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あなたの働き方を変えるのは“おせっかいおばさん”

林千晶と横石崇による「不確定な時代のこれからの働き方」潜入イベントレポート!

「働き方の今までとこれから」をテーマに、未来のワークスタイルを構想するイベントシリーズ「GINZA WORKSTYLE LAB」がスタートしました。TOKYO WORK DESIGN WEEK主宰でBAUS MAGAZINE編集長の横石崇をファシリテーターに、毎回さまざまなゲストとトークを繰り広げます。第1回目のゲストは、株式会社ロフトワークの代表取締役、株式会社飛騨の森でクマは踊る代表取締役社長、MITメディアラボ所長補佐など多岐にわたってご活躍されている林千晶さん。おふたりが想像する「これからの時代」とは。

21世紀を形づくる「クリエイティブ」って、なんだ?

ふたりでよくパンケーキを食べて話すという林さんと横石。この日は林さんの仕事を通じて、これからの働き方を探っていきます。

 

横石:ずばり一言でお伺いしたいんですが、ロフトワークっていったいどんな会社なんですか?

林さん:今までその質問に自信満々で答えられたことが一度もありません(笑)。言語化ができないというか。そこで、毎年ロフトワークで合宿をやってるんだけど、今年はみんなで「演じること」をしようと思ってます。テーマは、「はじめまして。ロフトワーカーです」ってことにしていて、ロフトワークのみんなはロフトワークをどう表現するかを演じてもらうことにしました。それくらい、ロフトワークって何をやってるか表現しにくい会社なんです。

横石:ロフトワーカーという人たちは単純に一言で、私はデザインやってますとか、エンジニアやってますとか、誰一人として言い切れないんですね。

 

多種多様な人材が所属する組織・ロフトワーク。その中心にある理念は「21世紀の価値を作りたい」だと林さんは言います。

 

林さん:社会の中に、アップデートできる箇所はたくさんあるのに、「できない」と決めつけているのはもったいない。せっかく変化の時代なんだから、アップデートしたい箇所を認めて、チームを作っていくべきだと思っているんです。

横石:2012年に初めてお会いしたときに林さんが「クリエイティブを解放したい」という言い方をしていたのが印象に残っています。その時から、クリエイティブをアップデートしていくという真意は変わっていないですよね。

林さん:ロフトワークがとらえる“クリエイター”って、デザイナーでもアーティストでもなく、新しい価値を創造していく人のことなんです。

横石:確かに名前や肩書に全然関心がない人ですよね(笑)

 

「デザイン経営宣言」から見る、これからのビジネスのキーワードとは?

林さんがロフトワークを創業した2000年というのは、クリエイティブがビジネスにつながることは想像されにくい時代でした。しかし、今やクリエイティブ産業は花盛り。これからの産業やビジネスは、どのように変化していくのでしょうか。

横石:2018年5月に、経済産業省が「デザイン経営宣言」を提言しました。林さんはその委員の一人だったと思うのですが、これはどういった宣言なのでしょうか。

林さん:誤解を恐れずにいうと、20世紀はエンジニアが作ってきた世界だと言えます。モノやカタチを「エンジニアリング」で作ることが、これまでの経済成長を支えてきたのだとすれば、これからは「体験」を重視する時代になっていくんじゃないでしょうか。人の感情が動く瞬間を見てデザインする、その感覚をもっと経営の中に取り入れていくべきだと思っているんです。

横石:経営においても「体験」がこれからのキーワードになるということですかね。

林さん:この宣言に対しては色んな反応があるんだけど、経営って視点じゃなくても、単純に「デザインって何?」ということが会話にあがるだけで意味があると思っています。話題になったら、誰かが面白い視点を発見して、そこからウイルスのようにアイデアが広がっていくかもしれない。私たちの身体や気持ちは、分析や管理によってスケールできるものではありません。人を見て環境を見て、人の心が動くデザインを生業にしていく人間が、経営陣の中にちゃんと入っていなければいけない、という思いこそが、「デザイン経営宣言」の中に含まれています。

横石:一方では「働き方改革」という経営改革の波もあります。残業をどうするか、時短勤務をどうするか…といった「HOW TO」的な話だったり、エンジニアリング的な思考になりがちですが、僕は、働き方には「どう生きるか」「いい仕事とは何か」という議論が抜けていることを疑問に思っていて、林さんの今の話は、この疑問に応える土台になっているように思います。

続いての話題は、横石が発起人である「TOKYO WORK DESIGN WEEK」について。

林さん:どうしてTOKYO WORK DESIGN WEEKを始めようと思ったんですか?働き方とデザインを掲げていますよね。

横石:経営と働き方のことなんて全く考えていませんでした。友達と飲みながら話している働き方の話題を、ほかの誰かにも聞いてもらいたい、と思ったのが直接のきっかけです。あと、自分の周囲には日本仕事百貨やgreenz.jpなど「新しい働き方」に関する活動をしている人が多かったんです。僕たちは自分の働き方にもっと意思を持てるのではないかと。点と点をつないで線に、そこから面にしようと、TOKYO WORK DESIGN WEEKが発足しました。

 

今年の7月には、鎌倉に複数の会社と共同でつくったコレクティブオフィスをオープンした横石。「働き方の実践」ができる場所として、実験的に始動させたいといいます。

 

ドーナツみたいなコミュニティづくりは、パンケーキを食べながら。

ここで、よくパンケーキを食べに行く間柄だというおふたりから、参加者にパンケーキのお土産が。参加者は、パンケーキを食べながらふたり1組になって、自己紹介と今日ここに来た理由をトークします。まるでお茶をしているかのようなアットホームな雰囲気で、会場の空気は一気に和やかに。参加者の声を交えながら、ふたりのトークはさらにコアな部分へと迫っていきます。

横石:林さんと話をしていて、僕は何度か救われたことがあります。そのうちのひとつがドーナツの話です。「人生とはドーナツみたいなもの。自分は空っぽでもよくて、自分の身の周りにいる人やモノを愛することで、自分のことがよく分かるようになっていく。自分探しっていうより、他人探しだよね」と言われて、僕はすごく気が楽になりました。

林さん:「働く」っていう行為を、自分ひとりの行為だと思っちゃだめだと思うんです。人と人とのあいだにプロジェクトやものごとが生まれる。「働き方」は、人といっしょにデザインしていくものだと思います。

横石:日本のような雇用スタイルだと、閉じられた世界の中で自分たちの世界が出来上がりがちだと思います。特に男性は、自分が所属している組織の外にはなかなか出づらいですよね。コミュニティを拡大するためのヒントってありますか?

林さん:身近に“おせっかいおばさん”を置くこと!

横石:(苦笑)

林さん:私は、自分の能力は人から引き出されるものだと思っています。「飛騨の森でクマは踊る」の設立も、自分では1ミリも想定していなかったことだったけど、「とにかく来て!」という声かけがあったからこそ行動することができました。おせっかいは、想定していなかった自分の能力を引き出してくれるきっかけです。おせっかいは自分拡張できるチャンスなんです。

横石:これからも仲良くして下さい(笑)

 

多様な観点から考える、これからの時代の組織づくり。

続いてのキーワードは、近年盛んに叫ばれるようになった「ダイバーシティ」。クリエイティブ企業ならではのダイバーシティ観とは、どのようなものなのでしょうか。

 

横石:会社とか組織におけるダイバーシティって何だと思いますか?

林さん:「多様性」って、頭だけで理解する言葉であって、ピンと来づらい言葉だから、色々な意味で多用されすぎているような気がします。直近で言うと、ダイバーシティをすごくリアルに感じたのは、100BANCHで開催されていた「異言語ラボ」というチーム。それは耳が聞こえない人や外国人を含めたグループを組んで、異なる言語を使う人たちが知恵を使いあって脱出ゲームをしよう、という試みです。考える力が劣っているわけではないのに、言語が異なっているという理由から、そのプロトコルに入りづらいケースがあるでしょう。異言語ラボのプロジェクトは、そういった状況の存在を気づかせてくれます。
例えば、翻訳機能付きのマイクを使えば、異言語間に生じるギャップを減らすことができますよね。多様性に伴うストレスを軽減するために、テクノロジーを積極的に利用していくことが必要だと思います。

横石:そういえばこないだ林さんに、何のために会社やってるんですか?って聞いたら、「好きな人たちとずっといるため」と真顔で答えていましたよね。いわゆる会社の経営者から出てくる発想ではないです。

林さん:働き方改革の私なりの結論として、哲学者ハンナ・アーレントの「人間は、その誕生によって、創始(initiate)を引き受け、活動へと促される」っていう言葉を掲げたいです。世の中を便利にすることは機械がやるかもしれないけど、ものごとを「始める」という行為は人間にしかできません。時間で管理される作業としての「労働」、便益を求めるものとしての「仕事」があるとしたら、人を巻き込んで自分だけではできないことを創始する「活動」があると考えています。それぞれの「活動」をアップデートしていくことにこそ、意味があるのではないでしょうか。

横石:近代的な価値観から変化する時代で僕たちはどう向き合っていけばいいのでしょうか。この時代において、僕らは何を大事にするべきなのでしょうか。ちなみに僕はもうすぐ40歳になるのですが、好奇心を常にもち続けるのは難しいです。仕事をしていれば毎日は当たり前のように過ぎていき、そこに変化を求めたり変化を起こしていくのはどんどん臆病になります。

林さん:同質性は気持ちいいし、楽だし、早い。だけど、自分の異なる能力を引き出してはくれないと思います。ちょっとマンネリ化してくるっていうか。色々な活動の中で、ストレスになるくらいの異質なものを取り入れて、それをどれだけ受け入れられるか? ということを苦しくても実践しないといけないなって思います。1人の気持ちよさに逃げるより、それぞれが持つドーナッツ状の人間関係をつないでいくことが、これから来る「個」の時代のコミュニティづくりであるように思います。

横石:確信しました。おせっかいおばさんが求められる時代ですね(笑)

PROFILE

林千晶

株式会社ロフトワーク代表取締役
早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは多岐に渡る。グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD」などを運営。MITメディアラボ 所長補佐、グッドデザイン賞審査委員、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」代表取締役社長も務める。

PROFILE

横石崇

&Co.,Ltd 代表取締役。1978年生まれ。多摩美術大学卒。TUGBOATグループにて役員を歴任後、人材紹介会社の役員を経て、2016年に&Co.Ltd設立。メディア開発や事業コンサルティング、クリエイティブプロデュースをはじめ、人材教育ワークショップやイベントなど、企業の内と外において”場の編集”を手法に、様々なプロジェクトを手掛ける。のべ2万人が熱狂した「Tokyo Work Design Week」オーガナイザーをはじめ、「BAUS MAGAZINE」の編集長、『WIRED』日本版コントリビューター、「六本木未来大学」アフタークラス講師などを務める。編著本に「これからの僕らの働き方~次世代のスタンダードを創る10人に聞く~」(早川書房)がある。

写真・石亀広大 文・齋木優城 編集・上野なつみ

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