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角田陽一郎の「2017年、的。」

#1 「井の中の蛙、井の外へ出る」

初めまして!バラエティプロデューサーの角田陽一郎と申します。
長年TBSテレビで『さんまのスーパーからくりTV』や『中居正広の金スマ』、『EXILE魂』、『オトナの!』等のバラエティ番組を作ってきましたが、僕が現在名乗っている肩書き“バラエティプロデューサー”のバラエティとは、バラエティ番組のプロデューサーという意味ではなく、まさに本来の意味でバラエティ=色々やる、という意味でのプロデューサーです。
このバラエティに色々やるために、僕は昨年末に22年9ヵ月在籍した愛すべきTBSテレビを退職したのでした。
連載第一回にあたり、その退職して思ったことを書こうと思います。

改めてテレビという世界、マスコミという世界、それを取り巻く広告業界、芸能界というのは“井戸”なんだと思うのです。
すごく閉鎖的で、中の論理で物事が決められて動いていく。
当然放送に従事しているし、マスメディアなわけですから、外からの情報とは常に交流しているのですが、それが井戸の中で、独自のルールで変換されてしまう。
そう、ということはその中の人は、井の中の蛙ですよね。
僕も含めて、蛙たちは、蛙の論理で、日々の番組制作に従事しています。

例えば、番組の会議をします。
その会議の冒頭でまず見られるのは各局のその日の視聴率が書いてある視聴率表です。それをプロデューサー、ディレクター、構成作家、AD で一緒に見ながら、喧々囂々議論します。
「今、この局の○○って番組人気あるなー」
「この××さん、よく出てるなー!」
「なんかグルメもの、数字高いですね」
等々。その分析はなかなか鋭いものが多く、確かに傾聴に値します。でもですね、そこから、
「では自分たちの番組で何やろう!」
という議論になると、その視聴率表の番組中から、人気の人、人気のトピックス、つまり視聴率取りそうなモノコトを探し始めるのです。
皆さんもテレビ見ていて思いませんか?

「どの放送局も同じような人が、同じようなコトやっている」

はい、そうなのです!
だって、そうなるようにテレビの中の人たちは作っているから。
これ、誤解のないように言っときますが、悪口ではありません。
なぜかというと、いち番組いち番組をちゃんと見ると、いちいちよく作られているのです。おもしろいものもいっぱいあります。テレビマンたち、昼夜おもしろい番組作るために死に物狂いで働いています。死に物狂いの蛙さんたちです。
でも、みんな、そのテレビという井戸が、閉鎖的で、その中のルールは特殊で、そして井戸の外は、中とは全然違う世界なんだと、知らないで、死に物狂いで働いているのです。
TBSの人気番組『ぴったんこカンカン』のキャラクター“ぴったんこカエル”は“カエルの王様”です。このキャラクターは、僕の尊敬するバラエティ番組の師匠が作り、そのカブリ物には師匠本人が入っていたりしたのですが、その時は何気なくカエルなんだなーとか思ってただけなのですが、外に出て思うのです。
あれは、テレビの中の人のメタファーだったんだって。

そして僕もそんな井戸の中の蛙でした。バリバリの井戸生まれの蛙です。
そんな僕は好奇心旺盛で、時々入ってくる外の情報を見聞きしながら、それを体感したかったのです。我慢できなかったのです。そして外に出る決心を遂にしました。
本当はもう少し若い時に決心したかったのですが、なんと46歳の決心です。
ちなみに、46歳は日本人皆さんの平均年齢です。
僕はちょうど平均年齢で、外に出た蛙です。
なので僕の今体験している2017年的経験は、46歳より年上の人にも、46歳より下の人にも、何かしら役立つお話になると思います。
そして井戸の外に出るという行為は、テレビに限った話ではありません。なぜなら多かれ少なかれ日本の各産業はそれぞれが“井戸”だからです。そして情報革命によるインターネットの登場で外からの新しい激流が迫ってきて、今までの井戸の中のルールが通用しなくなってきているからです。つまり全ての人が、井戸の中でキュウキュウしている蛙だとも言えるのです。ならばいずれどの井戸のどの蛙も外に出る必要があるのです。そんな2017年なのです。

今、外に出て半年、外海の水にジャブジャブのまれてます。アップアップしてますが、なんとか生きています。
そこで体感したおもしろいこと、辛いこと、感激したことなどを、全ての井戸を出る蛙さんたちへレポートしていこうと思います。
よろしくお願いいたします。

PROFILE

角田陽一郎

1970年生まれ、千葉県出身。バラエティプロデューサー。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。テレビプロデューサー、ディレクターとし『さんまのスーパーからくりTV』『中居正弘の金曜日のスマイルたちへ』など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、映画『げんげ』監督、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員ほか、多種多様なメディアビジネスをプロデュース。著書に『最速で身につく世界史』(アスコム)、「オトナの!格言」(河出書房新社)、「成功の神はネガティブな狩人に降臨する –バラエティ的企画術」(朝日新聞出版)ほか。現在、フリーとして多方面に活躍中。

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