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テクノロジーが生む「圧倒的」ってナンだ?

HIP LAND MUSIC × BRDG × 宇川直宏

今回で4回目の開催となる「VRDG+H」(6月18日 @DMM VR THEATER)。HIP LAND MUSIC内のクリエイティブ・ディビジョン「INT」が映像と音楽による新しい表現の開拓を目的に行っているイベントだ。「INT」のチーフである棟廣敏男さん(写真・右)と、オーディオビジュアルの表現を追求するイベント「BRDG」のプロデューサー、福澤恭さん(同・左)はこのイベントを一から作り上げてきた。そして、「3回目の公演を見に行った時に衝撃を受けて、ぜひ一緒にやろうということになった」と語る宇川直宏さん(同・中)。インタビューでは、この3人にVRDG+Hを通して見えてくる、テクノロジーと圧倒的なクリエイティブの関係性について話を聞いた。

ーー「VRDG+H Presents UKAWANIMATION! XXX RESIDENTS『THE EYE BALL VR』」の今回のテーマはどういう経緯で生まれたのでしょうか。

宇川さん:THE RESIDENTSという70年台から活動するアヴァンギャルドの一つの極点とされるバンドが西海岸にいます。僕らは8年前から偉大なる前衛としての彼らの楽曲をディープに解体、再構築、再演奏、するなんと本家公認のXXX RESIDENTSというユニットをやっていて、今回そのパフォーマンスの現在形を見せようとしています。本家THE RESIDENTSは、今年来日し、更にその歴史は「めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー」として映画化され7/1からイメージフォーラムで公開されるのですが、この企画はそれらと連動しています。今回の「THE EYE BALL VR」も本家公認です。70年代、MTV開局以前に、既に彼らはミュージッククリップを作っていてMoMAに収蔵されたり、90年代のCD-ROMの時代「FREAK SHOW」というインタラクティヴ作品を残し、常に最前衛の音と映像の実験を繰り返してきた。僕たちはそんな彼らの意志を受け継いで、独自の進化を遂げようとしている訳です。

ーーそれに対して新たに、あのDMM VR THEATERのホログラムがかかるっていう。

宇川さん:そうです。今年来日した彼らは、既にシンボルとなった目玉のコスチュームは着用しておらず、ペスト医師のマスクと、パジャマのような牛のコスチュームで(笑)純粋なバンド演奏のエネルギーを打ち出していました。90年代までは先鋭メディアを使った前衛の権化であった本家が今、身体性にこだわったパフォーマンスをより深める方向に向かっている。ならば本家の意志を受け継ぎつつ、別の次元で現代テクノロジーをまとったレジデンツを進化させようというコンセプトです。それを今回、VRDG+Hのフォーマットの中で、VJの皆さんとコラボして展開させようと。さらにもう一つ重要なテーマとして「FREAK SHOW」つまり見世物として珍奇さや猥雑さを商品とする興行の歴史が、ステージマジック、そして、イリュージョンに発展する奇術として、そのアートフォームは、どんな形で発展してきたのだろうという歴史的興味も導入されています。つまり、トッド・ブラウニングからプリンセス天功への文脈です(笑)。今回はそれが、4つのセクションで展開されます。メンバーの一人である世界的に著名なHajime Kinokoさんの、ロープパフォーマンスの技巧と展開、また、ハーシュノイズの先駆的存在であるメルツバウをゲストに迎えVR化していくセクション、また、ダクソフォンという、人の声色や動物の鳴き声のような自在な音色を奏でる楽器の日本で唯一の演奏家である内橋和久さんをメンバーに迎えたセクションなど、メディアアート的技術志向と身体、プログラミングによるオーディオビジュアルのシンクロとチャンスオペレーション、などテクノロジーと生身の問題を突きつけられると思います。

 

ーーそのテクノロジーについてなんですが、DMM VR THEATERって他の会場と比べて、全然見え方が違いますよね。

福澤さん(BRDG):DMM VR THEAERが採用している現代版ペッパーズゴーストは、手前側のハーフミラースクリーンの透過度が高く、本当に映像が空中に浮かんでいるように見える。手前に網戸などのスクリーンを置くイベントも増えていますが、段違いの質と体験です。

棟廣さん(HIP LAND MUSIC / INT):手前側にも奥側にもスクリーンがあるからレイヤー感を意識しないといけないんですけれど、逆にそのレイヤー感を意識してから、映像表現にまた奥行きが出てきたんですよ。

宇川さん:DMM VR THEAERは世界でも類を見ないフロアです。VJパフォーマンスとしては常に空間を二重のレイヤー構造で捉え、視覚表現を考えないといけない。

ーーテクノロジーの進化と、圧倒的なクリエイティブってリンクしてそうですね。

棟廣さん:第一回目のVRDG+Hが終わった時に、SNSに書き込まれていた感想が単純に「ヤバい」というのが多くて。それはつまり、言語化できないものだから、圧倒的な衝撃を与えたんだなって思っています。

宇川さん:そうか。この鼎談のお題は、テクノロジーが生む「圧倒的」とは何か?でしたね(笑)。デジタルテクノロジーの発展において一番圧倒的というか、パラダイムシフトしたのは、SNSによって欲望が可視化されたことだと思います。それまでは建前という、オブラートに包まれた感情表現でヴァランスをとっていた世界が確かにあった。感情や欲望がむき出しになった現在「圧倒的」な本心がサイバースペースに溢れている。僕はその現場に着目してDOMMUNEというソーシャルストリームを7年前に立ち上げたわけです。僕はそれをライフログアートと捉えています。今回のXXX RESIDENTSもその一環です。一方では、このVRシアターのようにテクノロジーによる視覚的な快楽っていう意味での欲望の可視化も存在している。VRDG+Hはそこを極めていますよね。これは素晴らしいコラボレートになると確信しています。

 

ーー前回のイベントを見ていると、VR(仮想現実)というよりは、どちらかというとMR(複合現実)という印象も受けました。

宇川さん:VR、そしてARやMRっていう“R指定の新しい魔法のあり方”(笑)が新しいテクノロジートレンドとして次から次へと登場し、僕たちはそれを常に意識して空間に落とし込まないといけない。実は、魔法にはマニュアルがあったのか!とこの歳になって思い知らされていますが(笑)、僕らは逆にその世界に解読できない謎を人間力として注入する役割だと考えています。 そんな中でBRDGの世界観は、僕がVJをやり始めた80年代後半の、生暖かいアナログの世界から現在まで探求してきた音と映像の実験の歴史における先端に位置すると捉えています。

福澤さん:XXX RESIDENTSとのコラボレーションも、実は以前札幌でもやったことがあって、今回はそれの拡張版というイメージですね。

ーーVRDG+Hに行って、今ここで起きていることを体験することで、次のメディアのあり方も見えてきそうです。

棟廣さん:だからとにかくまずは来て欲しいし、批評もして欲しいです。最近は(スマホやPCなどの)モニターで見て分かった風になってしまう人もいると思いますが、やっぱり生で肌で感じることの強みもありますから。DMM VR THEATERは、本当にあそこに行かないと分からない感覚があります。

福澤さん:僕らから見れば、VRDG+Hは公開の実験の場だから、ここでの経験を踏まえてさらに次に活かせるんですよ。毎回同じVJじゃんって言われることもあるんですけれど、そのノウハウを蓄積するっていうのがすごく大事なことなんです。

宇川さん:本当にそうですね。レシピは進化し続ける。そうやって調合されたものが、前回から更にUPDATEを重ね全く違うイメージとして打ち出される。平野レミ、リスペクトですね(笑)。

棟廣さん:リピーターの方も、クオリティや表現の幅が違うなとか、前回と比べてもらっても楽しめると思います。

PROFILE

HIP LAND MUSIC

サカナクション、KANA-BOON、The finなど先進的な表現が支持を受けるアーティストを擁する音楽プロダクション。2016年、インタラクティブ、インターナショナルをテーマに新たなクリエイティブ・ディビジョンとして「INT」を設立した。

PROFILE

BRDG

オーディオビジュアル表現のプラットフォーム。様々なジャンルのクリエイターとタッグを組み、前衛的な表現実験を行っている。BRDG以外にも、都内のクラブで、チャネルやREPUBLICなどの数多くのイベントを開催。

PROFILE

宇川直宏

VJ、現“在”美術家、文筆家、グラフィックデザイナーと様々な顔を持つビジュアルアーティスト。2009年にUKAWANIMATION!から派生した、XXX RESIDENTSを結成。日本初のライブストリーミングチャンネルDOMMUNE代表。

VRDG+H Presents UKAWANIMATION! XXX RESIDENTS「THE EYE BALL VR」

開催日:
2017年6月18日(日) 昼公演(Day)、夜公演(Night)の2公演
会場:DMM VR THEATER(神奈川県横浜市西区南幸2-1-5 / JR横浜駅西口 徒歩5分)

出演者:
VJ:Kezzardrix / 北千住デザイン / Keijiro Takahashi / 比嘉了
XXX RESIDENTS feat.
メイリン(ZOMBIE-CHANG) / MERZBOW / 内橋和久 / CARRE
ROPE PERFORMANCE:Hajime Kinoko / ツナマヨ
SOUND PRODUCTION:HAKANA(HIROSHI OGAWA)
TOTAL DIRECTION & PERFORMANCE:宇川直宏(DOMMUNE)

VRDG+H Presents UKAWANIMATION! XXX RESIDENTS「THE EYE BALL VR」は4部構成になっています。
(第一幕)◼︎VJ北千住デザイン × XXX RESIDENTS Alternative Session feat. メイリン(ZOMBIE-CHANG)with CARRE
(第二幕)◼︎VJ Kezzardrix × XXX RESIDENTS Plays the DAXOPHONE(内橋和久)
(第三幕)◼︎VJ Keijiro Takahashi × XXX RESIDENTS ensemble with MERZBOW VR
(第四幕)◼︎VJ Satoru Higa × XXX ACROBATICA RESIDENTS(Kinoko Hajime / Tsunamayo)

チケット & INFO
http://vrdgh4-day.peatix.com/
http://vrdgh4-night.peatix.com/

 

http://brdg.tokyo/

写真・下屋敷和文 文・井上結貴 編集・紺谷宏之

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