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「インタ〜ネットポップ道場」わいがちゃんよねや(KAI-YOU)

#2 Webメディアとして絶対やってはいけないこと

Webメディアは、テレビや新聞などのいわゆる旧来型メディアと違って参入障壁が低い。その論理の一つとして、Webやアプリといったインターネット上に置くサービス全般にありがちな「一人でつくれるから」というのがまずある。

しかし今回伝えたいのはそういう話ではない。この場合の参入障壁の低さとは、旧来型メディアよりWebメディアの方が圧倒的に採用されやすいということだ。

例えばテレビ局に入るには、基本的に大学卒業以上の学歴が必要だ。もしかしたら、相応の人間力や語学力、さらには知性や品性も求められるかもしれない。そして仮にアナウンサーを目指すとなれば、全世界に記録されても恥にならない容姿も必要になるだろう。

反面、Webメディアを事業の根幹にしている会社は、学歴も容姿も、もしかしたら一般通念もそんなに必要ない。

それは、旧来型メディアを運営する事業体と比較するまでもなく、歴史性がなく(ベンチャーで)、権威的でなく(若いやつが多い)、ビジネスとしての正解も確立しておらず、つまり参照したり目的にすべき能力値(スペック)がないからだ。

別に自分たちのやっていることを貶めたいわけではない。Webメディアには正しさが存在しない、という話だ。そして現状、その存在しない正しさこそがWebメディアという新興媒体が模索しているものの解答であり、課題でもあり、武器にもなっている。

正しさが存在していないということは、何でも手探りにやってみる価値があるということだ。スタンダードが決まっていないから、自分たちでつくる。こんなに自由なメディアは他にないだろう。

ただし、昨今のインターネットの普遍化によって影響力を得た一方で、責任も増している。ご存知の人が多いと思うが、歴史ある先行メディアがやらないことを遂行した結果、世の倫理感覚に抵触して潰されてしまったケースも多く存在する。杜撰な編集体制で問題となったMERYをはじめとするキュレーションサイトだったり、画像の無断転載を認めて大規模な削除発表を先日行ったNAVERまとめだったり、もしかしたら最近話題になった漫画村だったり。

それらは既存のメディアとは一線を画す手法によって、学歴も容姿も必要ないある種のアジール(治外法権)とも言える場所を、経済を回して雇用を生めるような場として、一瞬でも成立させていた。ビジネスを生み出し、社会の一部に入り込むことに成功したのだ。

だが忘れてはならないのは、Webメディアは何でもできるし、むしろそれが推奨されるチャレンジングな媒体だが、何でもやっていい場所ではない。

上述したように潰されてしまったメディアは、単にビジネスとして「失敗」してしまっただけで、Webメディアの禁忌を踏んだわけではない。新しい価値を社会に対して提供していく可能性は十分にあった。単純にリスク管理がおざなりで、つまり脇が甘かった。

僕自身は、新たなビジネスを成立させるうえで(法律や倫理的に限らず)グレーなところを突くのは通らざるを得ないものだと思っている。GoogleでもAppleでもなんでもいい、全部そうだ。

そのくらい自由なWebメディアだが、絶対にやってはいけないことがある。

それはメディアの一つであるという矜持を捨てること、公平さを失うことだ。上述してきたいくつかの理由やその成り立ちによって、多くのWebメディアはまったくしっかりしていない。新聞やテレビに比べて、レギュレーションなんてあっても結局は適当だったり、人と人との関係値によって記事が書かれたり書かれなかったりしている。もしかしたら、君が見ているWebメディアの編集メンバーや社長は遅刻ばっかりしているかもしれない。

長くメディアをやっていると、いろんな人が(無料で)インタビュー載せてとか取材してとか近寄ってくる。そういうとき、人は自分に価値があると思っている。世に発信する価値があると思っている。逆に、後ろめたいことをしてしまったり、隠したいことがある人たちは遠ざかっていく。

それについて苛ついたりしないし、人間として当然だと思う。

でも、一回関係を持ってしまった人についても我々はフラットでありたいと思っている。それは簡単に言えば、良いことをした人を報道する一方で、悪いことをした人も報道する。その2つは同一人物においても成り立つし、むしろどちらか片方をなかったことにはできない、ということだ。

最近記事を消してほしいという問い合わせがくる。おどしすかしで削除を強要してくる。記事を消すなんてワンクリックで済むんだけど、あったことをなかったことにはできない。公益性を目指すメディアだからこそ。まとめブログならできるかもしれないけれど。

しつこく繰り返すが、Webメディアはテレビや新聞に比べて歴史が浅く、まだまだしっかりしていない。中の人たちは努力して勝ち得た学歴だとか、優れた両親から受け継いだ容姿だとかも持っていないかもしれない。そういう人が少ないから、なめられやすい。広告費もマスメディアに比べたらすごく安い。でもだからこそ、メディアだという矜持だけは捨ててはいけない。それが今後、Webメディアが本当の意味でメディアになるための最低条件だと思っている。それを捨てたら、ただのちゃんとしてない奴らが、ちゃんとしてない情報を撒き散らすだけの、存在意義のよくわからないサイトだ。

それ以外は自由だから、好きにやれ。意欲ある人、KAI-YOUに応募しろ。これを読んだ削除強要マンは恨んでもいいけど、もう書類送ってくんな。

PROFILE

米村 智水

株式会社カイユウ 代表取締役社長 1986年生まれ。学生時より新見直・武田俊らと雑誌『界遊』を刊行。大学卒業後、出版社で書籍編集に従事した後、イラスト系CGM企業でWebサービスのディレクションを担当。2011年にKAI-YOU,LLC.として法人化。2013年3月15日にポップポータルメディア「KAI-YOU.net」をリリース。2014年に株式会社化。

文・米村智水 編集・村上広大

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