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McCANN MILLENNIALSの「世代で区切るのはもう古い」

#2 「浅い面」じゃない、「深くて鋭い点」がきてます。

こんにちは。
突然の登場で「お前だれだよ」感満載ですが、わたくし外資系広告会社モメンタム ジャパンで戦略プランナーをしています顧文瑜(コ フミユ)といいます。中国人の両親のもとに生まれ、しかしながら長いこと日本に暮らしており、むしろ中国語が苦手な中国人です。新卒で外資系の広告会社に入社し現在3年目。「マーケティングは総合格闘技である」という上司の言葉を毎日噛みしめ、「全部盛りかよ、しんど….」と思いつつ、サイクルの早いこの業界を楽しんでいます。

またグループ会社横断社内の有志団体「McCANN MILLENNIALS」で、ライタ―業とPR業務を兼務しています。「なんでもやっていいよ~」というボスのお言葉をありがたく受け取りながら、縦横無尽に好きなことにアンテナを張って取材をする日々。どこかの広告コピーにもありましたが「好きって、最強だ。」これ、本当に真実です。

 

「何もしてないようで何かしている」戦略プランナーって?

マーケティング界隈や、広告業界にいるとよく聞く職業「戦略プランナー」。まだわたしが入社直後、広告の「こ」の字もよく分かっていなかったころ、すぐちかくの席で仕事をしていた戦略プランナーを「何をしている人?」と思っていました。「名前かっこよ〜、でも何かしてるようで何もしてなさそうなタイトルに思えるわ〜」失礼、でもこれが当時のわたしの本音でした。

そんな「戦略プランナー」という仕事を、究極に完結にいうなれば〈情報整理屋〉だと思っています。世の中はすべてごちゃまぜのおもちゃ箱のような存在。そのおもちゃ箱のなかを整理し、時に似ているものは同じ隅に寄せ、仕切りを設けることで、このおもちゃ箱の中にはなにが足りないのか、新しいおもちゃを、どんなおもちゃとしてこの箱の中に分類するべきなのか、その定義を与える仕事です。

『欲望する言葉』(集英社新書)という本があります。言葉がもつ「フレーミング効果」(同じことをまったく違う言い方にすることで相手の印象をかえてしまうこと)によって新たな市場が生まれることを、学問的な視点と実際の事例を交えてわかりやすく解説している本なのですが、まさにここでいう「言葉を与えて、ものごとを見つめるフレームを用意する」ことが広告の仕事であり、そのフレームの大きさや精度を検証するのが「戦略プランナー」の仕事です。それぞれの商品・サービスに、どんなフレームを与えるのが最適なのか、市場データや世の中のトレンド、人の気持ちといった要素を加味しながら考え、定義しています。

はっきり言って、新しい何かを生み出す仕事ではありません。ただ、「ものごとは、見方を変えるだけでこんなに面白い」ということを投げかける仕事です。まさに「何もしてないようで何かしてる仕事」ですよね。トリッキーかよ。でもそんなトリッキーさ加減を、なかなか気に入っています。今回は、そんな広告会社の「戦略プランナー」という目線から「世代論」について考えてみます。

 

「世代論、好きすぎじゃね?」それにはワケがある。

93年生まれのわたし、まさに「ゆとり世代」で「さとり世代」のど真ん中なんですが、ゆとり世代、さとり世代、そして若者だから、と言われ過ぎて正直めんどくさいです。ただ、広告やメディアの仕事をする上では、世代論というカテゴライズは非常に便利なんです。なぜなら、それはまさしく「フレーミング効果」。世代論があることで、ぼんやりとした若者像やおっさん像といったものに輪郭を与え、消費動向や近年の市場の動きを論じることができるからです。

その上で、世代をあらわす言葉は、しっくりくるものでなければなりません。たとえば若者のお金離れ・車離れ・恋愛離れ、などの話をしようとしたときに、「それらはすべてさとり世代の特徴です」と言えれば、メディアやマーケティング担当者はめちゃくちゃ便利だというわけです。ここでポイントなのは、やはり「さとり世代」というなんとも絶妙なネーミングです。

コミュニケーション戦略においては、「“誰”にどんな“切り口”で」という思考がマスト。そのため、世の中から“誰”がいなくならない以上世代論はなくなりませんし、“切り口”を決める上で世代ごとのメディア接触態度・消費動向・価値観などが重要になるのです。

 

SNSがカリスマ不在をもたらした。

ただ、もちろん、世代論は万能ではありません。お気付きのように世代論を持ち出したとたん、個人の存在は急に無視されていきます。広告の基本的な考え方は、ターゲットにリーチすること。エンゲージメントだのなんだのありますが、わたしの知る限りでは、その広告にどのくらいいたく動かされたのか(心も、体もね。)という指標は、正確には存在しません。

また、当たり前ですが、全員が好きっていうものは究極存在しません。むしろ、みんながいいっていうものが、その人を構成する重要な要素にはなり得ないような気もしています。とくにその傾向が顕著なのが最近の「若者」かもしれません。

いまは、カリスマが存在しない時代です。例えば90年代のアムロちゃんのような「この人になろうとすれば絶対にはずさない」というみんなのお手本は存在しません。そういった世の中の大きな動きを生み出した要因が、新しい表現ツール。インターネットであり、SNSであり、YouTubeです。YouTuberやインスタグラマーといったインフルエンサーの存在や、Twitterで一般人のツイートがものすごいRT数をかかえてタイムラインに現れるのも現代特有の現象。どんな考えを持って、なにに惹かれる人なのかを語る場が多く存在する時代だからこそ、その人ならではの「物語」が重要になってきます。

 

面で捉えるのではなくて、点で考えよう。

ここまでお話してきたとおり、世代論とはバラバラの集合体に見えるものにフレームを与えることでひとつの現象として捉える、広告やマーケティングにおいて便利なツールです。一方で、SNSの登場は、「その人だけの物語が重要である」という、それとは矛盾する動きを生み出しました。いま、わたしたちは世代論の代わりになるものとして何を提示できるのでしょうか。

突然ですが、こちらのツイートをご覧ください。

紙コップでつくった、ドラえもんの漫画です。「すげえ‥‥」の一言に尽きます。ようやったよ‥‥。ドラえもんへの愛と、パッションが感じられますよね。この映像は、2016年のRT数No.1のツイート(RT数は、なんと27万!)。わたしは、いまの時代に必要なのは、まさにこういうことなんじゃないかと思っています。

つまり、プロ / アマチュアに関係なく、その人のパッションや愛の深さが起爆装置となって、大きな波を生む。コンテンツをつくる本人が「これならみんな好きになってくれそう」などと第三者の視点で考えるのではなく、「わたしはこれが大好きなんじゃー! 愛してるんじゃー!」というストレートな思いこそが起爆力になるんじゃないかと思うのです。

ニッチなトレンドや個人の、ものすごく偏執的な「好き」から生まれる大きな波。それは世代論といった「面」の考え方ではこぼれていく「点」の力です。その「点」の力にこそ、大きな可能性が秘められている時がきていると感じています。それはいままでの広告の考え方を大きくひっくり返すものになりつつあるではないでしょうか。

 

「世代で区切るのはもう古い」「じゃあその代わりに何を?」と言われるなら、「深くて鋭い『点』を見つけましょう」と答えます。その「点」こそ、世の中をひっくり返す、いや、世代論をひっくり返す、凄まじいパワーが眠っているはずだから。

PROFILE

McCANN MILLENNIALS

日本におけるマッキャン・ワールドグループ傘下の各社のミレニアル世代(1980-2000年前半生まれ)のメンバーで構成され発足した、オープンイノベーションプロジェクト。グローバルネットワークの活用や、大学・他企業等との連携を通して会社や国境の超えて柔軟に繋がり、アジア最大級のミレニアルズコミュニティを目指している。

PROFILE

顧 文瑜(Fumiyu Ko)

McCANN MILLENNIALS / Momentum japan
1993年生まれ チャイニーズの両親のもと、日本ですくすく育つ。
広告やマーケティングの、言葉にならないものを言葉にする傲慢さがとても好きです。
アートはもはや生活のインフラ。ものづくりが好き。近頃は一周回って手芸とビーズがアツいです。

トップ画像・岩崎菜都美 文・顧文瑜(コ フミユ) 編集・上野なつみ

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