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「死ぬまでに中村洋基に聞いてみたいこと」聴くBAUS #1

結成から現在の悩みまで。知られざるPARTYの生々しいチーム論。

2018年5月下旬。渋谷区代々木上原。
「てか、何ですか。この明るいラジオブースは! 今まで見たことないんですけど(笑)」開口一番、PARTY・中村洋基さんは驚嘆の一声をあげた。クリエイティブ業界で最もラジオを知り尽くした男に、「見たことがない」と言わしめたのは、BAUSが入るコレクティブスペース「村世界」内に完成したばかりの新設ラジオブース。光り輝く真っ白なブースで中村さんと向かい合っているのは、BAUS編集長の横石崇と、村世界の加藤晃央だ。
そう。この日は、BAUSが手がけるミニFM番組「聴くBAUS」の記念すべき初回収録日。豪華ゲストを迎えて配信された初回放送は、公共の電波にはのせられないぶっちゃけ話が飛び交うディープな45分となった。今回は、誌面に公開できる部分だけをピックアップして皆さんにご紹介しよう。

横石:時刻は18時半を回りました。お聞きの皆さん、こんばんは。BAUS編集長の横石です。

加藤:こんばんは、モーフィングの加藤です。

横石:BAUSは、加藤さん率いる株式会社モーフィングの運営するクリエイターのためのプラットフォームですが、今日はBAUSマガジン編集長の横石がパーソナリティーとしてお届けしたいと思います。さて、この番組は、BAUSが入居している「村世界」を拠点に始まった「FM SON」の開局記念番組の一つとしてお届けしていくわけですが、まずこの「FM SON」というラジオ局はどういう経緯で始まったか教えてもらってもいいですか?

加藤:そうですね。ここが「村世界」という、クリエイターが集まるコレクティブスペースになっていまして、「今日はこんな人が来てます」みたいなことを村内放送として電波にのせて紹介していくことができたら楽しそうだね、というところからスタートしました。

横石:村内放送と言いましたが、この番組は村世界の中だけでしか聞けないんですよね?

加藤:はい。公共の電波を使ってラジオを配信するには法律の問題などがありまして。「FM SON」は、ミニFMという、オフィス内とその界隈だけで聞ける微弱な電波を使って放送しているわけなんです。

 

「死ぬまでに中村洋基に聞いてみたいこと」

横石:そんなわけで、代々木上原にある村世界のスタジオから89.2MHzでお届けしていきます。番組の時間が45分しかありませんので、早速、記念すべき初回ゲストのご紹介に移りましょう。クリエイティブ集団PARTYのクリエイティブディレクター中村洋基さんです!

中村さん:こんばんは〜。PARTYの中村です。

横石:中村さんはPARTY以外にも、VALUの取締役、電通デジタル顧問、それから表参道にあるTINTO COFFEEのオーナーまで、幅広く活動されているんですよね。

中村さん:いやー、広さばかりになってないか恐縮です。

横石:今日はですね、そんな中村さんに「死ぬまでに中村洋基に聞いてみたいこと」というタイトルで、時間が許す限り、色々伺っていこうかなと思っています。さて、BAUSがチームを作るためのメディアということもございますので、自己紹介がてら、なぜ電通をやめてPARTYという会社を作られたのかをお聞きしてもよろしいでしょうか?

中村さん:そうですね。電通で9年くらい働いてからPARTYを作ったんですけど、やめた理由の一番としては、すごい飢餓感みたいなのがあったんですね。僕は、このラジオみたいに、新しいコミュニティを作るための仕組みを作るのが好きなんですよ。コミュニティが大きくなった先に、事業があるわけじゃないですか。でも、巨大代理店の一平社員としては、そのやり方がわからなかった。仕組みをつくっても、あくまでも、広告キャンペーンの中で終わってしまうことにもどかしさを感じてたんです。そろそろ年齢的にも部長とかになっちゃうけど、全然実感わかないなーっていう時期に、現代表の伊藤直樹が、再三電話をかけてくれてきてまして。

横石:え、伊藤さんは電通ですらないですよね。

中村さん:違う会社ですよ。伊藤はWieden+Kennedy Tokyoという会社にいて、競合なので普通はあんまり連絡してこないんですけど。時々電話がきて、出ると最初返事がないんですよ。ずーとガサガサガサ言ってて。昔の「Q2ダイヤル」みたいな。

一同:(笑)

中村さん:今の人は知らないですよね、Q2ダイヤルなんて(笑)。で、しばらくすると、「ヒロキくん? ヒロキくん? まだやめないの? 早くやめようよ」みたいな。当時は、デジタル広告クリエイティブの分野がすごく進んでいる時で、「競合だけど、こいつスゴいぞ」ってお互いリスペクトしていて、世界レベルで活躍している人間たちが、一斉にやめて一緒に新しいことを始めるっていう企みを伊藤が持っていたんですね。これは乗らないわけにはいかないなと思いまして。

 

PARTYを作って気付いた、チームづくりの難しさ

加藤:ちなみに、チームっていうワードで言うと、プロジェクト毎のチームもありますけど、PARTYさんつくる時って一蓮托生というか、新しい仲間としてのチームじゃないですか。それって、元々お互いのことを知っていて始めたんですか?

中村さん:いえいえ。競合なので、ほとんど一緒に仕事したことないわけですよ。唯一、清水幹太だけ、全員と仕事してたんですけど。なので、チームワークがうまくいくかはわからなかった。電通にいた時は、一匹オオカミで背中見せて頑張ってれば良かったので、まさか会社をつくってメンバーをマネジメントするなんてことは微塵も思っていなかったわけですよ。今、30人くらいの規模になったんですけど、チームづくりとか、会社のマネジメントをうまくやりくりするのがこんなに難しいのかということにやっと気づいたんです。

横石:クリエイターって、自分のつくりたいって思った作品をつくりたがったりとか、個人商店になりやすいっていう悩みがあると思うんですよね。

中村さん:そうそう。PARTYも加藤さんのCEKAIもそうですけど、何かの事業というよりは、人の才能で稼いでるわけじゃないですか。そうなると、ルーティンワークが無くなるんですよね。PARTYの社是が、「新しい人と新しいものを作ろう」っていう、新しいこと以外やっちゃいけないんですけど(笑)。でも、実は、ルーティンワークって大事なんです。人ってそんなに新しいことばっかりやってるとさすがに精神的にもしんどいんですよね。

横石:常に新しいことばっかりやってると、クリエイティビティは湧くんでしょうけど、その反動もあるんですね。

中村さん:だから、僕が今ちょっと興味があるのは、クリエイティブディレクションの効率化や標準化が出来ないかってことなんです。皆さん知ってると思うんですけど、ディズニー/ピクサーのジョン・ラセターっていう人がいるじゃないですか。最近のディズニー/ピクサーの映画は、全部大ヒット、全部面白いですよね。しかも、各監督は違ってるんです。アニメでいうと、ジブリはやっぱり宮崎駿さんっていう個のタレントの側面が強い。一方、ピクサーはブレイントラスト会議っていう、会議体で話し合ってみんなで映画を作成していくんですよ。実際、「はじめはどの映画も全然つまらなかった」ってみんな言うんですよね。それが、会議でもっとこうした方がいいんじゃないかってことを言いまくって、監督が切羽詰まりながら、ブラッシュアップして、また文句言われてっていうプロセスを繰り返すと大体失敗しなくなったと。あれも、クリエイティブを標準化できているシステムの一端ですよね。

横石:へえー、PARTYは、ピクサーにインスパイアを受けていたりするんですね。

中村さん:そうですね。やっぱり個のタレントは大事なんだけど、30人くらいの規模だと、内部だけで完結することってほぼないんですよね。外部の人も入れてつくる時とかは、特にチームの大事さを痛感しますね。

横石:普段、PARTYにまつわる話って雑誌などでも見かけますけど、こうやって肉声から聞く話は初めてでリアリティがあって面白いですね。

加藤:生々しいですね。

 

PARTYが仕掛ける、クリエイティブの新たな指標

横石:さて、これまではPARTYのお話を中心に伺ってきました。中村さんは、PARTY以外でも色々と活動されていますが、最近、ハマっていることを教えていただいてもいいでしょうか?

中村さん:えー、仕事の話になっちゃうんですけど、この前、VALUというサービスをつくりまして。

横石:「自分株式会社の株をもっちゃおう」みたいなノリのマーケットプラットフォームですよね。

中村さん:そうそう。VALUは有価証券ではないのですが、イメージとしてはそれに近いです。株式という資本主義のしくみが、すごく面白いと思っています。何か社会に対してやりたいことがある企業やソリューションに、みんなが寄付じゃなくて出資することで、その企業の健全なフォロワーになる、ということじゃないですか。これ、もっと簡単に、人に対してできるんじゃないか? というのが発想のもとです。PARTYの仕事としても、広告キャンペーンから、事業を一緒にやろう、というものに変わってきています。

横石:いわゆるクリエイティブの会社だと案件の受発注の関係で済むことが多いんですけど、そこから外れていってますね。

中村さん:広告クリエイティブ業界って賞を取ることが目的の人が多いわけですよ。それが唯一の評価軸だったので。でも、PARTYではここ2、3年、新しく事業のタネをつくれないか、もしくはクライアントと協業して自分たちの価値を出したい、とずーっと考えながら実践しています。洗脳が解けたような気持ちです。

横石:面白いですね。クリエイティブの物差しが、アワードとか賞ものだったところに、PARTYは新たに指標をつくることで広がりを持たそうっていう試みなんですね。

 

新たなる挑戦。2,000時間コミットすれば…

中村さん:そうなんです。あと、全然関係ないんですが、個人的にハマってることでいうと、最近バイオリンを始めました。

横石:ちょっと待ってくださいよ(笑)。どういうことですか?

中村さん:2,000時間と10,000時間の法則というものがありまして。武井壮さんに教えてもらったんですが。2,000時間、あることに真摯に従事するとその分野でだいたい一人前になれる。で、各業界の天才と言われている人は、だいたい10,000時間以上、その分野に従事している。めっちゃ面白いなと思って。実際、自分が広告にどれくらい時間かけたかを考えると、だいたい一日8時間広告をやってたから……。一年で1,900時間。もう16年やっているので…10,000時間をぜんぜん超えてますね。ある程度真理なんだろうなと。バイオリンは、高校の時にちょっとぐらいやってたんですけど、ちゃんと習うことが出来なくて悔しかったんですね。丁度、子供が始めるって言うので、これはいいタイミングだなと。 さすがに、10,000時間は大変なんですけど、2,000間なら、たとえば一日5時間コミットできれば、2年で終わっちゃうんですよ。そんな時間ないですけど(笑)

加藤:ちなみに、今は10,000時間の中でどれくらいのイメージなんですか?

中村さん:小学4年生の子に負けてますね。

横石:それ全然仕事と関係ないですよね。

中村さん:全く関係ないです(笑)。何でも、やりたがりなんですよね。

横石:いやー、まだまだお話を聞きたいところですが、お時間でございます。

中村さん:え、もう終わりですか!?

加藤:早いですね。ラジオはイベントとはまた違って、ここでしか聞けない感じがあってまた面白いですね。

中村さん:僕は東京FMで「澤本・権八のすぐに終わりますから。」ってラジオ番組をやっているんだけど、ラジオ楽しいんですよ。これからもぜひ続けていってください。

横石:がんばります!本日は中村洋基さんの生々しい話に迫ってみました。ありがとうございました。89.2MHzで、代々木上原・村世界スタジオからお届けしました。また皆さんのお耳にかかれればと思います。さようなら。

 

PROFILE

中村洋基

PARTYクリエイティブディレクター。1979年生まれ。株式会社電通を経て、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。代表作に、「SLAM DUNK 10 days after」、トヨタ「TOYOTOWN」など。プログラミングや、データが持つ面白さと、SNSなどのコミュニケーションを利用したアイデアを組み合わせてつくる、新しいエンターテイメントを模索中。PARTY外でも、株式会社電通デジタル社外顧問、株式会社FIREBUG社外取締役、株式会社VALU取締役として精力的に活動している。

PROFILE

加藤晃央

株式会社モーフィング代表取締役、世界株式会社共同代表、BAUS発起人。2006年、武蔵野美術大学4年生時にモーフィングを設立。2013年には同世代のフリーランス化や独立起業の流れを感じ、個が集結できる場所としてクリエイティブアソシエーションCEKAIを設立。2017年にクリエイティブプラットフォーム「BAUS」を立ち上げる。

PROFILE

横石崇

&Co.,Ltd 代表取締役。1978年生まれ。多摩美術大学卒。TUGBOATグループにて役員を歴任後、人材紹介会社の役員を経て、2016年に&Co.Ltd設立。メディア開発や事業コンサルティング、クリエイティブプロデュースをはじめ、人材教育ワークショップやイベントなど、企業の内と外において”場の編集”を手法に、様々なプロジェクトを手掛ける。のべ2万人が熱狂した「Tokyo Work Design Week」オーガナイザーをはじめ、「BAUS MAGAZINE」の編集長、『WIRED』日本版コントリビューター、「六本木未来大学」アフタークラス講師などを務める。編著本に「これからの僕らの働き方~次世代のスタンダードを創る10人に聞く~」(早川書房)がある。

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