MENU

クリエイターのためのクレジット・データベース

MENU
CLOSE © COPYRIGHT BAUS, ALL RIGHTS RESERVED

「革命の予感」、最善の一手はナンだ?

明石ガクト(ONE MEDIA) × 大堀航(PR Table)

世の中にアクションを起こしたいと本気で思う人ほど、限界を決めず、負荷をかけ続けられるものだ。「産業を変えたい」「新しい産業を作りたい」。「ONE MEDIA」代表の明石ガクトさん(写真・左)と「PR Table」代表の大堀航さん(同・右)、ふたりに共通するのはこの情熱にあった。旧知の仲ということもあり、インタビュー中は終始、和やかな雰囲気。しかし時折、会話の内容、そのやりとりにハッとされられる。聞けば両社とも、思い描く未来のために大型の資金調達も実施済み。戦うフィールドは違えども、最善の一手を画策するふたりに、自らに課したミッション、その想いを聞いた。

ーー自社の強みはどんなところにありますか? 実際に手がけているプロジェクトを例に、お聞かせください。

明石さん(ONE MEDIA):いまって個人が持っているモバイルデバイスの数、言い換えると動画を見るためのスクリーンの数が人間の歴史上最も多い時代。そういう中でコンテンツやメディアのあり方って、かつてないほどの変革期にあると思っています。つまり、既存の枠組みに捉われていては勝負にならない。動画元年とか動画ブーム中とか、そういうことではなく、作り手として視聴者の人生や世界観を揺さぶるような体験を提供したいって心の底から思っていて。その根底にはこれから従来のテレビ中心の映像産業とは違う、新しい動画産業というものが生まれる確信がある。そういう中で、ONE MEDIAはFacebookやTwitter、LINEに動画コンテンツを配信しているんだけど、最近ではショートフィルムを自社で製作して映画館で上映したりもしています。

大堀さん(PR Table):ガクトさんの視点、いつも刺激になります。動画メディアがオリジナルショートフィルムを自社製作しちゃうとか、背負っている覚悟を感じます。「産業を変えたい」「新しい産業を作りたい」っていう意味では、PR Tableも同じようなパッションを持っていて。ONE MEDIAが動画産業とするならば、僕らの場合はPR産業。旧来の考え方では企業視点のパブリック・リレーションズって自社のニュースをメディアに配信し、効率よく届けることに主眼が置かれていたんですね。そこから“戦略PR”の時代へ。PRによって消費者に気づきを与え、買う理由を生みだして“空気をつくる”アプローチなんですが、メディアを通したプロモーションは言うに及ばず、新たなテクノロジーの登場によって企業活動のあり方が大きく変わろうとしている現在、この考え方も主流とはいえなくなって。では、どうすればPR業界に風穴を開けられるか。こんな問題意識をもち、PR Tableの創業に至ったんです。PRの可能性ってまだまだ拡張できるはずなんです!

明石さん(ONE MEDIA):パブリックなものと企業との繋がりを“新しい視点”で作っていきたかったってことだよね?

大堀さん(PR Table):そう、そのとおりです。ニュースやプレスリリースにならないような企業情報をストーリーによって発信する文化をつくってこそ、小手先ではない本質的なパブリック・リレーションズになるという予感があって。これまでと異なる角度からアプローチするにはどうすべきか。こんな視点に立ち、試行錯誤の末にたどり着いたのが、企業に眠っている“ちょっといい話”を掘り起こして伝えるストーリーテリングサービスでした。言葉を変えるなら、企業のエモーショナルな部分を言語化し、ストーリーにすること。僕らPR Tableに強みがあるとすれば、“あまり知られてないけど良い会社”と深くコミットすることで、会社と顧客、会社とメディア、会社と求職者など、さまざまな出会いの質を向上させる仕組みづくりだと思います。

明石さん(ONE MEDIA):社員数や売上規模といった定量情報や、メディアによる第三者評価だけだと、ミスマッチが起こる可能性って大いにあり得るよね。PR Tableに掲載されている企業のストーリーを読んでみると、名前だけは知ってたけど実はこういう会社だったんだ!って驚きがたくさんある。

大堀さん(PR Table):ガクトさんたちONE MEDIAがいま、動き、実践している根っこの部分にこそ、ひとりひとりの視聴者とのエモーショナルな繋がりを感じます。

明石さん(ONE MEDIA):会社のタグラインに「あなたの1日、人生、そして世界観を揺さぶるような体験を。」っていうメッセージを書いてるんだけれど、これはいわば、ONE MEDIAと視聴者との間にある約束事。いまの世の中って、とくに僕らのようなスタートアップって何かと定量的な数字でものを語られがちじゃない? 例えばPV数とか再生回数、つまり数字も大切ではあるけど、こういうものよりもっと単純に大事なことがあると思っていて。PR Tableにも同じような心意気を感じるんだけど、数字だけじゃ推し量れないエンゲージメント、その高さが伴って人の心を揺さぶるような体験がある。ただ数字だけを売るんじゃないと。僕らが視聴者に約束している「世界観が変わる」という体験にのせてクライアントを紹介するのが僕らのビジネスだと定義していて。

大堀さん(PR Table):つまり、覚悟ですよね。ちゃんと向き合う覚悟。会社を作って3年半、日々経営者や社員の皆さん、さまざまな領域の方たちと会い、話を聞くにつけ、そう思います。会社のビジョンやサービスの開発秘話・背景、会社に関わっている個人の思いなど、どうやったらエモーショナルな部分を引きだし、ストーリーテリングできるか。僕らスタートアップには強い信念をもち、足を使って動き続ける“泥臭さ”が大切ですね。

明石さん(ONE MEDIA):PR TableとONE MEDIAの共通点は、泥臭さだね(笑)

ーーONE MEDIAとPR Table、両社ともに大型の資金調達を実施し、順調に次のステップに進んでいる印象を受けます。実際のところは?

明石さん(ONE MEDIA):大堀さんは知っていると思うけれど、4年半ぐらいの歴史の中で、僕らは3回もメディア名を変更していて。Spotwright、WHITE MEDIAを経て、ONE MEDIAへ。これってたぶん、メディア的には普通じゃない。それだけ迷走していた期間が長かったと言い換えられるかもしれない。

大堀さん(PR Table):僕らの場合は3人でスタート。同じように苦労した時期があります。当初は営業に行っても、新参者として相手にしてもらえないことも多々。「御社のまだ言語化できていないエモーショナルな部分を見つけ、ストーリーテリングさせてください!」ってお話しても、前例のない手法ゆえ、なかなか手を挙げてもらうことができませんでした。パブリック・リレーションズの本質とは何か。自分たちが思い描くPRのあるべき姿やビジョンを暑苦しいほどに語る日々でした。金銭的に大変な時期も短くなかったんです、じつは。でも諦めない(笑)

明石さん(ONE MEDIA):僕らも最初の2~3年は試行錯誤の連続。いろいろやって、いろいろ失敗して、考えて、また失敗して。ONE MEDIAを立ち上げた時のプレスリリースにも書いたけど、「女子ウケする動画にテーマを絞ったほうがいいのかな?」とか「テクノロジーの最前線を追いかけるメディアにしたほうがいいのかな?」とか、自問自答を繰り返していて。動画市場が盛り上がりをみせる中、もがき続けていたんだよね。自分たちがやりたいこと、やるべきミッションについて真摯に向き合っていたつもりだったけど、簡単に言語化できるほど、甘くはなかった。寝てる時間以外はずっと、自分たちの会社のこと、動画メディアのあるべき姿について考えてたなぁ。今だから言えるけど、当時は自分自身、ポジショントークが多かった気がする。甘かった。

大堀さん(PR Table):ターニングポイントになったことはあったんですか?

明石さん(ONE MEDIA):「1万時間の法則」っていう言葉があるじゃない? スタートアップが丸3年、健康的に寝たり食べたりしながら他の時間全てを仕事に捧げると大体1万時間なんだけど。ちょうどその頃に、動画の本質みたいなものが見えはじめて。創業期からやってるメンバーが全員、それに気づいたというか。そこで、僕らが行き着いた結論が、ONE MEDIAは時代の要請に応える動画を作る会社にしよう。そして、そのための実験場であろうっていう。

大堀さん(PR Table):僕らPR Tableが創業したのって、ガクトさんのところと同じ年じゃないですか。1万時間の法則、なんというか分かる気がします。当初から“ちょっといい話”を掘り起こして伝えるストーリーテリングサービスっていうコンセプトは変わってないんですが、取材のフォーマットづくりとか裏側をつくる工程とか、言語化するメソッドづくりとか、創業した3人で研鑽を積み、来るべき日に備えていたんです。同じように3年経ったぐらいから、僕らがやろうとしていることに共感し、応援してくれる会社や組織がグンと増えた実感はあります。PR Tableの活動そのものを“見える化”したのも良かった。自分たちのことを応援してくれる人たちに向け、自分たちの存在を忘れられないよう、自社の出来事を見つけて日々発信。とにかくコミュニケーションを取り続けるっていう。地道な活動って大切ですよね。今も変わらず、そう思ってます。

明石さん(ONE MEDIA):自分たちの限界を決めずに負荷をかけ続ける姿勢って、とくにスタートアップには大切なマインドな気がする。1万時間という数字に明確な根拠はないけどさ。

大堀さん(PR Table):あとは未来に対する予感ですね。自分たちの想いを信じ抜くっていう。誰に言われたわけでもなく、好きでこの仕事をしているわけで。初心変わらず、「業界に風穴を開けたい」「産業を変えたい」って本気で思ってますもん。

明石さん(ONE MEDIA):同じく。

ーー最後にそれぞれ、これから実現したいことをお聞かせください。

明石さん(ONE MEDIA):これからの時代に新しい動画産業をつくる人間になりたい。ONE MEDIAが先頭に立って、それを実現していく。もっといえば「動画産業革命」って僕が呼んでる計画があるんだけど2020年までにそれを成し遂げたい。そのためにただのモバイル動画メディアでいいのかと考えると、そうじゃないだろうと。動画産業を作る会社だとしたら、モバイルだけじゃないところに動画を出さないといけない。だから、2018年4月から山手線での動画コンテンツ配信も開始した。

大堀さん(PR Table):産業を背負うからこそですよね。

明石さん(ONE MEDIA):モバイル以外の動画を流す面はこれからどんどん増えていくと思うけど、今度はそこに流す動画コンテンツをONE MEDIAだけでちんたら作っていていいのか?そうじゃないだろうと。新しい時代の動画クリエイターをもっとたくさん育てるべきだし、そのためには日本最大の動画スタジオを作らないといけない。

大堀さん(PR Table):PR Tableも大きな野望をもってます。引き続き、ストーリーテリングという新しい領域を開拓しつつ、会社と社会の関係性をより良くするため、探究と実践を繰り返していきます。日本全国にある“あまり知られてないけど良い会社”、そんな中小企業のための日本一のプラットフォームを目指します。他方、「PR Table Community」というコミュニティづくりにも尽力していきます。僕らの力でPR業界に革命を起こします。

明石さん(ONE MEDIA):アツいね、素晴らしい。大堀君はPRに対してめっちゃ、愛がある。愛があるゆえに、今のPR業界に対して憎しみも持っている気がするな。

大堀さん(PR Table):ガクトさんも同じだと思いますよ(笑)。映像が好きだからこそ、今の映像業界に対して言いたいことがたくさんあるっていう。愛ゆえの憎しみ……僕らの共通点ですね。

明石さん(ONE MEDIA):愛ゆえの憎しみ(笑)

大堀さん(PR Table):「2020 TOKYO」以降は、日本企業が海外にも情報発信できるような仕組みも作りたいと思っています。ストーリーのあるエモーショナルな会社は、世界で通用するはずですから。その時はONE MEDIAもよろしくお願いします!

明石さん(ONE MEDIA):もちろん!

PROFILE

ONE MEDIA

2014年創業。独自のヴィジュアルストーリーテリングで、伝えたいメッセージを動画コンテンツ化。動画ディストリビューション・視聴データの分析、クリエイティブの企画から製作、その全てを自社で一貫して行い、毎日、独自の価値観をもつ動画コンテンツを届けている。

PROFILE

PR Table

2014年創業。日本全国の会社・団体のストーリーが集まるプラットフォーム「PR Table」を運営。企業に埋もれている“ストーリー”を伝えることで、企業ブランディングや採用広報、社内広報、IRなどを支援中。メディアでの情報発信にとどまらず、中小規模のイベント、日本初のPRの大規模カンファレンスも実施予定。

写真・上澤友香 編集/文・紺谷宏之

関連記事

  1. BAUS Monthly Page View Top5 #2019.12
    BAUSクレジット アクセスランキング

    READ MORE
  2. ノイズこそが表現を強くする。博報堂アイ・スタジオの人の心に「ひっかかる」デジタルクリエイティブのつくり方

    READ MORE
  3. デザインの力で「医療」の課題にアプローチ

    READ MORE