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松江翔輝の「学生クリエイターが見ている『今と未来』」

福島颯人(武蔵野美術大学) × 三尾響(武蔵野美術大学)

僕は大阪芸術大学を卒業し、クリエイター支援を行う株式会社ガシューを設立した。現在は京都造形芸術大学大学院にも通っている、現役の芸大生でもある。そんな僕がお届けするのは、20代前後の学生クリエイターの対談企画だ。様々なテクノロジーが生まれ、ハードウェアの低価格量産化が浸透したことで、表現の幅が広がる今の時代。変化のスピードが速いからこそ、多角的視点でクリエイティブ活動を行うデジタルネイティブ世代の学生クリエイターが捉える「今と未来」をぜひ感じてほしい。
今回取材させていただいたのは、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科3年生の福島颯人さん、同じく武蔵野美術大学空間演出デザイン学科3年生の三尾響さん。インテリアデザインを専攻しながらも精力的に社会と関わりながらグラフィックデザインなどのクリエイティブを制作し続けるおふたりにお話を伺った。

ふたり、それぞれのものづくりについて

松江:それでは、今日はよろしくお願いします。まずは、それぞれ自己紹介をお願いします。

福島颯人(以下、ハヤト):武蔵野美術大学空間演出デザイン学科に通いながら、クリエイティブチームANCR(アンクル)の代表をしているフクシマハヤトといいます。僕はグラフィック系から空間系までをやっていて、自分のクリエイティブチームでは「クリエイティブワークス」というクライアントさんから、グラフィックや空間デザインなどの制作を一貫してチームメンバーで請け負っています。

三尾響(以下、みつお):同じ大学、同じ学科で勉強している三尾響といいます。僕は大学でインテリアを学んでいますが、外部の人からはグラフィックデザインの仕事をもらうことが多いですね。たまにインテリアの改装のお仕事もやらせてもらっています。

松江:それぞれの代表的な作品はありますか?

ハヤト:海上自衛隊のエンブレムデザインですかね。大学の教授にご指名をいただいて、2017年の7月から海上自衛隊と連携をして、2018年3月に公開された海上自衛隊潜水艦の「せいりゅう」という、そうりゅう型潜水艦のエンブレムデザインを、アートディレクションからデザインまで一貫して請け負いました。乗組員の制服の帽子や腕章、就役記念のグッズなどにも使用されました。横須賀の総監部に招待していただいて式典にも出席しました。

みつお:1番面白かった仕事は、六本木の国立美術館の通りにあるバーのインテリアの改装を手伝ったことです。意外とオーナーの方もデザインを最後まで迷っていらしたので、安心してもらうために、デザイナーとしてCGやデザインの案を作って説明して。デザイン案を見て納得してもらう、その過程が当たり前のことなんですけど、とても面白かったですね。

福島颯人さん

ふたりの注目する

松江:次はおふたりが今注目していることついてお聞きしたいです。

ハヤト:僕が最近感じているのは、世界に目を向けるとアートの市場価値ってすごい高く、それぞれの都市においてアートを見に行く場所というのが決まっているということ。アートがその人々の生活に根付いているというか。一方日本でも、アートのコミュニティを作ろうという動きが少しずつ見え始めていて、東京だったら壁画が多くなってきたり、アートを施したホテルがどんどん増えていったりして、コミュニティの形成ができてきています。自分もそういうところに着目をして、東京だけではなくて日本全国に目を向け、アートが見れる空間、アートに包まれるような空間・コミュニティをどんどん形成していきたいなと考えています。

松江:そのきっかけって何なんですか?

ハヤト:高校生の時に出会った会社の代表の方が外国人で、海外のアートを日本に持ってきたり、日本のアーティストを使って東京を拠点にアートのコミュニティを広げようという運動を始めていたんです。その会社に入ったのがきっかけです。その会社での体験を自分が学んでいる「空間デザイン」と重ね、街を大きな「空間」と捉えてみたときに、アートコミュニティを活性化させていくことで、人々の和が繋がって、もっと良い東京の姿、日本の姿というのが見えてくるんじゃないかなと感じたんです。

みつお:深澤直人さんが、「いずれプロダクトがなくなる」とおっしゃっていて。プロダクトは壁に埋まって空間になり、他のものはデバイスの中に埋まっていく。そういう風に、プロダクトがなくなって便利が当たり前、綺麗なデザインが当たり前、手に取りやすい値段が当たり前という、いろんな“当たり前”が増えたとき、次は「エクスペリエンスデザイン」というものが重視される時代になると思うんです。
これを、僕が勉強している空間デザインと結びつけて考えてみると、例えば久々に中学校に行くと意外と天井が低く扉が小さく感じられて、自分の身長が変わったことをデータよりも明らかに、“経験”としてリアルに感じますよね。小さい頃は見えなかった階段の手すりの下も、大人になって改めて来てみると手すりの上から景色が見えて綺麗なデザインがされていることに気付いたりして。そういうのが面白い。子どもから大人、大人から老人へと人生を経験していくことで、建築や空間が変わって見えてくる、そういうデザインが出来たらいいと思っています。

松江:どうしてそれに注目しているのか、理由が気になりますね。

みつお:ひとつのことで人をめちゃくちゃ幸せにすることってむずかしいと思うんですけど、ちょっとだけハッピーな気持ちをインテリアデザインの中に入れることならできるんじゃないかなと思って。例えば雨の日に、雨のカーテンにプロジェクションマッピングで綺麗な映像を流したり、溜まった雨水がアートに見えて綺麗な空間になったりする商業施設があったら、デートの時に「どうしよっか、雨降っちゃったね」じゃなくて、「今日は雨降ったね、あそこいけるじゃん!」みたいに感じられるかもしれない。人が普通ネガティブに捉えちゃうところを、ちょっとだけ、ポジティブにするようなことができたら嬉しいなという考えがずっとあって、それが自分の学んでいるインテリアと結びついた感じです。

ハヤト:今のヒビキ(みつお)の話を聞いていると、アートとかデザインとか、新しい考え方から新しいカルチャーとかも生まれそうですよね。

三尾響さん

僕らの世代が考える僕らの未来

松江:今までのお話を踏まえて、今後どういう取り組みや活動をしていきたいのかを具体的に教えてください。

ハヤト:僕が運営しているANCRっていうチームには、「デザインやアートの力で日本中を活性化させる」というアドミッションポリシーがあって、その事業のひとつとして、「若手クリエイター」「学生クリエイター」って呼ばれる、社会にとらわれる必要がなく独創的な発想がしやすい段階のクリエイターに着目をしています。良い発想を持ったクリエイターが沢山いるので、彼らの市場価値を上げ、デザインやアートの市場価値も上げていこうという取り組みを、学生クリエイターと協同して一緒に作っているところです。

松江:その活動を広げて具体的にもっとこういうことまで、それが東京にとらわれずに全国的にもっと広がっていけるような未来が見えているのかな? 計画的なところが気になります。

ハヤト:これから社会人の意識が学生クリエイターという若手の発想力を求める動きにどんどん変わっていて、それをひとつの授業やクリエイティブワークとして成り立たせるようなことを企んでいます。授業で学ぶというより、授業がひとつの社会経験、クライアントワークとなる。それが日本中に広がっていくことでアートの市場価値も少しずつ上がっていくんじゃないかなと思います。

松江:なるほど。みつお君は?

みつお:都市レベルで空間をアート化するのは、東京だとなかなか難しい話だと思うんですよね。大きな会社や国がみんなで協力してプロジェクトとして立ち上げない限りは出来ないことだと思うんです。なので、僕は最初は地道に地方都市とか、まだそもそも足りてないものが多いところでアートな空間をどんどん作っていって、それを最後東京に持って帰ってこれたらなと思っています。東京でやるには、20年30年かけて上り詰めていかなくてはならない。それはあまりにも先が長い話なので、場所を選ばずプロジェクトの実績を作ってから、「色んなところでアート空間をつくっているみつおさん来てよ」と、声をかけてもらえるようになるのが現実的かなと思っています。

松江:凄いです。卒業後は何がしたいですか?

ハヤト:僕が考えているのは、ひとつの会社に就職するのではなく、色んなところで色んな経験をすること。自分のビジョンに向かって仲間を巻き込み会社としてやっていくことや、様々なチーム・グループを横断することで見えてくるものがあると思うので、そうした経験を通じて能力をつけ、自分が目指すクリエイティブな日本、クリエイティブな世界を、自分の手で形成していきたいですね。

みつお:僕は卒業したら普通に就職しようと思っています。空間デザインの大きな会社って新卒採用があまりなくて、実務経験何年以上というところが多いので。そこでスキルと経験を積んで実力をつけてからどんどん自分の好きなことをやっていきたいなと思っています。

松江:ありがとうございました!!!

PROFILE

松江翔輝(まつえ しょうき)

株式会社ガシュー代表取締役。大阪芸術大学建築学科卒業後、京都造形芸術大学大学院へ進学。大学卒業と同時に株式会社ガシューを設立。優秀なクリエイターが企業や社会と出会うことなく埋もれていく状況を解決するために、社会とクリエイターを結びつけるサービス「Gashoo」を立ち上げた。

PROFILE

福島颯人(ふくしま はやと)

クリエイティブチームANCR CEO兼クリエイティブディレクター。
1997年生まれ。大学1年の頃から企業でのインターンを始め、2年になると自らがアーティストとして参加していた企画で知り合った仲間とともに日本のアート市場拡大を目的としてクリエイティブチームANCRを立ち上げる。
グラフィックデザイン・空間デザインを中心にストリートアート・書道と多岐にわたる分野で活動の幅を広げる。過去に海上自衛隊潜水艦のエンブレムデザインも手がける。

PROFILE

三尾響(みつお ひびき)

クリエイティブチームANCR CDO
1997年生まれ。大学1年の頃から個人でクライアントワークを始める。
ロゴデザインから六本木のバーの改装などグラフィックと空間のデザインなど幅広く活動。
ANCR代表福島颯人の考えに共感し、ANCRにデザイナーとして参加。

文・松江翔輝 タイトルデザイン・一ノ瀬雄太 編集・上野なつみ

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