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インハウス「で」できることから、インハウス「だから」できることへ。エイベックスクリエイティブチームの変革

エイベックス株式会社

昨年で30周年を迎えたエイベックス。テクノロジーの進化を中心とした音楽業界の変化に対し、デジタル領域とエンターテイメントを掛け合わせたプロジェクトを次々と生み出している。2018年、その流れに呼応するかの様に、社内のクリエイティブチームで新たな挑戦が始まった。

「時代も業界も変化していくんですけれど、本質的にクリエイティブをつくる意味はあまり変わらないのかなと思っていて。クリエイティブが何かのために活かされるような環境や実例をつくることをどんどんやっていきたい」と語るのは、エイベックス・エンタテインメント株式会社レーベル事業本部、制作支援グループデザインユニット(以下、グラフィックチーム)のマネージャー 吉川克さん。これまで長年インハウスデザイナーとしてエイベックスのグラフィックチームを支えてきた立役者だ。

新設されたCEO直轄本部デジタルクリエイティヴグループ デザイン戦略ユニット(以下、デジタルチーム)のマネージャーを務める松下茂樹さん、吉川さんと同チームの澤田佳和さんを交えて、インハウスのクリエイティブから生まれるモノづくりの可能性について話を聞いた。

ーーエイベックスのインハウスクリエイティブチームに変革がおきていると伺いました。長年エイベックスに勤めてきた吉川さんから見て、どんな変化が起きているのでしょうか?

吉川さん:僕は20年ほどエイベックスにいるのですが、主にレーベル事業において音楽のパッケージや販促物のグラフィックデザインといった仕事を担当してきました。

 

①PANDORA「Blueprint」(2018年)|小室哲哉さんと浅倉大介さんによるプロジェクト。アートディレクションとデザインを担当
②「DANCE NATION -ELECTRIC DANCE PARTY- 」(2015年)|横浜アリーナで開催された世界最大級のダンスイベント

昔は音楽のパッケージや販促物のクオリティを高める事で作品に貢献できていたので、グラフィックに特化した専門部署としてチーム単体で動いていれば良かったんですよね。現在もそれは大事な役割なのですが、近年配信サービスなどが台頭している中で、一個一個のクリエイティブ単体だと、価値も機能も高められなくなってきている現状があります。必然的に、デジタルとフィジカル、またオンラインとオフラインといった別の部署同士が連携して一緒にモノづくりを考えないと、クリエイティブの価値が高められないと痛感することが多くなってきました。

 

——それは、具体的にどういう場面で感じられたんでしょうか?

吉川さん例えばミュージックビデオの撮影をする時には、グラフィックの撮影も一緒にするとか。他も同じで、ウェブサイトもSNSも、実は全部裏では繋がっていますよね。本来はもっと一緒に連携してやるべきことだと、なんとなくみんな意識はしていながらも、実はそこのマッチングが今まで上手く出来ていなかったんです。

グラフィックチーム マネージャー 吉川克さん

ーー松下さんのデジタルチームにも同じ様な感覚はあったのでしょうか?

松下さん:そうですね。デジタルチームにも、もっと他のチームと横の連携を対等な目線で深めていくべきでは?という問題意識がありました。というのも、これまでの制作の流れでは、グラフィックチームがつくったビジュアルを素材として受け取って、WEBの形に仕立て上げることを目的にした仕事が大半だったんです。ただ、これだけスマートフォンがコミュニケーションの中心になっている今の時代、デジタルの知見はもっと他の領域にも展開できるんじゃないかとは感じていて。アーティストやイベントとファンを結びつけるためには、もっとフィジカルとデジタルを切り分けない体験が必要になってきているだろうと。

 

ーー時代と共に、専門性が高い縦割りのフローでは、ベストパフォーマンスを発揮できない部分が出てきたんですね。それは世の中のインハウスのクリエイティブチームに共通して言える課題かもしれません。とはいえエイベックスほど大きな会社になると横で連携していくことも難しいのではないでしょうか?

松下さんまず前提として、会社全体としてもデジタルの領域に関してアップデートをかけていくという意向があり、マーケティングとデザインを統合したデジタルクリエイティヴグループという部署が去年設立されたんです。そのデザイン領域のマネージャーとして私はジョインしたので、他チームとデジタルチームを繋いで行きたいという意向は強くありました。ただ、最初のきっかけは吉川さんがつくってくれましたよね。

吉川さん:実はデジタルチームのメンバーから「外部からクリエイティブディレクションをする、WEB畑の面白い人が入った」という話を聞いて、ひょっとして何かいいことあるかもくらいの軽い気持ちで、声をかけたんです。話してみると、二人とも感じている課題で繋がる部分があったので、意識がある者同士で少しずつやっていこうという雰囲気になりました。

松下さん:お互いの共通言語をつくるために、イベントやトークショーに行ったりもしましたね。吉川さんから声をかけられてからの連携はかなりスムーズだったと記憶しています。

デジタルチーム マネージャー 松下茂樹さん(右)

吉川さん:もちろん地道にコミュニケーションを取っていったことも大きいのですが、会社的なタイミングも追い風になったのかなと。松下さんの所属する新部署設立もそうですが、他にもプロジェクト制が推奨されるようになったりと、柔軟な動き方がしやすくなっている雰囲気がありました。

松下さん:今では実業務でも色々と連携することが多くなりましたね。


ーーボトムとトップの動きがうまくマッチしたんですね。連携し出してから、実業務ではどんな変化が起きましたか?

吉川さん:ここ最近、WEBの戦略メインのプロジェクトのグラフィックパートで松下さんと一緒に仕事をしています。デジタルチームから依頼された案件を、戦略担当の松下さんと僕らのデザインチームで一緒にやっているので、従来の縦割りから仕事の流れが大きく変わってきているのを肌で感じています。

松下さん:エイベックスでは常に色々なイベントの立ち上げがあるのですが、これまでは、おおよそのプランが固まった後の具現化させるフェーズで、WEBやツールの制作で関わることが多かったんです。そうではなく、私たちクリエイティブチームの知見をそれぞれ集結させることで、まだ漠然としたタイミングから効果や成果を最大化できる機会がありそうだと考えています。

 

ーー制作に関しては外部のパートナーを抱える、という選択肢も当然あると思うのですが、いまのつくるモノが複雑化している状況において、漠然とした状態から相談を受けて、他の部署と伴走しながら具体化していけるという流れは、インハウスだからこそできる強みですよね。

松下さん:やはり同じ会社のメンバーとして共有している空気感や距離の近さみたいなものは大事だなと思います。「ちょっと話せる?」という気軽な声かけから話を始められますし、前提を共有するコストもかからないので。

澤田さん:自分は違うデザインの部署にいて、組織改編で吉川さんのグラフィックチームと一緒になったんです。自分もこれまでは、ロゴ制作など与えられた特定の領域に特化して制作をしていました。そもそもの課題に対してのクリエイティブという観点から制作できる機会が少なかったので、松下さんのデジタルチームとのやり取りを通して、今までやっていたことを変えられるんじゃないか、という可能性を感じています。

 

ーー具体的にはどんなことでしょう?

澤田さん:みんなで考えているものが共有できていると、自分はどういう役割を果たすのか、を考えるようになるんです。制作の前提となるプランの理解があるのと無いのとでは大きく違うんですよね。ただロゴだけをつくるのとでは。

松下さん:今までは自分の仕事の範囲内の印刷物のタッチポイントしか想像できなかったのが、スクリーンやその他のタッチポイントを総合的に踏まえて考えられるようになると、ロゴや印刷物のアウトプットのより面白い形が思い浮かぶようになる。周りを見ながらつくれるようになりますよね。

澤田さん:このロゴがこう動き出すとか、こういう風に奥行きをつけることでこういう表現もできるんじゃないかっていうことを、一つサンプルをつくっただけでみんなから色んな意見が出て。グラフィックの視点からだけだと考えつかなかった表現があって、自分の中の表現の引き出しが増えたなと思っています。あとは単純に自分が意味のあるものをつくっていると感じながら制作していると、それだけモノ自体も良くなるような気がしますし。

グラフィックチーム 澤田佳和さん(左)

吉川さん:インハウスのクリエイターってフリーランスと違ってプロジェクト数と報酬が結びつかないじゃないですか。その中で僕らなりの「よろこび」ってなんだろうと、ずっと考えていました。誰のどんな役に立つのか、という根源的な部分が腑に落ちた状態で制作できるこの取り組みは、一つの答えになり得るんじゃないかと思っています。

 

ーー今まさに取り組みが始まった段階かと思いますが、今後デジタルとフィジカルのクリエイティブチームはどういう風に連携していけばいいと思いますか?

吉川さん:感覚とファクトという観点でいうと、これまでのモノづくりではなぜこういうクリエイティブになるのかという、ファクトに対する説明も少なかったですし、なんとなくつくって終わりだったので、その後の検証もされていなかったんですよね。だからこそ、マーケやデジタル、グラフィック、映像などの領域をより融解させていきたいと思っています。点ではなく線や面になるクリエイティブを、今後もさらに加速させていければと。単純にみんなでワイワイ進めるモノづくりって楽しいですしね。

松下さんお互いにやっていることを知らなかったために、失われていた機会は無くしていきたいですよね。実は直近で、デジタル、映像、グラフィックなど、セクション間をまたいだ交換留学のような研修制度を実施してみたいと考えているんです。他のセクションで大事にしていることやマインドを知り、自分の領域に生かして、全体に展開できるようになればなと。

 

ーー話を聞いていると、上流から関われるメリットが大きい一方で、逆に業務や仕事の量も増えそうですね。

吉川さん: 新しい取り組みに挑戦しつつも、グループ内には様々なアーティストやプロジェクトがあり、その中で頂いた案件は素敵にみせなきゃいけない。そこの両立は今まさに直面している課題ですね。

松下さん:それに対してはいま色々仕組みを整えていて、例えば、今まで案件ベースで個々にやっていたところを、制作のガイドラインを定義してやりとりを減らすことで、もっと本質について考えられる方にシフトできるようにしています。タスクとジョブという考え方で言うと、作業であるタスクはできるだけ減らして、本当に必要なことはなんなのかを考えるジョブのことに注力できる環境を整えていきたいですね。

 

ーーまだ環境を整え始めて、しばらくはならしていくっていうのが当面の課題だとは思うんですが、その先にあるものとして、中長期的にやりたいことってありますか?

吉川さん:トータルで、会社のためのクリエイティの底力を上げたいですね。本音で言うと、「イケてるチームをつくりたい」っていうだけなんですけれどね。何がイケてるかっていうのは、みんなで今後つくっていけばいいかなっていう。今はまだイケてるチームってなんだ!?っていうのを模索中です。

澤田さん:チーム全員でつくり上げたクリエイティブで勝負するような、そんな空気をつくっていきたいですね。組織が大きいので、どうしてもスタープレイヤーにならないと目立てない傾向があるのですが、個々のメンバーの視点を取り入れる強いものづくりのチームとして立たせていきたいです。

 

ーー様々な表現が複雑に入り交じる現代のクリエイティブにおいて、かなりチャレンジできる環境になりそうですね。最近話題になっている「スラッシャー」志向なクリエイターが集まってきそうです。

吉川さん:まさに。ずっと課題として思っていたのが、専門性のある仕事の人は、自分の領域の先にしか将来像を描きづらい。デザインであれば、デザインの先にしか成長プランがなくて、選択肢がどうしても狭まっているので、他の部署のクリエイターと繋がることによって、フィジカルからデジタルへの成長プランもつくれるんじゃないかなって。

松下さん:もうこの話だったら絶対こいつに訊く!というようなスペシャリストも、まず分からないことがあったらこの人に訊く、というようなジェネラリストも、どちらもあり得ますよね。そこは自分でも選べるし、選べる環境も整いつつある。チャレンジする機会、案件は、ありがたいことにたくさんありますから。

 

ーー最後に、これからどういう方と一緒に仕事したいですか?

松下さん:自分から色んなものを探して、それをみんなに広めてくれる人ですね。こだわりを持って、好きなものを追求した先に光るものって必ずあります。それを共有して、更に他の人を巻き込んでいくような。エンターテイメント業界なので、そういうことをどんどん共有してくれるような人が来てくれると、一緒に働いていく上で刺激があっていいなと思います。

吉川さん:やりたいことが途中で変わってもいいのですが、こうなりたい、という未来像を描く癖を持っていて、主体的にモノづくりやビジネスビジョンを考える人の方が、一緒につくっていける可能性があると思います。本当にいま会社としても大きな転換期で、特に僕らの部署はつくっていかなきゃいけない時期なので。周りを引っ張っていくような気概のあるクリエイターと一緒にイケてるチームをつくっていきたいと思っています。

 



Recruit Information

エイベックスのグラフィックチームでは、下記の職種を募集しております。
・アートディレクター
・デザイナー

募集詳細については下記よりお問い合わせください。
エイベックス・エンタテインメント株式会社
レーベル事業本部 デザインユニット 吉川宛
yoshikawa-masaru@av.avex.co.jp
 



CREDIT

Design Unit Manager(Interviwee):Masaru Yoshikawa(Avex)
Degital Creative Group Manager(Interviwee):Shigeki Matsushita(Avex)
Design Unit Designer(Interviwee):
 Yoshikazu Sawada(Avex)

Writer :Yuki Inoue
Photographer :Yutaro Tagawa(CEKAI)
Editor:Yuki Yoshida(BAUS), Koujirou Ichimura(BAUS)

Producer / Account Executive:Yuki Yoshida (BAUS)
Director :Koujirou Ichimura(BAUS)

Special Thanks:Shinichi Yamada(Avex)

 

PROFILE

エイベックス

1988年設立。輸入レコードの卸販売業から始まり、90年代には新たな音楽のムーブメントを生み出すなど、レコード業界におけるトップシェアを誇る。2000年代中ごろからいち早く有料音楽や映像の配信に力を入れ、近年はアニメやYouTube、夏フェスなどエンタテイメント全般に関わる事業を展開している。

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