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トップクリエイターたちが語る、「これからのストーリーの伝え方」

「CODE Digital Creative Academy Vol.2」イベントレポート

デジタルを介した秀逸なマーケティングコミュニケーション施策を生み出したチームを称える広告賞「コードアワード」が、派生イベントとして「CODE Digital Creative Academy」を開催した。同イベントは、国内外の最新トレンドや事例、業界の先端をいくトップクリエイターによる対談など、業界の今と未来についての考えを共有する場として開かれている。今回編集部は、2018年2月9日にD2Cホールで開催された第二回を潜入取材。ゲストスピーカーに電通 CDC / Dentsu Lab Tokyoの越智一仁さん、TBWA HAKUHODO / chocolate inc. / Buzz Machineの栗林和明さんとCEKAIの井口皓太、モデレーターには& Co.,Ltdの横石崇が顔を揃えた。「デジタル時代のストーリーテリング 〜共感を生む物語の創り方とは?〜」をテーマに、近年話題になった動画や今注目の動画を見ながら、3人が考える“伝わる”動画や、マーケティングコミュニケーションについて率直に語り合った。

現在も模索中?! 3人がこれまでに培ってきた、ストーリーテリングの流儀とは

横石さん(& Co.,Ltd):YouTubeにアップロードされる動画は個人が7割を占め、企業は1~2割だと聞きます。その中で話題や関心を引くことは容易いことではありません。今回は、さまざまな企業の動画を手がけ、各所で話題の映像を生み出し続けている3名のクリエイターにお越しいただきました。そこで、まずはみなさんが大事にしているストーリーテリングについてお聞きしていこうと思います。みなさんは何を大事にしてストーリーをつくっているのでしょうか。

越智さん(CDC / Dentsu Lab Tokyo):いろんな要素がありますが、まずはものごとへの光の当て方ですね。一見売るのが難しそうなものも、光の当て方次第では充分売れると思います。例えば僕の地元の小林市のPRのために作ったムービーがあるんですが、これは“小林市の方言をフランス語のように聞かせる”という切り口で作りました。もちろんそれだけではないんですが、それが鍵になりました。

宮崎県小林市 移住促進PRムービー “ンダモシタン小林

 

越智さん:あと最近は、リアリティを追求したものや、シンプルなコンテンツが増加しているので、ドキュメンタリー化とデリバリー化、この点が鍵だと思っています。一言で、短く、心に刺さるようなものが求められていますね。基本的に人の心に刺さるものって「大共感」と「大驚嘆」の組み合わせなんですが、それを動画コミュニケーションに置き換えると、これは一例として、次の10項目が挙げられると思うんです。先ほどの『ンダモシタン小林』だと番と番。あと番も入っているかもしれません。
こういう話を色々と盛り込んでまとめたのが2枚目で、プランニングするときの自分なりのチェックフローになっています。

栗林さん(TBWA HAKUHODO / chocolate inc. / Buzz Machine:僕が作った中で一番再生された動画がこれなんですが、制作費は折れた椅子代くらいしかかかってないにも関わらず、過去最大の3600万回再生くらいいって。アイデアさえあれば3600万人に届く動画になる、というところを改めて感じました。

『RISE –世界一激しいイス取りゲーム』

 

実はこの動画には、僕の持てるバズに関する全知見を詰め込みました。そのバズの作り方なんですが、ひたすらいろんな動画を研究した結果をまとめたのが、次の画像です。

栗林さん:世の中に広がっているものの中で、最も共通する要素を集めたのが1枚目。さらにこの要素を紐解いた時に、「話題になるものって媒体ごとに全然違う」ということを整理したのが2枚目。人がシェアする時って、欲求の種類が多種多様。すごく面白いものを作ったら当然流行りますが、大量の競合コンテンツがあるから、抜きん出るのはとても大変なんです。でも王道以外でも勝負できるよね、ということが分かるのが3枚目です。例えば表現欲だと、SNOWのレンズ機能で変な顔をとった動画や、診断メーカーの診断結果など、そこまで面白くなくても、投稿者オリジナルのコンテンツはシェアされやすい。
でもここまでまとめても予想外の広がりや失敗があるので、まだまだバズっていうのは、得体が知れないというのが今の僕なりの結論です。

井口さん(CEKAI):僕は元々グラフィックデザイナーというところから出発しているので、映像やデザインの上では、理由は分からないけれど気持ちいいとか、感覚的に格好良いとか、面白いって思えるような表現を、一番重要視しています。
YouTubeに上がっている動画って、早送りされたり、飛ばされたりするじゃないですか。僕はそれがすごく嫌で、だから、気がついたらいつの間にか5回くらい見ちゃっている、っていうものが好きですね。これは実際には5秒くらいの動画の繰り返しで、音だけが絶えず変化している作品ですが、30分や1時間ずっと見てしまう人もいて。そういった生理的な気持ちよさを追求することが、僕なりのストーリーテリングですかね。

TYMOTE 東京ミッドタウン・デザインハブ「ハブとマングース」展    Chapter6 より

 

横石さん:栗林さんは井口さんと今日初めて会われたかと思いますが、井口さんの作品は先ほどの分析シートのどこに入ると思いますか?

栗林さん:これは、「共振欲」だと思います。なんか気持ちいい、なんか格好いいという、言葉では表現しきれないところを突き詰められていて、僕が一番分析しづらく、悔しいところです。

横石さん:デジタル時代に井口さんの作品がウケているのは、質感のようなものを大事にしながらデジタルの世界に持ち込んでいる、というところだと思っていて、もしかしたらこの栗林さんのシートには、そういった井口らしさみたいなものがまだまだ入りきる余地はあるのかなと感じます。井口さんとしては、実はここを狙っていました、というようなことは考えることありますか。

栗林さん:これはどちらかというと人がシェアする際の行動原理なので、前提として大分違うかもしれませんけれど。

井口さん:でも探っているとか、追求しているっていうのは同じだと思うんですよ。今は割と分かりやすいものでないと受け付けない、という感覚があると思っていて、それに対して僕らが共感というか「逆に良いでしょ?」っていう表現をどうやって作っていくか、ということは考えています。栗林さんの場合は言葉で研究していて、僕は動きやグラフィックで考えているのかなと。

モキュメント、ニッチな文脈、日常感。3人がいま、注目している動画

横石さん:次は、三人が最近気になっているムービーやストーリーテリングについて、それぞれ紹介をしてもらいます。

癒しの石田ゆり子さん 「深夜」篇

 

越智さん:これは特に新しい手法ではないんですが、深夜2時くらいに調べ物をしていたら出てきたんですよ。単純明快ですけれど、僕にとって最も言われたい時に言ってほしい言葉を投げかけてくれて、それがまた石田ゆり子さんっていうのが良い。共感を得るための文脈設計が素晴らしいですよね。バンパーというメディアの使い方も上手です。

栗林さん:朝とか昼も、全部時間別に最適化されたメッセージになっているんですよね、これ。

越智さん:そうなんですよ! 分かる方がどれ位いるか分からないんですけれど、昔、飯島直子さんがジョージアのCMで同じようなことをやっていて。小さい頃見て良いなと思っていたのが、デジタルによってこういった形でリバイバルされたのは盲点でしたね。

Audi Quattro Pub with Candide Thovex Making of(メイキング)

 

越智さん:これは、とにかくスキーでいろんなところを滑っているAudiの動画です。Facebookで相当シェアされていましたよね。

井口さん:これ、本当にやってます?

栗林さん:基本、リアルだと思うんですけど、もしかしたら一部フェイクという可能性もあるんじゃないかと思います。ご担当した方にぜひ聞いてみたいのですが。 フェイクを混ぜていたとしたら、それは「モキュメント」っていう手法なんですけれど、非常にセンスがいい。確か5000万再生くらい、いってたんじゃないかな。

越智さん:メイキングの中にフェイクが入っているかもしれないというのは、心理的に面白い設計だなって思いますね、巧妙で。

横石さん:では次に栗林さんの気になっている動画です。

公式|[ドロンジョとブラック・ジャック 全七話総集編] by パートナーエージェント

 

栗林さん:これは世界の誰もが分かるような普遍性があるものが良い、という考え方とは全く逆で、日本人にしかわからないけれど、日本人には非常に心に刺さるCMです。さっきの石田ゆり子さんもそうですが、最近そういうものが増えていて、特にTwitterでバズる傾向にある。「この文脈分かる!」っていうものがシェアされやすいので、普遍的な文脈以上にニッチな文脈で、全員は分からないものの方がこれからは可能性があると思う。

横石さん:ターゲットの話になったので、越智さんにも聞きたいのですが、ターゲットって絞り込みますか?

越智さん:再生回数って思うと、たくさんの人に広めるということをまずは考えがちですけれど、見る人を想像するのはやはり大事ですよね。友人が競合他社の婚活窓口で働いているんですが、パートナーエージェントのCMを見て婚活を始めたという方が窓口に来るらしいんですよ。市場自体を動かすレベルで、心に響いているってことですよね。

横石さん:どこが響いたのでしょうか。

越智さん:そうですね。話を聞いたら“運命の人は外の世界にいる”というような、見ている人が嫌な感じにならない表現になっているところがポイントらしいです。婚活に対するイメージが良くなったら行きやすくなる、という心理にきちんと寄り添っているところが良くできているなと思います。

横石さん:では最後に。井口さんはどういったものをご紹介いただけますか。

imai – Fly ft. 79, Kaho Nakamura

 

井口さん:これは橋本麦さんが作ったミュージックビデオです。何気ない日常の、お餅がこんな動きしたら可愛いっていう発想からきているらしいんですけれど。実は彼が北海道の祖父母宅に帰った時、つまり休暇中に作った映像なんですね。

コマ撮りと量で勝負している映像ですが、古典的な手法を取ることで、どうやって自分はものづくりに情熱を注ぐかっていうことをきちんとプレゼンテーションしている。しかも、どういう思いで、どういう風に作ったのかっていうことを、しっかりサイト内で見せているところが素晴らしいと思って。

越智さん:僕、全部読みました。この手法は初めてですよね、今まで見たことないです。確か専用のアプリケーションもご自分で作られているんですよね。

井口さん:だから次世代だな、僕らとはまた違うことを考えているのかな、と思います。ただ先ほどのパートナーエージェントの広告といい、誰もが見ても安心して見られる状況ですよね。クリエイティブに明るくなくても分かりやすい。こういう表現に慣れてくると、日常的なモチーフを使いつつも全く違う深いところで勝負したり、まずは一回作ってみたり、というようなことが必要なのかなと思います。

自分ごと化できる、リアルなストーリー作りが鍵に

横石さん:改めてデジタル時代のストーリーテリングについて考えた時、VRやARなど、デバイスも今後どんどん変わると思うんです。だから、CMのような限られた空間と想定できる場所でストーリーを提示していく時代はある種終わっていて、これからはどこでも見られる、非同期なコンテンツを考えなくてはいけないという中で、ストーリーを語るって難しそうだなと思います。

越智さん:マスの時代はストーリーテリングのコピーライティングが中心になっていましたが、それがやがて、コンテンツや、コンテクスト、文脈設計と変化してきました。僕自身、これまでその流れの中でやってきましたが、逆に、そこから今の時代のコピーライティングのあり方に立ち返って考えてみると、この時代に驚きを伴うストーリーテリングが可能になることもあるのかもしれません。

栗林さん:多分、表現だけで人を動かしたり、シェアしてもらったりするのはどんどん難しくなってくるんじゃないかなと思っています。これから僕らは、人の人生を動かしうる可能性のある、商品そのものに介入しなきゃいけない気がしていて。そこで、自分の人生を変えるような体験についてのストーリーをいかに語り継がせて、シェアされるかということがとても重要になってくる。
だからモキュメントって、可能性があると思うんですよね。まずは嘘でもいいから、本当にあるかのように映像上で作って見てもらう。最後に「これは現実にはないですが」とネタバラシした時に、見た人が実際にあったら面白いなと思ってくれたらシェアするので、それで話題になったら本当に作るという流れでというか。

井口さん:そうですよね。僕も、リアルな体験をどう生むかが大切だと思うんですよ。矛盾するようですけれど、オンラインムービーを自分ごとにする。その個人的な体験に落ちるということの一つに、モキュメントという手法があるのかもしれません。
InstagramやVineで、すでにみんな動画を撮っているわけで、グラフィックをコアな表現にすればするほど、共感から離れてしまうじゃないですか。僕らが作品を作り込んだエネルギーや時間が、逆に共感を呼びづらくするんですよね。もっと手軽に、どんどん作品が生まれてくる状況が当たり前の若い世代が、次にどんなカルチャーを起こすのか。僕らが信じたもの、カルチャー、シーン、クリエイティブの面白さってあるはずで、そこがいい風に交わってきたらなと。

横石さん:モントリオールのマルチメディア・プロダクション『Moment Factory』のSakchin Bessetteは、ストーリーテリングの歴史は焚き火で物語を話すことから始まったと語っています。つまりは口承、伝承ですよね。あそこは危ないぞとか、こうやったら釣れたよとか、やっぱり自分ごととして捉えられるような、物語を通じて語り継がれたはずです。火を見ながら話したり歌ったりするようなキャンプファイアーのような場所の作り方はストーリーテリングの延長線上にあって、それがコロッセオや演劇、映画になって、今のテレビ、スマートフォンに繋がっている。(参照ページ
デジタル時代のストーリーテリングとは?と言われても正確に捉えきることは難しいのですが、それはそれで今ここにいる人たちみんなで考えていければいいし、むしろ実践しながら生まれていくことなんじゃないかなと思います。

PROFILE

Dentsu Lab Tokyo

2015年に始動した、クリエーティブの研究・企画・開発までを一体となって行う制作集団。従来の広告制作プロセスから脱却し、“考えながら創り、創りながら考える”ことに特化、提携アーティストやテクノロジストとも協働しながら、広告領域に留まらない分野のクリエーションとソリューションに取り組む。

PROFILE

TBWA HAKUHODO

2006年に博報堂、TBWAワールドワイドのジョイントベンチャーとして設立された総合広告会社。博報堂のフィロソフィーである「生活者発想」「パートナー主義」と、TBWAのメソッドであるディスラプションという新しい視点からアイデアを生み出す独自のノウハウを融合。質の高いソリューションを創造する。

PROFILE

CEKAI

2013年、京都を拠点に設立。会社や所属、肩書きによるフレームを超えた、クリエイターとマネジメント、社会とが真に共存する場をクリエイションしている。グラフィックデザイナーや映像ディレクター、プロダクトデザイナー、プログラマー、ミュージシャンほか、多種多様なクリエイターが在籍。

PROFILE

&Co.,Ltd

2016年に設立。社名は& Companyの略称で、クライアントの想いを実現させるパートナーシップを目指している。多種多様な事業領域において、クリエイティブプロデュースやコンサルティング、ワークショップ・イベントの企画制作等、“場の編集”の手法を元にした、新しい価値を生み出すためのプロジェクトを手掛ける。

写真・佐々木  謙一  文・井上結貴 編集・上野なつみ

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