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クライアントもクリエイターも巻き込んでいく、 Dentsu Lab Tokyo流・新しい「つくり方」のつくり方

docomo×Perfume『FUTURE-EXPERIMENT VOL.1 距離をなくせ』

クリエイティブディレクター・菅野薫さん(写真・左)率いる「Dentsu Lab Tokyo」が手がけたプロジェクト『FUTURE-EXPERIMENT』が「コードアワード2018」グランプリに輝いた。旧来の広告クリエイティブとは一線を画すこのプロジェクトは、いかにしてクライアントや名だたるクリエイターを巻き込んで実現したのだろうか。Dentsu Lab Tokyo設立以前から菅野さんとともに数多くのプロジェクトに携わってきたクリエイティブディレクター・保持壮太郎さん(同・中央)とプロデューサー・藍耕平さん(同・右)が菅野さんとともに振り返る、新しい「つくり方」のつくり方。

「渦巻き」に巻き込む制作プロセス

ーーこのたびは「コードアワード2018」グランプリ受賞おめでとうございます。受賞作『FUTURE-EXPERIMENT』はNTTドコモの5G回線をフィーチャーしたものですが、どこから着想を得たんでしょうか?

菅野さん:NTTグループの技術を実証実験的なエンターテインメントとして見せるのがそもそものお題でした。そこで今後「5G」がスポーツや医療などあらゆる部分に影響を及ぼしていくなかで、まずはライブパフォーマンスが大きく変わるんじゃないかと考えたんです。1980年代にナム・ジュン・パイクが衛星放送を使ったパフォーマンスを行なったり、90年代に坂本龍一さんがインターネットを使ってライブしたり。これまで数多くのアーティストによって提唱されてきた概念がついに日常的なエンターテインメントで実現するんじゃないかと。

ーーなるほど、必ずしも5Gありきで始まったわけではなかったんですね。Perfumeさんを起用することも含め、そこからどのように制作が進んでいったんでしょうか。

保持さん:色々なことが同時並行で進んでいて、そのなかでPerfumeがいいかもという話が出たような……。最初はあえて3人がバラバラの都市にいることで通信の価値をもう一度描くのはどうだろうと菅野さんが話していて。クライアントのエンジニアの方々にもご協力いただいたので、「こういうことをやりたいんですけどどうすればいいですか」と相談して色々な方を同時に「渦巻き」の中に巻き込んでいく感じでしたね。

菅野さん:以前保持と一緒に担当した「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」や国立競技場の「Reviving Legends」もそうですが、ぼくらは一度しか起きないイベントをつくってドキュメンタリーとしてCMにするという珍しい手法をとっていて、それ自体がイベントという「事件」になっている。今回も同じで、Perfumeがダンスを間違えても記録されるし、通信が途切れてもダメ。だから当日まで仕上がりが見えないし、保持の言うとおり思考のプロセスもどんどん煮詰められていく。

保持さん:途中までどの3ヶ所になるかも決まってなかったですもんね。なんなら国内かもみたいな(笑)。普通は画的にいいところにしようって決め方をするけど、今回はNTTさんのインフラがどこなら設置できるとか同時にフィジビリティ(実行可能性)を考えながら進んでいた。

藍さん:プロデューサーというぼくの立場からすると、菅野さんから『3人がバラバラの都市にいる』という話がでた段階で、どの都市がいいか選定に入る。パリやLAなど色々な候補地があるなかで、NTTさんの協力体制が組める場所を探して。一方で時差を考慮するとLAはダメだから東海岸に行こうと話したり、色々な方向から詰めていきましたね。

菅野さん:プロデューサーからはフィジビリティを詰めるし、保持にはただの技術紹介にならないようストーリーとしての必然性をつくるという視点もある。一方でMIKIKOさんが共通の舞台装置としてのフレームを思いついたり、カメラの映像をスイッチングさせるのはライゾマティクスから出てきたアイデアだったり。誰かがコンテを描いてるわけではなくて、それぞれのアイデアを掛け算しながら進んでいきました。みんながプロフェッショナルの集まりとして動いていた気がします。

「つくり方」からつくること

ーーDentsu Lab Tokyoが設立されてから3年経っていますが、菅野さんや保持さんのように社外のクリエイターと強い関係性をつくるやり方は特殊なようにも思えます。

菅野さん:以前保持がぼくらのやっているプロジェクトを説明するときに、CMといえばCMだしイベントと言われたらイベント、何でも屋ですと話していて、そのとおりだなと。CMやグラフィックは長い歴史があって産業が整備されているけれど、なんでも入っているプロジェクトをつくるときは「つくり方」からつくらないといけない。だからチームを組むときもいわゆる「広告業界」が思い込んでいるものとは違う人と組まないと新しい価値が生まれないのかなと思っていて。そういったつくり方を続けてるなかで、PerfumeやMIKIKOさんとも関係性が生まれたり。

菅野薫さん(Dentsu Lab TOKYO エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)

ーーこの3年で色々な変化があったと思うんですが、Dentsu Lab Tokyoの「チームづくり」や「働き方」の面で変化はありましたか?

菅野さん:ぼくや保持は前から一緒に組んでまったく新しいやり方ができないか発明しようとしてきたので、ぼくらがやってきたことを組織化したのがDentsu Lab Tokyoという感じですけどね。変わったとしたらメンバーの若い人たちのほう。クリエイティブ出身の人からすれば技術的なところからデモをつくってクライアントワークにつなげていくのが新鮮だろうし、元からプログラミングスキルのあるデジタルネイティブなバイトの学生からすれば、広告的なストーリーテリングが学びになってると思う。制作会社から来ている人は、チーム編成をゼロからやっていくことが新鮮だろうし。だからぼくはこのラボを「出島」って呼んでるんですけど。

 

ーー「出島」ですか。

菅野さん:色々な文化の人が集まっていて「鎖国」していないっていう(笑)。半分くらいが出向受け入れだったりもするし、それぞれ出自が全然違うんですよ。生まれも育ちも文化もスキルセットも違う人たちが新しいやり方を求めて一緒に集まっている状況なので、何が変わったかは人によって全然違うんです。

 

越境・統合しながらプロデュースせよ

ーー保持さんや藍さんから見るといかがですか?

保持さん:ぼくは菅野さんと2011年ころからよく仕事しているんですが、最初はテクノロジーと組むと面白いことができるらしいぞと表面的なところしか考えてなかったところもあって。ただ色々な課題に対してちゃんと取り組んできたことで、すごく多様なものができてきた。事実「コードアワード」に出てくるものには多様性がありますよね。色々な人がデジタルテクノロジーが自分と関係ないとは思えなくなってきていて、それはいいことだなと思います。

保持壮太郎さん(Dentsu Lab TOKYO クリエイティブ・ディレクター)

藍さん:近年はいわゆる「4マス」から飛び出してくる案件もすごく増えています。Dentsu Lab Tokyoに入ったことで、ぼくはその流れをモロに感じられたのかなと。自分はもともとイベント畑出身なんですが、現場で起きることをちゃんと想像できる人がこうしたクリエイティブのお手伝いをできる機会が増えているんじゃないかと思います。菅野さんは代表的な存在ですが、チームメンバーのなかにも旧来的なCM発想から考える人は減ってきている。そういう人が自由に考えることがぼくにとっても刺激になっていると思いますね。

保持さん:藍さんみたいな人は不足してると思いますけどね。「藍さん=ツチノコ」説もあるくらいだから(笑)。

菅野さん:記事に書いておいてもらった方がいいよ、「ツチノコ」って(笑)。藍さんのような人がほかにいないので引っ張りだこなんですよ。

藍さん:ツチノコじゃないですよ(笑)。ぼくみたいなプロデューサーのニーズも増えてきているので、そういう意味でもぼく自身メンバーを拡充していかないとダメなんだなと感じています。

菅野さん:いまぼくらがやっているプロジェクトはどの角度から見ても一流の人がいないと実現不可能なので、越境してプロデュースしていかないといけない。だからCDもプロデューサーも統合的にプロジェクトを見回す必要がある。これまでは専門領域でバラバラになっていたので、すべてを見回せる人はすごく少ないんですよ。Dentsu Lab Tokyoも「デジタルテクノロジー発想」といいつつ手段としてのテクノロジーが増えただけなので、コミュニケーションの幅はすごく広い。

 

旧来の「役割分担」を更新する

ーーDentsu Lab Tokyoの規模が拡大していくなかで、プロデューサー不足が課題になってきているということでしょうか。

藍さん:そうですね。いままでってイベントのプロデューサー、CMのプロデューサーとかひとつの分野を守るプロデューサーが多かったんです。クライアントからオーダーが来てプロジェクトが始まるのが普通で、クライアントと一緒につくったり、クライアントに売り込みに行くのは特殊なパターン。でもぼくはそれが面白いと思っているので、イベントでもCMでも、ラインを守っているプロデューサーを巻き込んで引き上げていかないといけないなと。同じことを楽しいと思ってくれるメンバーをいかに増やしていくかが課題だと思っています。いままではぼくが楽しいを独り占めしていたというか(笑)。それぞれのラインにその楽しさが伝わっていなかったからこそ、後継者不足になってきているのかなと。後継者不足といっても、ぼくは引退するわけじゃないですけど(笑)。

藍耕平さん(Dentsu Lab TOKYO チーフ・プロデューサー)

ーーおふたりも、藍さんのようになにか課題を感じられていますか?

菅野さん:そもそものクリエイティブに関して言えば、旧来の構造を引き継ぎすぎていると思うんです。いまはもっと現場主義というか、テクノロジーについて言えば技術がわかってないとSFみたいな企画書になっちゃいますから。最近なんでも人工知能にやらせるみたいな企画書出す人がすごく多いんですよ(笑)。かつてCMプランナーは映像に対する専門性がすごく高かったように、テクノロジーもきちんと専門家として機能する人がいないといけない。それにエージェンシーとプロダクションという線引がそもそも必要なのかという疑問もあって、個人的にはそこを統合して新しい役割分担をつくれないのかチャレンジできないかと思っています。

保持さん:ぼくは仲間をもっと増やせたらいいなと思ってますね。ぼくらがやっているようなことを面白いと思ってくれる人が減るのは残念なので、特に日本では若い人たちが面白いことを自分でつくるぞって思ってほしい。いま面白いものって世の中にたくさんあるので、自分で何かをつくろうと思うのってすごい覚悟と勇気が必要になる。狭い意味での広告業界に限った話ではなくて、ぼくたち自身の仕事をきっかけとして、仲間が増えていけばいいなと思うんです。

菅野さん:いまってクライアントが求めてるアイデアがCMに偏っているわけじゃないし、むしろ人々はデジタルメディアに接している時間の方が長い。デジタルメディア上で機能する表現に対する要請はあるけれども、それに対してどれだけ専門家を用意できてるかというとまだまだだと思います。マーケットの期待から考えると、今後もっとDentsu Lab Tokyoの規模は大きくなってもいいのかもしれません。もっとも、多すぎて顔が見えなくなるのもよくないので、なるようになればいいなと思ってるんですけどね(笑)。

写真・南 阿沙美 編集/文・石神俊大 編集協力・市村光治良

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