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デザイナー×非デザイナーの掛け算が生む「デザインの化学反応」

CREATIVE X #2

デザイナーには、新しい出会い、そして“武器”が必要だ――。 さまざまな企業やクリエイティブの現場で活動する、そんな当事者の危機意識から立ち上げられたのが、今年2月にスタートしたイベント「CREATIVE X」である。第一回となる「#1」には、海外事情やチームビルディング、さらには法律やフォントまで、多種多様な分野の登壇者が集結。いまデザイナーにとって必要な知識の、熱い交流が行われた。「デザインに化学反応は起きるのか。」と題したその「#2」が、2018年10月21日、六本木のDMM.com本社で開催される。 社会におけるデザインへの注目が高まっているようにも見える昨今。そのなかで、現場の人々はどのようなことに課題を感じているのだろうか。そこで今回は、金融関連のサービス事業「メルペイ」の鈴木伸緒さん(写真・左)、「Sansan」から生まれた名刺アプリ「Eight」の友近玲也さん(同・右)、DMM.comのアニメレーベル「DMM pictures」の細川絵理さん(同・中央左)という3名のデザイナーと、広告を中心に手がけるT&T TOKYOのコピーライター・タカハシ トモヨシさん(同・中央右)をお招きし、この注目のイベントの背景にあるものを伺った。

デザイナーの危機感から始まったイベント

ーー「CREATIVE X」は、今年2月、「デザイナの危機」という刺激的な問題意識のもとにスタートしました。はじめにこのイベントの生まれた背景について、お聞きできますか?

細川さん:もともとの出発点は、「デザイナー同士の横のつながりが弱いよね」という仲間内の会話でした。いま、多くの企業にはインハウスデザイナーがいますが、彼らが日々、会社や分野を超えていろんな人や領域に触れているかというと、そうではないのではないかという疑問が発端になっています。

ーー外からはなかなかわかりづらいですが、デザイナー同士の交流はあまりないものなんですか?

鈴木さん:というよりも、「偏っている」という感じだと思うんですね。細川が所属するDMM.comのようなメガベンチャーには、数百人のデザイナーがいる場合も多いのですが、そうするとどうしても社内で閉じてしまう。いっぽう、デザイナーが少ないスタートアップでは個人間の交流が行われていますが、大企業と交わる機会は少ない。それらを混ぜ合わせたいという気持ちが、僕が参加した動機でした。

タカハシさん:その偏りは、僕も感じます。自分はデザイナーではなくて、広告の世界でおもにコピーライティングをしている人間なのですが、普段の仕事ではその界隈の人としか会わないですし、こういう風に事業者側のデザイナーと関わる機会は少ないんですよね。

ーー企業の規模や業界ごとに、一種のタコツボ化が起きているんですね。

友近さん:インハウスデザイナーと制作事務所の間にも距離がありますよね。僕は美術大学出身で、広告の仕事をしている友達がいるのですが、「いまこのデザイナーが面白い」という話を聞いても、周囲は知らないことが多い。それはとても勿体ないことだと思うんです。なので、実力のある事務所と組んでアプリを制作したりしているのですが、そうした回路の必要性をじつは多くの人が感じていたと。

細川さん:そこで前回の「#1」では、「今あるデザイナの危機に立ち向かう知識」というテーマを立て、我々のようなデジタル分野に限らない、クリエイティブに関わる幅広いゲストをお呼びしました。デザイナーが未知の世界に出会い、より広いつながりが持てる場を作りたかったんです。

前回CREATIVE X #1の様子

ーー興味深かったのが、「#1」の参加者アンケートで、およそ9割の方が自分のキャリアに悩んでいるという結果があったことです。参加者には若いデザイナーも多かったそうですが、社会や社内におけるデザイナーの評価に対する危機感も、イベントの背景にはありますか?

細川さん:そうですね。「デザイナー」や「デザイン」という言葉は広く使われていますが、その価値がどれだけ認められているのかというと、「どうかな?」という思いはあります。

鈴木さん:そこが、仕事の評価が直接的に返ってくる広告業界と違うところですよね。事業者のデザイナーは、エンジニアなどいろんな人と関わりながら、日々、サービスを少しずつ良くしていく。なので、たとえ事業がうまくいっても、「UIが良かったから」と言ってもらえないケースは多いと思うんです。

友近さん:キャリアの課題で言えば、経営の中心にデザイナーがなかなか必要とされていないという現状もあります。悩んでいるデザイナーは多いけど、そのモヤモヤをあまり言えないでいる人も多いと感じるんですよ。

鈴木さん:本当はデザイナーがもっと自分の価値を発信していくことは大切で、でも、それをどう言えばいいのかわからない人も多い。前回の参加者には、そうした悩みを抱えた方が多かった印象がありますね。

いま必要な知識とつながりを描く、熱い空間

ーークリエイティブ関係のイベントは近年多いですが、「CREATIVE X」ならではの特徴とは?

細川さん:ひとつは、業界や分野を限定しないゲストの多様さです。前回の登壇者も、フォントの専門家から知的財産権を扱う弁理士まで、本当にさまざまでした。私はフォントメーカー「モリサワ」のディレクター・富田哲良さんとお話しさせていただきましたが、これはデザイナーの道具であるフォントへの知識を深めてもらうためのプログラム。いっぽう、著作権のようないつもはなかなか意識しない領域も盛り込み、世界を広げてもらうことも狙いました。

鈴木さん:僕は「海外で戦う」というテーマで登壇しましたが、こうしたかたちで、クリエイティブの人間とほかの領域を掛け合わせるプログラムが、このイベントの核になっています。その背景には、ただ普段のデザイン業務をこなすだけではジリ貧だよね、という思いがある。伸び代が限られたその地点を越えて、新しいスキルセットを作っていかないといけないと。

タカハシさん:著作権まで知っているデザイナーはあまりいないから、知識があればかなりレアな存在ですよね。それで思うのは、広告の世界ではデザイナーとアートディレクター(AD)が明確に分けられているんです。前者はデザインだけに関わるけど、後者は幅広い知識を持っていて俯瞰的にヴィジュアルの方向を示してくれるから、コピーライターとしてはADとのほうがより仕事がしやすい印象があります。

鈴木さん:広告の世界を目指す人なら、ADを目指すのが王道だと思うんです。でも、事業会社でアプリなどをやりたい人は、ADというキャリアは描けない。だからこそ、それ以外の選択肢を探している人が多いと思うんですね。たとえば法律や文字、動画に強いとか、普段の仕事の分野以外で武器になるものを探そうという思いが、多くの参加者に共通していたと思います。

ーー「CREATIVE X」は会場の構成もユニークですね。メインとソロの二つのステージ制になっていて、ちょっと音楽フェスのようなつくりです。

鈴木さん:前回はみなさん、学校の授業終わりのようにその場で話し続けていて、たいへんな熱気で。そのため今回は、メインステージで対談した片方の登壇者に、ソロステージに移ってもらい、そのまま話の続きをしてもらったり、参加者と対話してもらおうと思っているんです。「#2」は500人以上の参加を目指しているので、移動してもらわないと会場的に厳しいという事情もあるんですが(笑)。

友近さん:それで言うと、「著名な方の話を一方的に聴く」というスタイルではなくて、登壇者と参加者の相互に学び感があるような距離の近さも、「CREATIVE X」の面白さですよね。

細川さん:これは、このイベントの主催者である中村泰輔がとくにこだわっているポイントでもあるのですが、本当にその場で人とのつながりが持てるイベントを目指しているんです。「#2」ではミートアップと称して、交流会だけの時間も設けようと考えています。

鈴木さん:交流会は前回もあったのですが、約300人の参加者のうち150人くらいの方に来ていただきました。あの密度は、この規模のイベントではなかなかない。それと、前回を終えたときに嬉しかったのは、依頼していないのに、複数の参加者が「note」というプラットフォームに長文の感想を書いてくれたこと。その熱量の高さを受け、すぐに「#2」をやろうとなりました。

前回CREATIVE X #1の様子。会場には300人を越える来場者が集まった

制約や固定観念を打ち砕く、化学反応のちから

ーーそんな「#2」では、「デザインに化学反応は起きるのか。」というテーマが掲げられています。

細川さん:前回のプログラムは、クリエイティブの人間とほかの領域の掛け算という視点で構成しましたが、その掛け算の部分を「化学反応」と言い換えてみたものです。普段接していない人の話を聞いて、新しい何かをひらめく。そんな前回感じた面白さを、今回はもっと展開してみたいと考えています。

 

ーーみなさんもお仕事のなかで、異なる領域との「化学反応」を感じることはありますか?

友近さん:デザインを担当している名刺アプリ「Eight」で、株式会社もりのクリエイティブディレクター・原野守弘さんにPRムービーをお願いしたことがあるんです。アイデア出しのなかで「名刺交換ってなんか儀式っぽいよね」と。その様子をきちんと振付をつけて複数人でやったら面白いんじゃないかとアイデアが膨らんで、すぐに振付師や映像ディレクターの方を集めて完成へと導いていたのは、側で見ていてとても印象に残っていますね。

 

ーー普段の名刺交換が、まったく別物に見えるムービーでしたよね。

友近さん:自分たちでもムービーを作ったことはあるのですが、名刺交換ってビジネスの大事な場面なので、こういう風に面白く扱ってはいけないという固定観念があったんです。それが異分野の人を制作チームに混ぜることで、意外な角度からアイデアが広がった。面白かったですね。

鈴木さん:僕も「メルペイ」という会社で金融関連の事業を担当していますが、とくに金融系は法律に関する記述が厳しいので、なにかやりたいと思っても法律を学んで制約のなかでデザインしないといけません。でも、法律を知ると、安心を担保しながら省けるものが見えてくることもあります。それは、法律の知識があるデザイナーじゃないとできないことなんです。

 

ーー必要があって学ぶ知識だけど、それがデザインの武器にもなると。

鈴木さん:そうですね。そうした工夫をしないと、文面がただ続いて、最後に「同意」ボタンがあるような誰も読みたくないページになってしまう(笑)。その難しさを、いかにクリエイティブに克服して簡単にするのか。そういうときに、異分野の知識は役に立つ実感があります。

タカハシさん:広告の場合、「今日は化粧品、明日は車」のように対象が毎回変わるので、そこで刺激を受けることができているのかなと思います。アイデアって、その人が経験した何かからしか出てこないじゃないですか。だから、とにかくいろんなものに触れておくことが大切だと感じていて。

 

ーー直近では使えないかもしれないけど、自分の中に貯めておくことが大切だと。

タカハシさん:そうそう。……まあ、すぐに忘れちゃうんですけどね(笑)。

一同:(笑)

タカハシさん:でも、いつかどこかのタイミングで、何かと結びつくかもしれないわけですよ。

細川さん:私はパッケージやポスターなど、アニメ関係の制作物が多いのですが、やはり脚本を読んだりアフレコの現場を訪れることは刺激になっています。ただ、多くのデザイナーは必要に駆られて新しい知識に触れるけれど、自分からということは少なくなってしまいがちなのが現状だと思う。だからこそ異分野の人の話を聴く面白さを、このイベントで発見してもらえたらと思うんです。

異分野との接触から、デザインの価値を立ち上げる

ーー「#2」では、さらに幅広い登壇者をお呼びするそうですね。

鈴木さん:こうしたクリエイティブ関係のイベントって、登壇者がだいぶ固定化しているようにも思うんですね。そうしたものにしたくないという意識が強くて、自分たちが話を聞いたことがない企業のデザイナーをできるだけ呼ぼうとしています。でも、最初からこの二人にこのテーマで対談してもらおうと声をかけるのではなくて、まずリストをあげて、そのうえでこの二人が話したら面白いんじゃないか、という組み方をしています。だから、台本はほぼないんです。

タカハシさん:僕もまだ、話すテーマすら知らなくて、すごく不安なんですけど……。

鈴木さん:タカハシさんは誰と組んでも大丈夫なので、勝手に安心しています(笑)。今回は元建築家でデジタルを持ち込もうとしている方もいれば、デジタル側でプロダクト開発をしている方もいます。たとえば、その二人にお話してもらったらどうなるのか。そんな風に、ちょっと異種格闘技的な雰囲気の対談が聞けると思います。

ーーまさにこの「CREATIVE X」の会場が化学反応の現場になるということなんですね。

鈴木さん:そうですね。言い換えると、登壇者は当日どうなるかわからないので不安かもしれない(笑)。でも、みなさんイベントの趣旨に賛同してくださっているので、よい化学反応が起こると思います。

友近さん:今日はデザイナーが多いですが、登壇者には非デザイナーもいます。デザイナー以外でも普段の仕事のなかでデザインに関わる機会がある人であれば、楽しめる企画だと思います。

 

ーー最後に、このイベントの先に描いているクリエイティブの未来像を聞かせてください。

タカハシさん:今回、新たに「デザインに価値を、もっと。」というイベントの指針となるスローガンを作ったんです。その話し合いのなかで、「デザイン」と「デザイナー」のどちらの言葉を選ぶのかという議論があったのですが、自分たちの対象はデザイナーだけではないだろうと、現在のかたちになった経緯があります。その意味で、このイベントが幅広くクリエイティブ全体の底上げになればいいなと思っています。IT社長ではなく、クリエイティブの人間が女優と付き合えるような社会になればいいなと(笑)。

友近さん:社内のことで言えば、デザイナーがフライヤーでもアプリでも、任せれば何でもかたちにしてくれる「何でも屋」的なものとして捉えられてしまう状況を変えたいなと。見栄えの専門家のように考えている人もまだまだ多いですが、デザイナーにはもっと違う可能性もある。難しい課題かもしれませんが、デザイナーへの理解を少しずつでも広げていきたいです。

鈴木さん:事業の重要な意識決定にデザイナーが入っていけるような環境が生まれるといいですよね。

細川さん:それは私も思います。「デザイナー」という肩書きのまま、経営や営業の仕事に関わることがもっとあっていいなと。

鈴木さん:いっぽうで、そこには、多くの人が言語化が苦手だという、デザイナー側の問題もあると思うんですよ。「なぜここは赤色なの? 四角なの?」ということを、違う領域の人に言葉で説明できるデザイナーが少ない。でも、だからこそ、異分野の人と積極的に関わることで、その接点のなかで言葉を探していく必要がある。価値を言語化できる人が増えれば、自然にデザインの環境も変わると思うんです。

細川さん:そうですね。参加者の方にも、必ず持ち帰ってもらえるものがあるはず。前回以上にパワーアップした内容になると思うので、ぜひ、多くの方に遊びに来てほしいです。

PROFILE

鈴木伸緒

CREATIVE X #1に「Creative x グローバル」というテーマで登壇。#2からはスタッフとして参加し、中村とともに#2のコンテンツ企画・体験設計に携わる。
本業としては、2015年11月より株式会社メルカリに入社し、US版のプロダクトデザインを担当。2017年よりUK版の立ち上げ・グロースを担当し、2018年1月からはメルペイの金融事業・デザイン組織の立ち上げに携わる。

PROFILE

友近玲也

多摩美術大学卒業後、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。現在は、名刺アプリEightやオウンドメディアBNL(Business Network Lab)に関するデザイン業務全般を担当。また、Eightデザインチームのマネジメントやディレクションも行っている。

PROFILE

細川絵理

2015年11月DMM.com入社。オウンドメディアや採用サイト、新規事業のデザイン、アートディレクションを担当。2017年より立ち上げに携わったアニメレーベル「DMM pictures」のパッケージ、広告類のクリエイティブを担当する。

PROFILE

タカハシ トモヨシ

T&T TOKYOのコピーライター。仕事くらい、楽しくやろうや。
http://tttokyo.jp/(pass:tt44)

写真・田川優太郎 文・杉原環樹 編集・上野なつみ

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