスト作品を投稿している感じです。絵を描くのは昔から好きだったけれど、そんなに得意ではないです(笑)。ただ、表現できる手段、そして皆さんに認めていただいた手段がたまたまイラストというだけで、実は映像でも文章でもなんでもいいんです。だからイラストレーターとは名乗らないようにしています。とはいえ、ありがたいことに多くの方に面白がってもらえ、ここ数年は企業コラボやアニメ原作、広告ディレクションなど、活動の幅が広がっていますね。

Instagramにイラストをアップし始めたのが2014年の夏頃。当時は1日6枚、いまはだいたい1日に3枚投稿しています。今度、池袋パルコミュージアムで個展(註・詳細は本ページ下段に詳しい)をさせていただくんですが、数えてみたらこれまで6000点以上、イラスト作品を作ってきました。Instagramは「いいね」数がダイレクトに分かるので、毎回オーディションのような気持ちです。そもそもなぜ、Instagramにしたのか。答えは簡単、Twitterには競合が多すぎ、後発だったので多くの人の目に止まらないだろうなぁと思ったからです。あとは当時のInstagramは写真をアップする人が9割以上を占め、イラストや動画を投稿する人がほとんどいなかったこと。フォロワーさんが爆発的に増えた一因は“新しい場”で“新しいこと”をしたからだと、僕個人的には思っています。

ーー今回、インタビューさせていただくにあたり、聞きたかったことのひとつがPantoviscoさんのセルフブランディングの軽やかさです。BAUSにはイラストレーターさんの登録も多いんですが、どんな風に「人生の作品化」をしているのか、お聞かせください。

“人生の作品化”は大げさですね(笑)。「よし、自分をこうプロデュースしよう」っていうのは、最初は特にありませんでした。いまにして思うと、どんどん気づけば「そうだったんだ」っていう積み重ねですね。例えば自分なりに研究した結果、Instagramユーザーの7割ぐらいは女性で、そうであれば「女性に共感してもらえる“あるあるネタ”を意識的に増やそう」みたいな感じです。そんな日々の試行錯誤の中、変わらないことといえば作風ですね。OLあるあるネタだったりキャラクターシリーズだったり言葉遊びをコンセプトにしたひとコマ漫画だったり……。描くジャンルの幅はいまのほうが断然に広がったけれど、日常のクスっと笑える瞬間や半径10mで起こったこと、街を歩いて感じた気づきなどをすくい上げ、イラストに投影するっていう作品づくりはずっと同じです。

ひとつ自分らしいと思うのは、こういう取材の時に「興味関心の幅が広そうですね」って言われることがあるんですが、実はそれは人並みです。皆さんと一緒。人のことばかり気にしてしまうタイプなんです。例えば、街で話してる会話とか電車の中とかInstagramのストーリーに女の子がアップする動画とか、そういうのを見聞きするにつけ、見ず知らずのその人がいまどんなことを考えているのか、考えてしまうんです。本来自分的にはそんなに興味がないはずなんだけど、これを描いたら共感してくれたり興味を持ってくれるだろうなっていう気持ちを優先できちゃう。なぜなら、その気づきをイラスト化してキャラクターに代弁してもらい、多くの人に届けたいから。その点ではクリエイター気質かもしれませんね。

ーーInstagramのイラスト領域のパイオニア的存在。BAUS編集部ではPantoviscoさんにこんなイメージを持っています。Instagramを“表現の場”にする面白さ・ムズかしさはどんなところにありますか?

新しい表現にいろいろチャレンジできる。これが面白さだと思いますね。インタラクティブ性に加え、遊び要素の高いアプリケーションなので、ひと工夫するだけで“インスタトリック”(註・Pantoviscoさんが作ったタグ)を作れるんです。言葉で表現するのはなかなかムズかしいんですが、例えば画面をダブルタップするとハートが画面上に出る機能を使い、イラスト内に「良かったら僕をドキドキさせてもらえませんか?」とメッセージするとしましょう。それを見たユーザーさんが面白がってタップすると、それだけで「いいね」が増えていくような仕かけです。動くイラストしかり。確信犯的に皆さんに楽しんでもらえる、そんな仕かけは常に考えていますね。

ムズかしいところは、ほんの1グラムでもネガティブエッセンスが入ると、「いいね」数が爆発的に下がるところでしょうか。だから、人を傷つける可能性があるような表現は絶対にしないように心がけています。例えば、死を嘲笑しているわけではないのに死を連想させるもの、けがをすること、誰かを悪く言っているような表現をするとしましょう。すると、パッと見た瞬間にその人の脳に入ってしまい、スルーされてしまうんです。物事を何か限定してしまうと、そのメッセージが響かない人にとっては疎外感を感じてしまう可能性があるんです。「楽しい場にしたい」っていうことを信条にしているので、僕の描くイラストは誰も仲間はずれにならないような表現を心がけています。言葉にするとこんな感じなんですが、けっこうムズかしい。誰にも嫌われたくないのかもしません(笑)

 

ーー聞けば、これまで400社以上の企業からオファーを受け、雑誌・WEBの連載も現在12本。この数字だけみても、日々多忙であることが見て取れます。仕事をする上で譲れないマイルールはありますか?

BAUSに登録しているクリエイターやアーティストの皆さんも同じだと思いますが、熱量のある人と仕事をしたいと思っています。ファンとまではいかずとも、僕の作品をちゃんと日常シーンで見てくださっている方だと、打ち合わせ中に熱を帯びますね。お会いしてすぐに、「あのシリーズが好きです」「この前のあのひとコマ、良かったです」といった風に言われると、どんな案件であってもご一緒したいなという気持ちになりますね。みんな、そうか(笑)。コンテンツに愛のある人だと、経験上、絶対にプロジェクトがうまく進みますし、僕自身もいいものを作りたいっていう気持ちが増していきます。そういう意味では、人と仕事をしている感じが近いかもしれないですね。

現在、受注仕事が9割ぐらいなんですが、依頼主の愛の深さを感じとった上で大切にしているのは、何を目的にされて僕に仕事を依頼してくれたのか、そこを見極めることが大切だと思っています。多くは話せませんが僕自身、会社員としてクリエイティブ業界にずっと携わってきましたから。シビアなところはシビアなのです。

 

ーー最後に、今後の夢ややってみたいことをお聞かせください。

宣伝っぽくなってしまい、恐縮です(笑)。先ほども少しお話ししましたが、池袋パルコミュージアムで『パントビスコの本当にくだらない個展』を6月8日から開催させていただきます。これに向け、いま絶賛、新作や未公開初出し作品の選定をしているので、少しでもPantoviscoに興味を持っていただけたなら、ぜひお越しいただければと思っています。宣伝ですね(笑)

あとは何だろう。これからも毎日、Instagramにイラスト作品を投稿し続けるので、見てみてください。“インスタトリック”のようないろいろな表現にチャレンジしていく所存です。最近は映像領域の案件も増えてきているので、この分野への知見も貯めていければと思っています。コツコツと地道に、ですね。

PROFILE

Pantovisco

マルチクリエイター。2014年から始めたInstagramへのイラスト投稿が話題となり、フォロワー数32万人を突破。以降、400社以上の企業からのオファーや、現在、雑誌・WEBでの連載を12本抱える。代表的な作品シリーズは『カオス絵日記』『乙女に捧げるレクイエム』『ヘチタケシリーズ』など。広告ディレクション、企業コラボやTV出演、アニメ原作や作詞など、業種や媒体を問わず活躍の場を広げている。

写真・下屋敷和文 編集/文・紺谷宏之

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