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茨城県を実験の場に!「if design project」が2期生を募集

茨城県庁×株式会社リビタ×井本喜久×石川俊祐×馬場未織

「if design project」は、東京と茨城を約3ヶ月間行き来しながら、自治体や地元企業と一緒にフィールドワークや講義、ワークショップに取り組み、そのなかで茨城県の魅力をソトモノならではの視点で捉えなおし、地域や企業の実状にあった形に整えていく。昨年に引き続き、今年も開催されることになった同プロジェクト。前回は「スポーツ」「食」「山」をテーマにしていたが、今回は「農」「酒」「海」と別の角度から茨城県の魅力を再発見していくという。プロジェクトの発起人である茨城県政策企画部計画推進課の樋口聡美さん(写真・右)、株式会社リビタの増田亜斗夢さん(同・左)、そしてメンターを務める井本喜久さん(同・左から二番目)、石川俊祐さん(右から二番目)、馬場未織さん(同・中央)の5名にお集まりいただいて話を伺った。

第2回のテーマは「農」「酒」「海」

ーー2回目の開催となった「if design project」ですが、まずは前回の反響について教えてください。

増田さん:前回は定員20名で募集したところ、最終的に45名から応募がありました。大学院生やクリエイター、企画や営業に関わる企業にお勤めの方、なかには他の地域で行政に携わっていらっしゃる公務員までいて。本当に幅広くご参加いただけました。そのうち茨城県出身者が半分くらい。残りは県外出身の方で、茨城を「実験の場」として活用したいという強い意欲がある方が多くを占めました。

>>茨城県を実験の場にして、持続可能な地域社会の実現を目指す「if design project」(前回インタビュー記事)

ーー今回はテーマがガラリと変わっています。「農×地域」は農事組合法人宮崎協業、「酒×地域」では明利酒類株式会社、「海×地域」では大洗観光協会との協業になりますが、これはどのような意図があるのでしょうか?

増田さん:ひとつは「茨城県を多面的に見てほしい」から。実は、茨城県は酒造量が関東1位なんです。でも、その事実を知っている人ってほとんどいない。だから、そういうまだあまり知られていない茨城県の魅力を多くの人に知ってもらう機会になればいいなと。もうひとつは「地方創生の観点」から。これってひとつのことを集中的にやっていればできるものではないと思うんですね。いろんな軸から地域を捉えなおし、それをうまく繋いでいく必要がある。だからテーマも様々な軸で地域を見られるものにしました。「農」は地域の産業として、「酒」は産品として、「海」は地域の資源やアクティビティをとおして、それぞれ深掘りしていきたいと考えています。それがきちんとできれば、茨城の地域性が浮き出てくるなと。そのなかで参加者との間にどのような化学反応が起きるのかを期待しています。

 

ーーメンターとして選ばれた3名の方々は、このプロジェクトをどのようにしていきたいと考えていますか?

井本さん:僕は『The CAMPus』というウェブマガジンで、全国の農家さんの考え方や生き方、暮らしの哲学、農業のノウハウなどを配信しています。これは新しい就農者をつくることがいちばんの目的で。農業って儲からないみたいなイメージがあるようで、担い手も不足しているし、高齢化も進んでいる。それはどこの地域もそうで。ただ、「ピンチはチャンス」というか、角度を変えて考えれば宝の山なんです。なかでも茨城ってめちゃくちゃ耕作放棄地があって、しかも車を飛ばせば東京から1時間半くらいでアクセスできる。これってポテンシャルの塊みたいなもんだと思うんですよ。そういう意味で、僕が貢献できることがあるんじゃないかなと考えました。

石川さん:僕、茨城県出身なんですね。ただ、こうやってメンターとして声をかけていただいたときに、「茨城県で何かを育てるには、まずは郷土愛や地元を好きという思いをどう育てられるかも一緒に考えて行かないと難しいのでは?」と率直なところ思ったんです。立地的にも、食的にも、自然的にも、素敵ではあるとは思うのですが、単に「お酒の酒造量が関東一なんです!」なんて言われてもピンとこないじゃないですか。でも、だからこそ挑戦のしがいがあるというか。僕自身、茨城県の魅力を見つけてみたいと思っています。

馬場さん:私は2007年から「平日は東京で暮らし、週末になると南房総に家族で足を運ぶ」という二拠点生活をしていて、2011年からは南房総リパブリックという団体の運営をしています。わたしたちも含め地域に関わる活動をする団体は多いですが、それらの活動が実際地域にどれほどの影響を及ぼしているのか、たまに冷めた目で確認するのも大事かなと思うんですよね。自分たちとしてはすごく特別なことをやっているつもりでも、全国に視野を広げてみると同じようなことをやっている団体はたくさんあるし、自己満足に陥っていることもある。そういうのって中よりも外からアプローチしてみないと気づけないことだったりするんですね。だから、茨城に関係する人だけでなく、さまざまな地域からこのプロジェクトに参加してもらいたいなと思うんです。茨城に深くコミットできれば、自分の暮らす地域が抱えている課題が共通のことなのか、個別のことなのか、その違いが浮き彫りになる気もするんです。そういうものを参加者と一緒に考えていきたいなと思っています。

 

if design project、成功の鍵は「自分事化」

ーーif design projectを継続して続けていくことで、有機的な人の繋がりも構築できそうですね。

増田さん:1期メンバーと2期メンバーが交わる形ができるといいかもしれないですね。ゆるい関係性でもいいので。新しいメンバーに「おもしろそうだな」と思えるようなきっかけづくりができればいいなと思います。

 

ーー茨城県庁では、このプロジェクトの先のことについても考えているのでしょうか?

樋口さん:この「if design project」を通じて茨城県に興味を持ち、さらに移住する人が現れればいいなと考えているのですが、そのためにはきちんと住む場所があって、仕事があってという状況を生み出さなければいけません。現状では1期生のフォローしかできていないのですが、せっかくできた関係性なので大事にしたいと思っています。

増田さん:この手のプロジェクトでその後のフォローまですることってなかなか無いと思うんですよね。普通だったら「あとは自主的にやってください」となることが多いはず。茨城県も基本は自主性を重んじていますが、その自主的な活動に取り組むなら、サポートは惜しまないというスタンス。県の事業としてお墨付きをもらって活動できるのはすごく安心なんじゃないかなと思います。

井本さん:僕は自治体が場所や仕事、お金を準備するのは本当の答えじゃないと思っていて。それよりも「こんなにおもしろいフィールドがあるんだけどどうする?」って考える余地があるだけでいい。「茨城にこんな土地があります。あなたならどうしますか?」と考えさせる機会を多くつくるだけで何かが生まれるんじゃないかなと思う。こんないい場所で、こんなチャンスがあるわけですから。

 

ーー環境を与えることで人も変わっていく、と。

井本さん:学ばせるときって一方通行になりがちなんですよね。教える人が偉い、教わる人が無知みたいになりがちじゃないですか。そうではなく、みんなが同じ目線にいることが大切だと思うんです。そのためには、みんなが高め合える環境が必要なのかなと思います。

石川さん:当事者意識ってやるかやらないかの違いでしかないと思うんですよね。「デザイン思考って何ですか?」と聞かれたときに、「すごく好きな異性と初デートするときって、着ていく服、待ち合わせ場所、食べるものとかを死ぬ気で考えるじゃないですか。それと同じことです」って答えるんですけど、つまりはアイデアの斬新さとかではないってことなんです。本気でやるために思考する。それが仕事になるとノウハウとかステップとか、大事なものが他にあるように勘違いしてしまう。でも、全然そんなことはなくて。今回なら自走するという思いがある人が参加すると思うので、それを誰が本当に持てるのかを僕は見ていきたいなと思います。

馬場さん:自走していくのって一途な想いが本当に大事なんですよね。でも、人って失敗したら終わりだと思うと飛べない。だから、余白があることがすごく大事で。その点、このプロジェクトは実験と呼ぶくらいだからいくら失敗してもいい。だから、どんどん実験を重ねていってほしいなと思います。あとはとにかく続けること。スタートってみんな盛り上がるんですよ。でも、それが5年後には何も残らないと悲しいですよね。だから、ルーティン化したときにどういうふうに動けばいいのかっていうところまでリーチできればと思っています。

 

if design projectを通じて戦友を見つけてほしい

ーー最後になりますが、メンターのお三方は参加者とどういう関係を築いていきたいですか?

井本さん:このプロジェクトに参加したことを誇らしく語れるようなプロフィールづくりをサポートしたいなと思っています。そのためには、これだけは達成できたね、と誇れるものを積み上げていくことが大切。参加者一人一人がそれを実現できたら本望ですね。

馬場さん:私自身はプロジェクト期間よりその後の方が大切だと思ってるんです。だからこそ、この短い期間の中でどれだけ自分の輪郭を形成できるかが重要になるんじゃないかなって。バックグラウンドがまったく異なる人同士が集まって同じ課題に取り組むことになるわけなので、もしかしたら目的や手法のイメージの違いで衝突することもあるかもしれません。でも、それも面白い。そういう付き合い方を経ることでそれぞれの個性が際立つと思うので。

石川さん:すべてが終わった段階で、同じ時間を過ごしてきた人たちと戦友のような関係を築けたら。それだけで人生の宝物になりますよね。そうなるといいし、そのために僕に何ができるかを考えたいと思います。あとは茨城愛の醸成ですよね。ラブ&ヘイトみたいな反発し合う何かがあるといいなとぼんやりと構想しているのですが、自分自身もお酒を通じて学べたら嬉しいですね。

 

ーーありがとうございます。では、増田さんと樋口さんからもひと言ずつお願いします。

増田さん:サービスを単に享受する消費者的な姿勢であれば都会暮らしでもいいと思うのですが、地方ではサービス提供者側、生産者側に回れるチャンスがたくさんあると思っていて、そこが地方で暮らす・働くおもしろさだと思っています。東京圏からもアクセスの良い茨城県という地で、創造性を発揮して、さまざまな実験をしてほしいです。

樋口さん:私自身は「地方で働く人ってカッコいいよね」となる時代が来ればいいなと思っています。そうなるために、まずはこの「if design project」に興味を持つ人が増えることを期待しています。とにかく熱意だけは負けないという人からの応募をお待ちしています。


<Event Information>
If design project第二期の特別説明会を実施します。インタビューにも参加いただいた茨城県庁、リビタの運営メンバーに加え、第一期参加メンバーも交えて、if design projectにかける思いや目的、その可能性をシェアする会になっています。少しでも興味を持たれた方は是非ご参加ください!

『地方でプロジェクトを立ち上げよう!if design project 特別説明会』
・日時:2019年7月25日(木) 19:00スタート/ 21:15終了予定
・会場:the C(神田駅より徒歩7分)
・申込:イベントFacebookページより参加予約をお願いします


 

PROFILE

茨城県庁

東京から近いうえに自然が豊かで,住宅敷地面積が全国第1位など暮らしやすい。太平洋に面しており国内最高峰のサーフィン大会が開催されるなどマリンスポーツを楽しめたり、山・湖や歴史的・文化的資産を楽しめる全長約180kmのサイクリングコースが整備されたりするなどスポーツも盛ん。最近では「活力があり,県民が日本一幸せな県」を基本理念に“人財”育成やIoT・AIを取り入れた新産業の育成などに力を入れている。

PROFILE

株式会社リビタ

「くらし、⽣活をリノベーションする」をコンセプトに、既存建物の改修・再⽣を手がける会社として設⽴。「次の不動産の常識をつくり続ける」を経営ビジョンに掲げ、一棟、一⼾単位のマンションや⼾建てのリノベーション分譲事業やリノベーションコンサルティング事業、シェア型賃貸住宅や商業施設、公共施設、シェアスペースの企画・運営、PM・サブリース事業、ホテル事業を手がけています。 近年では、東京内神田のシェア型複合施設「the C」を地方自治体の移住相談窓口や東京事務所として活用したり、大人の部活がうまれる街のシェアスペース「BUKATSUDO」で展開する講座・部活等のコンテンツを通した地方との関係人口創出など、地方と連携した事業展開も多くなっています。また、日野市多摩平の森産業連携センター「PlanT」では、市⺠が地域のものづくり企業の⼯場へ実際に⾜を運び、⾒て学ぶ経験(⼯場⾒学)、そしてワークショップを通して製品に自ら触れる機会(ものづくりワークショップ)やアイデアソン(メーカーズキャラバン)を実施し、参加者と企業が、技術やサービスの新たな活用法を考えていくプロジェクトを展開。リビタがこれまで様々な場で蓄積してきた「コンテンツ企画・運営」「集客・プロモーション企画」「コミュニケーションマネジメント」等のノウハウを活かしながら、地域の場を基点に、街やその地域のプレイヤーと連携し、地域活性化、関係人口創出へとつなげていく事業を展開しています。 

PROFILE

井本喜久

一般社団法人 The CAMPus 代表理事 株式会社The CAMPus BASE 代表取締役、ブランディングプロデューサー。2016年、新宿駅屋上で地域と都市を繋ぐマルシェThe CAMPusを開催し延べ10万人を動員。2017年「世界を農でオモシロくする」をテーマにインターネット農学校 The CAMPusを開校。約60名の凄腕農家さんを教授陣に迎え、農的暮らしのオモシロさをワンコインの有料ウェブマガジンとして配信中。2018年(株)The CAMPus BASEを設立。全国の様々な地域で限界集落や耕作放棄地や未活用の施設などを再生するプロジェクトをプロデュース中。

PROFILE

石川俊祐

AnyProjects inc共同創業者/パートナー。1977年生まれ。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズを卒業後、英国AZUMIスタジオ、パナソニックデザイン、PDDイノベーションUK等を経て、IDEO Tokyoの立ち上げに参画し、デザインディレクターとして多様なプロジェクトを担った。2017年、AnyProjectsを設立すると、2018年にはBCGデジタルベンチャーズに参画。Head of Designとして大企業の社内ベンチャー立ち上げ等のプロジェクトに携わった。そして2019年3月、新たなパートナーも加えAnyProjectsでの活動にドライブをかけている。著書に『HELLO, DESIGN 日本人とデザイン』(幻冬舎刊)がある。

PROFILE

馬場未織

1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日は東京、週末は南房総」という二地域居住を家族で実践。2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らと任意団体南房総リパブリックを設立。2012年に法人化。里山学校、空き公共施設活用事業、二地域居住トライアルシェアハウス運営などの事業を手がける。著書に『週末は田舎暮らし』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』(学芸出版社)など。

CREDIT

Interviewee:Satomi Higuchi (Ibaraki prefecture)
Interviewee:Atom Masuda (ReBITA)
Interviewee:Yoshihisa Imoto(The CAMPus)
Interviewee:Shunsuke Ishikawa(Anyprojects)
Interviewee:Miori Baba(minamiboso-republic)

Editor / Writer / Interviewer:Kodai Murakami
Photographer:Keta Tamamura

Producer / Account Executive:Yuki Yoshida (BAUS)

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