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クリエイターが「副業」や「パラレルワーク」に挑戦するために、どんな環境が必要?

Goodpatch × kiCk

働き方が多様化している。そんな中で「副業」や「パラレルワーク」といっても、働くことへの向き合い方は人によって異なり、そこにはグラデーションがある。一人ひとりが主体的に働き方をカスタマイズできる時代に、クリエイターの働き方にはどのような変化が起きているのか。

今回お話を伺ったのは、株式会社グッドパッチ(以下、Goodpatch)のUIデザイナー森本友理さん(写真・右)と、株式会社kiCk(以下、kiCk)のプランナー森垣卓也さん(同・左)。
森本さんはGoodpatchで働く傍ら、副業で映像デザインやWebデザイン、書籍の執筆などを行う。平日の日中はGoodpatchの業務に取り組み、就業後や休日に副業の仕事に取り組んでいる。一方、森垣さんはkiCkに正社員として在籍しながらも、複数の企業・プロジェクトに属する形で働くパラレルワーカーだ。kiCkの出社時に他の業務を行うこともあるという。
同じクリエイターといえど、異なるタイプの働き方を実践する二人の対談を通じて見えてくるのは、ますます多様化する働き方とその価値観だった。

仕事を受ける基準は楽しいかどうか、コミュニケーションが取りやすいか

ーー本日はよろしくお願いします。お二人はお知り合いなんですよね?

森垣さん:そうですね。最初に会ったのは…いつでしたっけ?

森本さん:私が以前BAPA(編注:BasculeとPARTYが共催するスクール)に参加した時に、森垣さんが事務局を担当していたんですよね。

森垣さん:もう4年近く前のことですよね。昨年末に飲んで以来なので、会うのは結構久々な気がしています。

森本さん:当時からkiCkで働きながら、平日の昼間も稼働していて驚きでした(笑)。それこそBAUS MAGAZINE編集長の横石さんが発起人のTokyo Work Design Weekにも関わっていますよね。

森垣さん:Tokyo Work Design Weekのときは、1週間ずっと会社にいないことを事前に伝えています。BAPAの事務局の時は、授業のある夜と定例の打ち合わせは出席して、それ以外はメールやメッセージで連絡を取り合うなどして、会社の業務と両立をしていました。僕のなかでは、kiCkの仕事が本業で他は副業という意識はなく、複数の企業で関わる全てのプロジェクトに対する意識はフラットなんです。全ての仕事がプロジェクトベースであり、その中で結果的に大きな比重を占めているのがkiCkのプロジェクトという感覚です。

森本さん:業務時間の切り分けはないんですか?

森垣さん:ないですね。週5日正社員としてkiCkで働いていますが、場所や時間を調整しながら社内外の仕事を両立しています。kiCkのデスクで社外プロジェクトの仕事をすることもありますね。森本さんはどのような働き方を?

森本さん:私も週5日会社に通う正社員で、GoodpatchでのUIデザイン業務が本業です。私の場合、会社の業務時間内はGoodpatchの業務に集中し、終業後や休日に自宅で副業をしています。

森垣さん:会社と副業のプロジェクトは完全に切り分けられているんですね。それぞれで取り組む仕事に違いはあるんですか?

森本さん:会社で担当しているのはアプリやWebサービスのサービスデザインです。クライアントと中長期的に関わり、サービスのUI改善や成長を支援しています。一方、個人の仕事ではスポットの案件が多いですね。クライアントが個人や自主制作のような小さな規模だと予算も限られていますし、小回りの効く働き方のほうが私自身もやりやすい。両方で得られる経験の質が異なるため、自分のなかでバランスを取っているような感覚です。森垣さんは業務時間の切り分けがないとはいえ、kiCkとそれ以外の会社で担当する業務は異なるんですか?

森垣さん:僕も明確に切り分けを意識していますね。kiCkの案件は、クライアントからの期待やオーダーに応えることが重要なため、そこで実験的なことは、どうしても取り組みづらいケースもあります。なので個人の案件では、その時の自分が挑戦してみたいことや興味のあることに取り組める案件を受けることが多いですね。実験的な仕事は個人で受ける方がやりやすいですし、その実験的な仕事がまたkiCkでの仕事に活きてきたりします。

ーーお二人の中に仕事を受ける・受けないの判断基準はあるのでしょうか?

森垣さん:基準は明確に決めていますね。目安の金額感はもちろん、その仕事が楽しそうかどうか、メンバーが「一緒に何かやりたい」「力になりたい」と思える人かどうか、その仕事が学びとして経験になるかどうか、自分の実績として言えるかどうか。この5つの軸を持ち、3つ以上クリアしていない仕事は基本的にはやらないと決めています。

森本さん:「その仕事を楽しめるかどうか」の基準は私も大切にしていますね。それに加えて、この人と一緒に働きたいかどうかの基準と、なるべく会社の領域とは異なる領域の仕事を受けることを大切にしています。

森垣さん:だから書籍の執筆なども行っているんですね。さまざまなジャンルの仕事に挑戦していると思うのですが、どんなふうに仕事の依頼を受けていますか?

森本さん:基本的には知り合いから相談を受けることが多いですね。全く知らない方から依頼される案件は、対面での打ち合わせなどのコミュニケーションコストがかかるため、避けるようにしています。本業があると、どうしても時間管理にシビアになってしまいますね。

森垣さん:僕も同じです。知り合いから依頼される案件のほうが、僕が何に関心があるのか、どんな仕事をしているのかを理解してくれていることが多く、コミュニケーションもスムーズになりやすいですよね。

 

副業で得たものを還元することで生まれる循環作用

ーーお二人はGoodpatch、kiCkに所属しているかと思います。会社とどのように信頼関係を築いていますか?

森垣さん:kiCkには「その人がkiCkのメンバーとしてやるべきことをちゃんとやっていれば、あとはそれぞれに委ねる」という考え方があります。プロジェクトを一緒に進めるメンバーからの信頼を損なうことがなければ、仕事のやり方や時間の使い方などは問われません。重要なのは、一緒に仕事をしているメンバーやクライアントから信頼を得られているかどうかです。

森本さん:やるべきことさえやっていれば、あとは個人の自立性や意思に委ねられていると。

森垣さん:そうですね。信頼の基準が具体的にあるわけではないのですが、「良い貸し借り」の関係ができていればうまくいくと思っています。お互いに「助けられてるな」と思いあえる関係性というか。。あとは、社外の仕事で得た知識やネットワークをkiCkの仕事に還元することは意識しています。さまざまなプロジェクトに関わっていると、広告やコミュニケーションの領域で仕事をしているだけでは、なかなか接点を持つ機会のない方とも出会うので、kiCkとしての知見が広がることにもつながります。

森本さん:勉強会などの形式で社内に知見を共有する仕組みがあるんですか?

森垣さん:社外の仕事を通して知ったことは、kiCkのメンバーとの日常的な会話の中で「こんな面白い話があったよ」という形で共有することはありますね。他にも、個人の仕事でつながった方とkiCkの仕事でご一緒するケースもあったりします。

森本さん:私も副業で得た知見やスキルを会社に還元することは意識しています。前提として、Goodpatchは創業当初から副業OKの社風があり、新しい体験をユーザーに届けるためには会社に長時間拘束するのではなく、自主的にインプット・アウトプットができるような環境づくりが重要だという文化です。デザイン会社としては労働集約型ではないため、退勤時間が早い方だと感じます。私以外にも多くの人が成長のために就業後や休日に、副業や個人プロジェクトを行っています。

森垣さん:会社に還元するために意識していることはあるんですか?

森本さん:副業で得た知識や考え方、スキルは自分の中に蓄積されているはず。個人としてさまざまな経験を積み、成長することで、会社の仕事でより高い付加価値を出せるように意識していますね。

 

「副業」はあくまで手段。向いている人・向いていない人がいる?

ーーお二人は本業と副業の両立や、パラレルワークの実践に成功しているかと思います。すべてのクリエイターに向いている働き方ではないと思いますが、どのような人が向いていると思いますか。

森本さん:「いろいろなやり方で仕事をしたい人」には向いていると思いますね。私は副業に取り組むことで、それが自浄作用になっている感覚があるんです。

森垣さん:自浄作用…?

森本さん:ひとつの組織や業界の中だけで働いていると、どうしても仕事の進め方や考え方などが画一的になりがちです。副業でさまざまな業種・業態の人と仕事を進めることで、自分のなかに、複数の正解が生まれるのではないかと思っています。それは浄化作用なのかなと。その一方で、一つのやり方を信じて突き進めることも大切だと考えています。そういう人には副業は必要ないんじゃないかな、と。森垣さんはどのように考えていますか?

森垣さん:あえて言うならば「誰かに決めて欲しい人」には、パラレルワークや副業は向いていないと思います。人に決めてもらうほうが心地よい人はもちろんいると思いますし、それは全然悪いことではないです。
今はパラレルワークや副業を推進しようという風潮がありますが、やりたければやればいいし、やらないほうが幸せな人もいます。

森本さん:本業があれば、残りの限られた時間を何に使うべきかはシビアになる必要がありますしね。

森垣さん:そうですね。パラレルワークという概念が出てきた頃、僕の知り合いでも何人かパラレルワークを始める人がいました。でも、意識的にそういった働き方を始めたわけではなく、気づいたらパラレルワーカーになっていた方が多かったように思います。

森本さん:パラレルワークは目的ではなく、結果だと。

森垣さん:そうです。僕は持続的に楽しくいられれば良いと思うんですよね。その手段として仕事があります。どのように働くか、誰と働くかを考えるのも、持続的に楽しめる環境を作るためです。自分が成長し、引き出しを増やしていけば、より楽しくいられるかもしれない。だから、さまざまなプロジェクトに関りたいと考えています。

森本さん:私も「好き」がモチベーションの原動力ですね。小さい頃から絵を描くのが好きで、その延長線上に、いまの働き方やキャリアがあります。働くことで人や社会と関わり、私一人でコツコツと頭の中にあるものを作っているだけでは生み出せないものにたどり着きたい。そのために仕事を頑張りたいのだろうなと。私はそういうことを経験するのが楽しいのだと思います。

PROFILE

Goodpatch

GoodpatchはUI/UXデザインに特化したデザイン会社です。「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンのもと、デザインの力を証明するために日々デザインを追求しています。

PROFILE

kiCk inc.

Creative Companyとして、プロデューサー・クリエイターによるフラットなチーム体制で、コミュニケーション戦略からクリエイティブの企画・制作までをシームレスかつワンストップで提供。『GET YOUR KICKS!(=ワクワクしていこう)』の姿勢のもと、会社を生態系と考え、様々なバックグラウンドを持つ40名が参画中。

写真・田川優太郎 文・佐藤由佳 編集・岡田弘太郎

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