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McCANN MILLENNIALSの「世代で区切るのはもう古い」

#3 「たくさんの人」じゃない、「大事な人」に届くものを考える

はじめまして。吉富亮介といいます。マッキャンエリクソンという広告会社でクリエイティブプランナーという企画屋さん業の傍ら、弊社グループ横断の有志団体「McCANN MILLENNIALS」の日本での代表をしています。平々凡々な一般サラリーマン家庭に育ち、芸術系大学などを経ながらも絵心がない中「クリエイティブ」という名のつく仕事をしている自分が、1回目阪口による「メディアプランナー視点」からの世代論2回目顧による「戦略プランナー視点」からの世代論、を受けて、「クリエイティブプランナー視点」での世代論を雑談ベースでお届けできたらと思っています。しばしお付き合いをお願いいたします。

 

あまり聞き慣れない「クリエイティブプランナー」って?

広告業界にあるクリエイティブ職の中で、日本で有名な3つはコピーライター、アートディレクター、そしてCMプランナーではないでしょうか。私も広告業界を志望していた大学生時代はその3つぐらいしか知りませんでした。それから時代は巡り、「アート&コピーの時代からアート&コードへ」などと色んな話が出てきたりして、1つの肩書きや職だけで区切るのは違うフェーズにきているのかもなんて思ったりします。

そんな中私が名乗っているクリエイティブプランナーは何かというと、広告プロモーションをやろうという時に全体のコミュニケーション設計を考えたり、イベント施策を考えたり、ネット上で話題になりそうなキャンペーンやムービーを考えたり、といった仕事です。各社によって言い方は様々だと思いますが、アクティベーションプランナーやコミュニケーションプランナー、といった肩書きも近いのでは?と思ったりします。要は、コミュニケーションに関わるクリエイティブ領域諸々を考える人、です。たぶん。

では、そんなクリエイティブプランナー視点から見る「世代論」とはどんなものでしょうか?

 

広告業界も、企業も世代論が大好き。

既にこれまでの2回でも出てきていますが、そもそも、広告業界、そして私たちのお客さんであるクライアント企業のマーケティング担当の方々は世代論が大好きです。「大好き」と言うと、少し語弊があるかもしれません。そういう文化で何十年も世の中が動いてきたのです。だから、ブリーフ(クライアントから「こういう条件でお願いします」と説明、渡される資料のこと)の段階から、世代論で語られていることが往往にしてあります。

「若者に流行らせて欲しい」
「バブル世代に買ってもらいたい」

なぜならそれは、そういう慣習のもとつくられてきたから。育てられてきたから。
だから広い話になってくる。
だから世代論になってくるんです。
「若者」と言えば10代や20代、企業によっては30代だって若者でたくさんの人に届けてもらえるはずでしょ、と。

でも前回の顧が話していたように、いまはもう「面」ではなく「点」で動いていて、多くに働きかけても動くのは思考停止した標識通りに動く人々だけなんです。
それでいいなら、いいでしょう。ただ、きっとそうじゃない。僕らはきっとそれだとダメなんです。クリエイティブという名のもと、誰かに「届く」ものをつくる仕事をしてるのだから、当てるだけじゃなくて、届いて、刺さらないといけない。

じゃあ誰にそれ届けたいって話、ですよね。

 

大多数におもしろいって言ってもらえるよりも、隣に座ってる大事な人がおもしろいって言ってもらえる方が大事かもしれない。

たくさんの人に届けたい。
たくさんの人に商品を買ってもらいたい。

それは確かに企業や商品開発の視点からすれば正しい話だと思います。たくさんの人が買ってくれることで売り上げが出て、そこから社員の給料が払われて、さらに良い商品やサービスが提供できるようになる、その繰り返しで成長していく。そういうものだから。
ただ、いまの時代は「同じもの」を「たくさんのひと」が揃って買い求める時代じゃない。みんなが同じ番組を見て、同じように面白かったね、って次の日に笑い合える時代じゃない。

だからこそ、「誰に響くものをつくるか」が大事になってくるんじゃないでしょうか。

僕だったら、妻がおもしろいって言ってくれるものを作りたいと常日頃思っています。「こんなの考えたのだけれど‥‥」と話すと、良くも悪くも正直な彼女のリアクションに、落胆することもあれば自信を持てることもある。だから面白いし、だから信じられる。めちゃくちゃ大事な、身近なこの人の気持ちを変えられずに、顔もわからない人の気持ちを変えられるものなのか。否、じゃないですか?

もちろん、ターゲットを考える上であからさまに妻が相手として違うなら、その相手を変えることもあります。
友達のAくん、飲み屋でよく会うBさん、妹のC、両親のDE、などなど自分の周りを見ていくだけでも老若男女、色んな人たちが出てくる。この人たちが「おもしろい」「いいね」と言ってくれることを考える。でもやっぱり、それはまず顔や嗜好をある程度知ってる人でないといけない。そうじゃなかったら、これまで通りの世代論と同じ話になってくるから。友達のAくんと同じ世代の「30代独身男性に向けたイベント」では、対象が広すぎて、その情報が当たってもすり抜けてくこと間違いナシじゃないですか。

いまは本当に「届ける」のは大変な時代かもしれない。だけど、だからこそおもしろいなと、すごく思っています。ちゃんと届いたら、その人はきっと好きになってくれるから。嫌いになることもあるかもしれない。けど、届かなかったら無視だから。それが一番最悪だから。

 

たくさんの人の中にいる、大事なあの人に。

とりとめもない話をしてきた中で、このコラムのタイトル「世代で区切るのはもう古い」を振り返り、「じゃあどうするの?」と聞かれたら「大事な人に届くものを考えよう」、それがいま僕が考えていることです。1人にすら届かないなら、その先にも届かない。でも届いたら最後、そこから広がっていく可能性はたくさんある。

余談ですが、妻は毎週僕のために「週めくりカレンダー」を描いてくれていて、かれこれ約2年半も。今週はこんな日がある週だよ。時には今週はこんな我が家のイベントがある週だよ。と、いろんな情報を届けてくれる。めちゃくちゃ届いてくる。それが僕の力になる、そうに違いないと思っています。

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PROFILE

McCANN MILLENNIALS

日本におけるマッキャン・ワールドグループ傘下の各社のミレニアル世代(1980-2000年前半生まれ)のメンバーで構成され発足した、オープンイノベーションプロジェクト。グローバルネットワークの活用や、大学・他企業等との連携を通して会社や国境の超えて柔軟に繋がり、アジア最大級のミレニアルズコミュニティを目指している。

PROFILE

吉富 亮介(Ryosuke Yoshitomi)

McCANN TOKYO - Creative Planner / McCANN MILLENNIALS - Co-Founder,JAPAN Lead インターネット系広告代理店を経て2013年、McCANN TOKYOに入社。 クリエイティブプランナーとして、ムービー、イベント、コンテンツ開発、そして前職時代より培ったインタラクティブを中心としたクリエイティブプランニング、コミュニケーション設計を得意とする。 これまで日系・外資系問わず様々な企業のクリエイティブプランニングを担当。 また、マッキャン・ワールドグループ内イノベーションプロジェクト「McCANN MILLENNIALS」 Co-Founder、日本での代表としての顔も持つ。 カンヌライオンズ ブロンズ、ADFEST ゴールド、シルバー、ブロンズ、ONE SHOW シルバー、ACC CMフェスティバル グランプリ/総務大臣賞 など受賞暦多数。

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