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クリエイティブカンパニーが地域貢献するために必要とすること

スマイルメーカーズ × 瀬戸内サニー

ローカルエコノミーやシビックプライドに注目が集まる中、地域で活躍するクリエイターは何に留意して仕事を進めているのか。その特性は地域の数だけ千差万別だからこそ、クリエイティブワークへの対処療法から脱する共通解を探すことができたら、その価値はとても尊いものになり得る。この記事では、そんな「ローカル×クリエイティブ」をキーワードに、香川県高松市に拠点を置く2社の代表をインタビューした。一人は、人の「ココロの温度を上げる」という理念を掲げて、実写やアニメーションによる動画制作を中心にクライアントワークに取り組む、スマイルメーカーズの三木清太郎さん、もう一人はインターネットメディアを運用する瀬戸内サニーの大崎龍史さん。三木さんと大崎さんは、大学時代に地域プロジェクトを一緒に進めていた先輩後輩という親しい間柄だ。この2社間には、地域でクリエイティブワークを行なう上でメリットを生む関係性が構築されている。

近隣との関係性を築く「オフィスの開放感」

ーースマイルメーカーズでは、社外のクリエイターにオフィス利用をOKしているそうですね。

三木清太郎さん(以下、三木さん):はい、そうなんですよ。スマイルメーカーズの事業自体は、オフィス賃料のような固定費を抑えようと思えば、いくらでも抑えることはできると思います。ただ、そうしてしまうと、来社してくれる方々に楽しんでいただけないだろうと思いました。そこで、社外の方にも、もう少し居ていたいなと思ってもらえるようなオフィスにしたいと思って、2018年春にオフィスを移転しました。

新オフィスができた当初から、色んな気付きを得ることができました。例えば社外の人から、「もう2時間、ここで作業をしていってもいい?」と尋ねられる体験を重ねて、そう思ってもらえるような場になっているんだと自覚しましたし、打ち合わせ先で残業できるならしていきたいというニーズがあることも知りました。

スマイルメーカーズで映像制作の依頼を引き受けた場合、ライターやデザイナー、カメラマン、漫画家といった、いろんなクリエイターと一緒に仕事をするんです。そういうクリエイターがうちとの仕事をしていない時でも、自由に仕事ができるようにオフィスを開放しておくことには、ローカルでクリエイティブワークをしていく上でのメリットがあります。

もちろん、地方にもコワーキングスペースはありますが、利用者が少ないため、一人で作業しがちです。クリエイターの方々は、誰か他の人がいる環境で働くことで、寂しさをなくしたり、怠けてしまいそうになる気持ちを持たないで済むと思うんです。そのようなクリエイターの抱える悩みや課題感が、開放したオフィスであれば、スマイルメーカーズの社員が作業をする横で仕事に取り組めますから、解決されます。

スマイルメーカーズ 代表 三木清太郎さん

大崎龍史さん(以下、大崎さん):私は東京の会社を退職して、香川で一人、会社をはじめました。瀬戸内サニーでは、瀬戸内地域のインターネットメディアとしてYouTubeを中心にFacebook、Twitterなどを駆使して、地域情報のメディア事業を展開しています。一方で、企業や自治体の課題解決に向けた、デジタルマーケティングやSNSアカウントの支援、コンサルティングにも取り組んでいます。

ローカルでは、横のつながりをつくっていける機会がなかなか少ないと感じています。一括りに、“地方”と呼んでしまうこと自体は好みじゃありませんが、従来から“地方”と呼ばれてきたローカルには、インターネットや動画という新しい業界のプレイヤーが本当に少ない。それで一人で作業をし続ける時間が長くなってしまう。すると、メンタル的に辛さが増していくんですね。そういうクリエイターにとって、スマイルメーカーズのオフィスはみんなでコミュニケーションが取れる、セーフティネットのような拠り所として機能しているように感じるんです。東京から戻ってきて、会社をはじめてみて、ここで出会った人たちに支えてもらえている部分は少なくありません。

瀬戸内サニー代表 大崎龍史さん

ーー仕事に協力してもらうクリエイターに良い環境で働いてもらうことを、スマイルメーカーズの利点だと感じているんですね。そのようにオフィスを開放する以前と開放した以後では、どのような変化が起きましたか?

三木さん:スマイルメーカーズの事業はBtoBがメイン。だから、お客さんになるような企業にスマイルメーカーズのことを知っていってもらうことはできていましたが、オフィスの開放に加えて、ギャラリースペースも設けた結果、広く一般の方にも知っていってもらう機会をつくることができました。

例えば、写真展に来場した人が転職を考えていることがわかれば親交のある企業に話を持ちかけてみる、といった繋がりも生まれています。また、写真展開催のお知らせ(チラシ、フライヤー)を近隣の方々へ配布することが、結果として、スマイルメーカーズの広報活動にもなっているのだと思います。

ギャラリースペース。オフィスの壁面を展示用に開放し、社外の人もオフィスに出入りできるようにした。

ローカルに根を張る「クリエイティブの泥臭さ」

ーー近隣に根を張っていくことと、ローカルでクリエイティブワークを行なうことに、関連はありますか?

三木さん:スマイルメーカーズに寄せられる依頼のうち、香川県内の案件は6〜7割を占めます。売上規模では、1割程度にしか満たない東京の案件が大きく占めますが、近隣の案件に取り組んでいくことを大切にしています。それは、ぼく自身が大学卒業後に個人事業をはじめて以来、近隣の企業に応援してもらってきたからです。ぼくは、卒業前から香川で起業することを企業の方々に話して回っていました。そういう若者は少なくありませんが、実際に事業を起こす人はあまりいないようなんです。

そんな中、ぼくの起業した様子を見てくれていた人が、本当に実現させた子には頑張ってほしいという気持ちから、案件を頼んでくれました。最初から良いものをつくれるわけではないにもかかわらず、お仕事をお任せいただいて、応援の気持ちをすごく感じました。そうして1年、2年を過ごし、近隣エリアの仕事を大切にするようになっていきました。

 

ーー結果的に、近隣で根を張ってきたようですが、香川県特有の事情とそれに合わせてスマイルメーカーズが意識したことを教えてください。

三木さん:ライターやデザイナーから聞いた話だと、クリエイターへの依頼内容が丸投げに近いのは地域の特徴かもしれません。クリエイターにとって、丸投げはやりにくい部分が少なからずあります。そういう状況の中で、スマイルメーカーズは自分たちなりにディレクションしていこうと努力しています。

クリエイターは、「もっと面白いものをつくろう」と声をかけられることがやりがいにつながると思うんです。外部クリエイターの方々には、一緒に仕事をしていることにメリットを感じてもらえるようにしています。その人がこだわったものを出してもらいたいですし、どこにこだわっているのか教えてもらえるような関係性づくりはとても意識しています。そして、お客さんからの要望に応えることとの間に、スマイルメーカーズがいたから生み出されたという価値を残していくのが仕事です。なので、効率化できるようなことがたくさんあるのかもしれませんが、時間をかけてヒアリングするような地道な取り組みを重視しています。

大崎さん:地道な取り組みというものは、外から見ていても、泥臭い仕事だなと思います。泥臭いことができる企業は成長していくんじゃないかと思うんです。若い企業だからこそ、クオリティでは大手に負けてしまう可能性もありますから、それ以外の部分で勝つ必要もあるんですよ。それが、ひとつのクライアントやひとつの制作物に対する熱量や真剣さだと思うんです。その熱量や真剣さがクライアントに響いて、長くお付き合いできている方々がいるんだろうなと。

三木さん:クオリティだけを問われたら、青天井だと思うんですね。別の何かで評価してもらう際に、どれだけ人と本気で関わっているのかという部分は、間違いなく影響していると思います。お客さんはお金を支払っている以上、少なくとも一生懸命に働いている姿を買いたいと思うじゃないですか。

大崎さん:泥臭さを続けていくことは難しいですよ。ただ、ローカルで事業を続けていくには、足でしっかり稼ぐことが大切です。それは、あとあと効いてくる投資のようなものだと思います。

 

ーー泥臭さとは、具体的にどのようなことでしょうか?

三木さん:例えば、コーヒービーンズショップ「アロバー」の社長とは、2016年に知り合いました。アロバーは、中南米の産地と直接取引をして、適正価格でコーヒー豆を仕入れることに取り組んでいて、そんな理念を動画にしたコンテンツをオウンドメディア「すまいるのぼうけん。」で公開しました。

この動画は、限られた予算の中で撮影していました。実際に中南米の産地に行くまでの5日間の同行予定だったのが、14日間は滞在することがわかって。天候不良のせいで帰る日も3日間ずれて、結果的には17日間滞在して撮影しました。大変でしたが、でも、すごく楽しかったんですよ。

それは、理念のような話を聞いていく過程で、深いコミュニケーションが生まれるからです。深いコミュニケーションを経たことで、ぼくはアロバーやこの社長との間に自分と似ている価値観があることに気づくことができました。お互いに、自分と関わる人が少しでも笑顔になれるような事業をしていきたいと思っていたんですね。今では、少し目上のお兄ちゃんのような存在です。このような深いコミュニケーションによって、想定を超えた気づきを得ることができるところに価値を感じているため、力を入れました。

 

ーー泥臭く向き合った結果、お客さんと価値観を共有するような関係性を築いていったんですね。それは、関係性を育む上で重要なのでしょうか?

三木さん:ものすごく大事なことだと思います。そういう関係性をひとつずつ増やしていくために、仕事以外でも接触できる回数を増やしていきたいんです。オフィスを開放していることもそのひとつですし、イベントも開催しています。「スマイルナイト」といって、月1回、映像制作に携わってもらっているクリエイターを招いたごはん会を行なっています。スマイルメーカーズとして、クリエイターの方々にできることは何だろうかと考えたとき、制作費をお支払いすることはもちろんのこと、うちと仕事をするのが楽しいと思ってもらうこともできることだろうと思いました。

その楽しさというのは、案件自体の魅力でもあるとは思うんですけど、それとは別に、スマイルメーカーズ自体を楽しいと思ってもらえるかどうか、ぼく自身を楽しいと思ってもらえるかどうかだとも感じるんですね。この会社だから面白いという関係性ってありますよね。そういう関係性を築くために、お互いのことを知っていく歩み寄りが必要だと思っているので、打ち合わせ以外で会う機会を設けることは大切だと考えています。どうせだったら、他の人も集まってくるような場にしたいですし、お酒も入って、楽しい場にしたいじゃないですか。

大崎さん:ぼく自身は、ネットワークを強く意識して築いていく必要性はないと思っています。ただ、“地方”と呼ばれてきたローカルには、堅いイベントが多くて、いろいろ意識し合ってしまう面がある。だから、カジュアルにつながっていける、このようなごはん会があることに感謝しています。カジュアルなほうが素を出しやすく、中・長期でみて、仕事もしやすくなる関係になっていけると思うんです。

スマイルメーカーズは、ぼくらとしては重く捉えずに、来たい時に来る場だと思っています。そのような緩さを保たせたまま、仮に社内で朝ランをはじめるとして、一声かけてみて参加したいようなら一緒にはじめるくらいの間柄がちょうどいいです。例えるなら、隣近所に住んでいるおばちゃんが煮物を多くつくってしまった時にお裾分けしてくれるような「ご近所付き合い2.0」みたいな関係性を企業同士でも育んでいけるとメリットは大きいと思うんですよ。

三木さん:そんなご近所付き合いに似た関係性を企業同士で築くことができると、実際にいろんなメリットがあります。例えば、社員が抱える課題に社長のぼくが何かアドバイスをしても聞き入れてもらえないけれど、大崎さんから伝えてもらえたら聞き入れやすくなることがあるんです。それは、自分の父親に言われたら反発しちゃうけれど、先生や近所のお兄ちゃんに言われたら素直に聞けるようなことと似ていますよね。だから、課題すらも共有し合えるような関係性を築くことは大事にしています。

大崎さん:コミュニティの内側だけで解決しようとすると、難しくなることでも、外の人によって良い感じになることは少なくないですよ。

三木さん:そうしたほうが、みんなハッピーになれるんです。

 

ーー最後に、ここまでのお話しを踏まえて、スマイルメーカーズが取り組んでいきたいことを教えてください。

三木さんこれから取り組んでいきたいことは2つあります。

1つ目は、お客さんに提供する価値について。僕らは今後、お客さんが気づいていない、その企業の強みや価値を提案していきたいです。3月いっぱいで3期目が終わり、会社の売上構成比を見ても、動画が占める割合は半分になりました。もう半分はウェブサイトや紙媒体による販促物が増えて、今は販促物全体を受け持つ企業になりました。この状況は保ちつつ、制作物によって、企業が想定している範囲を超える提案していきたいと思っています。

2つ目は、僕らが考える、企業との理想的な関係性づくりです。例えば、使い勝手の良い制作会社というよりも、企業内の一事業部のようなパートナーとして、顧客企業とチームを組んでいきたいと思っています。契約体系を含めて、顧客の事業成長とともにスマイルメーカーズも成長していけるような関係性を目指しています。その中で、顧客にとって必要だと感じた制作物を僕らから提案して、制作していきたいと思っています。

また、課題感を持っていることがあり、それに向けた取り組みもはじめていきたいと考えています。

それは、僕ら自身が制作会社だからこそ感じたことなんです。ローカルの制作会社の多くが小規模事業者で、代理店の下請けに留まる場合が少なくありません。制作会社はスピード感を求められがちですが、年を重ねるごとに、スピード感がなくなってしまうことは仕方がないことですし、請負業務で売上を立てていくという事業モデルでしか経営を成り立たせることができずにいることも一般的。なのですが、それではローカルの制作会社が継続性を保つことができないと思っています。そのようなローカルの制作会社の現状をどうにかできないかと考えるようになりました。

企業と親密になって成長していけるクリエイティブカンパニーになっていくことを、これから目指していきます。

PROFILE

株式会社スマイルメーカーズ

「“ココロの温度”を上げること」をコンセプトに、動画・Webを制作する企業。表面的なデザインだけでない、本質的な価値を世の中に届けることを目指して、クライアントの課題解決に貢献する。

PROFILE

瀬戸内サニー株式会社

インターネットメディア、SNSマーケティング支援、講演・執筆などに取り組む企業。会社経営、人材育成&採用、事業展開等すべてにおいて、「小さく産んで、大きく育てる」ことを重要な行動指針にしている。

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