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クリエイティブ×テクノロジー×コンテンツで生み出す
新しい映像コミュニケーション。

未来型ライブエンターテイメント「VISIONS」の舞台裏

2020年、5G通信の実現、4K8K普及による映像の高精細化によってメディア環境は新たなステージに突入する。それに伴い、音楽、映像など様々な分野の表現があらゆる技術的な制約から解放され、融合することになると予想されています。そうした予想図を手に、映像分野での新しいコミュニケーションをつくりあげているのが、「VISIONS」です。

2018年度のグッドデザイン賞にも選出された「VISIONS」とは、株式会社IMAGICA GROUP、日本電信電話株式会社(以下NTT)、株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)の連携によって生まれたプロジェクト「未来型ライブエンターテイメント」。ファッションショーや音楽ライブにおける新しいライブエンターテイメントを実現させてきました。

同プロジェクトの旗振り役であり、テクノロジー、クリエイティブ、コンテンツ、ビジネスの多方面から映像事業に取り組むIMAGICA GROUP。彼らの描く未来予想図とは?VISIONSの中核メンバーである4名に話を伺いました。

ライブビューイングを超えたライブ体験。VISIONSが目指す新たな映像コミュニケーションとは?     

ーーVISIONSはどんな経緯で立ち上げられたプロジェクトなのでしょうか?

諸石さん2020年の5G通信や高精細メディアが実現する新しい時代を目前に、映像は高精細化が進み、伝送の技術も高度化していっています。同時に社会的には「体験」の価値が高まり、ライブエンターテイメントのマーケットはどんどん拡大している。未来型ライブビューイング「VISIONS」は、そんなメディア環境の革新を見据えて、新しい映像体験を提供しようという実験的な試みの一つです。

株式会社IMAGICA GROUPビジネスディベロップメント部 ゼネラルプロデューサー 諸石治之さん

諸石さん:第一弾となる東京ガールズコレクション(以下、TGC)と連携をさせていただいたプロジェクトでは、12Kピクセルの映像を映し出す大型ワイドスクリーンと縦型透明スクリーンにより、ライブ映像を拡張した映像空間を創出、第二弾となる今回、株式会社LDH JAPANの特別協力のもと LDH所属アーティストである「E.G. family」 のライブビューイングとして、ワイドスクリーンに加えて新たな照明技術を用いて新しい映像体験をつくり出しました。「ライブ」というのはその場にいないと体験できない物理的な制約があるものですが、VISIONSではテクノロジーによって、時空間を超えて映像と空間を再構築、新たな体験価値を加え、そうした既存のフレームから解放された表現を追求しています。

2019年3月に行われたE.G. family のライブ「E.G.POWER 2019 POWER to the DOME」とコラボしたプロジェクト。山形で行われたライブ映像がリアルタイムで伝送され、東京国際フォーラムにもう一つのライブ会場が出現した。「光」をテーマに、映像だけではなく照明の同期を行い、ライブビューイングを超える体験を作りだした。

©TOKYO GIRLS COLLECTION 2018 SPRING/SUMMER 2018年3月31日(土)開催された「マイナビ presents 第26回 東京ガールズコレクション 2018 SPRING/SUMMER」の未来型スーパーライブビューイング「VISIONS - “TOKYO GIRLS COLLECTION 2018 SPRING/SUMMER”powered by Kirari!」では世界初となる12Kワイドスクリーンによるライブビューイングを実施。

ーー技術の革新によって動画を中心にエンターテイメントの枠組みも大きく変わっていくということですね。この一大プロジェクトはIMAGICA GROUPに所属する事業会社のシナジーを生かし、多くの方々と共に実現したとお聞きしました。VISIONSにおいて、みなさんはどのようにプロジェクトに関わっているのでしょうか?

秦さん:私は主にビジネス面からプロジェクト全体の統括のサポートを行っています。加えて、VISIONSのプロジェクトが一過性のものとして終わらせることの無いように、2020年やその先までを見据えて市場づくりに取り組んでいます。

株式会社IMAGICA GROUP ビジネスディベロップメント部 ゼネラルプロデューサー 秦明弘さん

藤木さん:私はもともと映像システムを専門としており、VISIONSではシステム、技術周りのプロデュースを行っています。ライブビューイングのための技術設計や、NTTさんをはじめとするIMAGICA GROUP外の企業との技術の橋渡し役ですね。

株式会社フォトロン IoT事業開発室 藤木紀彰さん

古谷さん:僕は映像だけでなく、ライブビューイングにおける空間演出や体験全体の設計を行っています。VISIONSで用いられているワイドスクリーンや12Kスクリーンなど複数のスクリーンに対して伝送された映像をどうレイアウトするかを映像監督と話したり、スクリーンのサイズや数、位置、電飾や照明の数や配置なども各チームと話しながら全体の体験設計を作り上げていきました。

株式会社ロボット クリエイティブディレクター 古谷憲史さん

ーー実際に、E.G. family が山形で行ったライブを東京国際フォーラムまでリアルタイムに伝送して実現したVISIONSを実際に体験させていただいて、その規模の大きさに驚きました。かなりの数の企業、メンバーが関わっているプロジェクトだと思いますが、企画はどのように実現していったのでしょうか?

諸石さん:前回の VISIONSの第一弾(2018年3月31日に実施)を体験していただいた方からの嬉しい反応や関わった自分たちの実感として、手応えを感じていましたそこで、ご一緒させていただいたNTTさん、 NTTドコモさんと次の展開の議論を進め、新しいフィールドとして「音楽」領域に挑戦しようということになりました。ロジェクトが実際動き出したのは年明けのタイミングでしたので、実質の制作期間は2ヶ月ぐらいです。また、技術的には、映像と光によるライブスペクタクルとして、ライブ会場の照明との同期伝送を実現する初めてのトライアルもあり、メンバー全員にとってチャレンジングなプロジェクトでした。

当日のオペレーション卓の様子。山形のライブ会場とリアルタイムに連携しながら会場の演出をコントロールした。

ーーあの規模のプロジェクトとしてはかなりタイトな進行ですね。リアルタイム同期を実現するためには、技術的にも苦労した部分があったのではないでしょうか。

藤木さん:4Kのカメラを使ったモニターの切り替えなどを本番環境でテストできるのが、会場の設営後になるので、その部分に関してはギリギリまで調整を重ねました。それこそ、本番の20分前まで調整をしていましたね。まあ、これはライブの一つの醍醐味といいますか(笑)

古谷さん:今回は「光の同期」というのがテーマとしてありました。ライブビューイングとは一線を画すものとして、照明の効果は大きかったです。ただ、ライブを別会場に再現するということが、VISIONSが目指した価値ではないんですよ。今回ライブ会場の舞台のサイズをそのまま持ってくることはできないので、同じ表現を目指しても縮小再生産になってしまう。ライブ配信をしたうえで、全く別の体験を設計することをイメージしていました。クリエイティブのチームからはかなり難しいオーダーを要求したと思うんですが、テクニカルのチームからできないと言われたことがなかったんですよ。心強かったですね。

藤木さん:そこは、技術者の誇りといいますか。無理とは絶対に言わずに、なんでもウェルカムな姿勢でいましたね。

諸石さん:クリエイティブチームの要望を叶えようとしたとき、技術や時間、費用などの様々なハードルがあります。それをチーム全員でクリアしていったことが、プロジェクトの鍵だったかもしれません。     

秦さん:技術もですが、予算的にも「出来ない」というのは簡単ですよね。でも、これまでにないものをつくるのであれば、そうは言っていられない。なので、クリエイティブチームの要望を叶えるというのは守るようにしましたし、そのための調整だったりサポートというのは怠たりませんでした。その甲斐もあって、会場のアンケートでは9割以上のお客様からいい反応をいただけました。一回経験すると、ほかのライブビューイングでは物足り無いぐらいリッチな体験だと思います。こうした映像体験は今後必ず求めらていくものだと確信しましたね。

「ライブ」の楽しみ方はもっと自由になっていい

ーー前回はTGC、今回はLDHの音楽ライブというコンテンツでしたが、プロデュースにはどのような意図があるでしょうか?

諸石さん:現在、音楽や舞台、スポーツなどリアルな体験はとても豊かで刺激的になってきているのですが、実際、距離や時間など物理的な制約があって楽しむことができない人がいるのを解決したかったのです。チケットを取ることが難しい人に対して新しい選択肢やスタイルを提案して。NTTさん、NTTドコモさんとご一緒させていただき、未来や新しいものをつくっていこうというマインドで、テクノロジーとクリエイティブの融合した映像コミュニケーションを一緒に作り上げていきました。

秦さん:音楽コンサートという大衆性もありました。音楽というのは表現としても多くの人が楽しめるものですから。

 

ーーVISIONSという新しい体験を実現するにあたって、こだわった部分、差別化のポイントはどのようなものでしたか?

諸石さん:大型映像や空間演出、プロジェクションマッピングの仕事をやってきたこともあり、自由な形状で映像体験を作り出したいという意識はずっと持っていました。TGCの時には、メインのスクリーンでランウェイ全体を表示し、サイドに配置した8枚の透明スクリーンでモデルを等身大で表現、横型と縦型の映像装置を駆使して TGCを新しく映像と空間で再構築することで、ライブとはまた違う体験として演出を行いました。

TGCのライブ配信会場の様子

諸石さん:今回の VISONSでは映像と空間の接着剤として、照明に注目しました。VISIONS会場の照明をライブ会場の照明と完璧にシンクロさせることで、光によって離れた場所で見ていてもそこに吸い込まれるような感覚を生み出せるんじゃないかなと。また、映像ならではの表現としてスイッチングがあります。会場全体の一体感、アーティストのパフォーマンスや表情、12Kワイドやマルチ画面を組みあわた映像の組み立ては、ライブ体験に新たなストーリーを作り出し、徐々に引き込んでいく「体験の引力」を生み出していったと思います。

古谷さん:ライブ映像のスイッチングは東京の会場でやっていましたが、映像に没入するためのストーリーは意識していましたね。「山形の会場のみなさーん!」とE.G. family がコールすると、VISONSの観客のみなさんもレスポンスしてくれたんですよ。ただ映像を客観的に見ているだけでなく、しっかりと体験になったのかなと嬉しかったですね。

秦さん:没入感と、もう一つのポイントは会場の自由度ですね。最前列でスクリーンに囲まれライブに没入しても良いし、少し離れた場所で好きなメンバーが映ったスクリーンを観ることもできる。また、会場の最後列に設置したコミュニティエリアで友達と話すこともできます。そして、その3つを行き来しながら思い思いの時間を過ごすことができる。

古谷さん:そうですね、既にあるライブビューイングとは違う価値をつくるために会場の余白の取り方にも気を使いました。ライブ体験といってもライブハウスと武道館では違いますし、同じライブ会場でも、最前列とアリーナ席では得られる体験が違うじゃないですか。VISIONSでは楽しみ方を自由に選べて、臨場感や他のお客さまとの一体感も得ることができます。

光というコンセプトのもと、会場の細部にまで演出が凝らされていた。

藤木さん:クリエイティブの面でこうした考えがあったので、僕らとしてはどんなスクリーンでもきれいにつないでやろうと思ってましたね。映像と音声のタイムラグや、スクリーン間のつなぎ目にズレが生まれてしまうと、一気に一体感を損なってしまいますから。

古谷さん:機材の配線図を見せてもらったんですが、このプロジェクトじゃないとお目にかかれないような複雑な構造になっていましたよね。あれは大変だったと思います。

諸石さん:それぞれこだわりのポイントは違うのですが、子供達が粘土をいじるようにみんなが楽しんでやっていました。いい意味で過剰なぐらいのこだわりがあったからこそあの体験を産み出すことができたと思いますね。

「未来をみんなでつくっている」IMAGICA GROUPが見据える映像表現のこれから

ーーVISIONSは5Gや超高精細映像が普及する2020年以降を見据えてのプロジェクトですが、「ライブ配信」以外に、映像表現の可能性はどのように広がっていくと思いますか?

藤木さん:多くの企業が注目している部分ではありますが、やはりAR・VRというのは面白い分野ですね。ウエラブルデバイスを用いて大勢で共有するライブ体験と、個人的な映像体験とが融合して新しいメディアが生まれてくるのかなと思います。

古谷さん:体験の物理的な制約が、映像によってどんどん解放されていくといいですよね。例えば離島とか、山奥の自然環境の中でライブを楽しめたりしたら面白いなと思います。ウエラブルデバイスのようなものを装着して、個人がそれぞれの場所にいながら、みんなでライブを楽しむ、というような。

諸石さん:テクノロジーが実現するのはあらゆる制約からの解放だと思います。新たなデバイスによって視野角やフレームから解放され、通信によって場所の制約から解放される。そうすることによって映像表現もエンターテイメントも自由になっていくのじゃないかなと。「スクリーン」という枠の中のコンテンツをつくる機会が多いのですが、これからは積極的にその外側の枠組みからつくっていきたいです。

 

ーー「枠組み」ごと新しい映像体験を開発するというのは、テクノロジー、クリエイティブ、ビジネス、どれが欠けてもできないことですよね。

古谷さん:IMAGICA GROUPの特徴としてクリエイティブだけでなく、それぞれのチームが、ある課題に対して何をすべきか、どんな状況をつくるべきか、といった全体像を総合的に考えているということがあります。映像をつくるのではなく、映像を使った「コミュニケーション」をつくるという意識は強いです。

藤木さん:そうしたグループ全体の総合力があったからこそ、VISIONSのようなプロジェクトが実現できている部分はあるかもしれないですね。

諸石さん:個人的には、「未来」をつくるという意識でVISIONSに取り組んでいます。IMAGICA GROUPだけでなく、多くの方々とともに共創しながら未来をつくっていく。これは単なるものづくりじゃないんだなという思いが、プロジェクトを進める中、強くなってきました。

これからも、IMAGICA GROUPの総合力とともに、我々グループの強みであるテクノロジー、クリエイティブ、そして、コンテンツ、ビジネスを掛け合わせ、今までの枠にとらわれない映像コミュニケーションをたくさんのパートナーの方々とともに連携、共創をさせていただきながら、新しい未来を切り拓いて行きたいと考えています。  

>>「VISIONS SUPER LIVE VIEWING supported by LDH」をつくり上げたスタッフリストはこちら

 



<Event Information>

このインタビューに参加したIMAGICA GROUPの諸石治之ゼネラルプロデューサーによる特別講演が、2019年7月に行われる「通信・放送 Week 2019」にて実施されます。インタビュー中で触れている「新しい映像コミュニケーション」について、これまでのビジネス開発の実績を交えながらプレゼンを行うとのことですので、ぜひ会場まで足をお運びください。

『4K/8K/超高精細メディアのビジネス開発と展望 ~メディアテクノロジーがアップデートする未来~』

・日時:
2019年7月17日(水) 10:30講演スタート / 11:30終了予定

・会場:
東京ビッグサイト青海展示等棟(最寄駅:東京テレポート駅)
http://www.bigsight.jp/organizer/facilities/aomi/

・申込:
事前申込制
https://reed-speaker.jp/Conference/201907/cbw/detail/?id=4K8K-S1&lang=jp

・詳細:
セミナープログラムが公式WEBサイトに公開されました。
下記URLにアクセスいただき、セミナー全体のプログラムをご確認ください。
https://www.4k8k-expo.jp/seminar/

 



<Interview credit>

Executive Producer(interviewee):諸石治之(株式会社 IMAGICA GROUP)
Producer  (interviewee): 秦明弘(株式会社 IMAGICA GROUP)
Creative Director (interviewee): 古谷憲史(株式会社ロボット)
Technical Producer (interviewee): 藤木紀彰 (株式会社フォトロン)     

Coordinator:近藤康裕(株式会社 IMAGICA GROUP)

Editor / Writer :高橋直貴
Photographer:田川優太郎(CEKAI)
Producer / Account Exective:吉田裕紀(BAUS)
Project Manager:市村光治良(BAUS)
Location:PHOTRON LIMITED

 


 

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