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三人の外部パートナーに聞く、Qeticの“らしさ”とは? 

Qetic株式会社(宍戸麻美、工藤雄一)× 鈴木健 × 津田昌太朗 × 横山マサト

“時代に口髭を生やすニュースメディア”として、さまざまなエンタメ・カルチャー情報を届けている「Qetic(ケティック)」。この気鋭のWebメディアが誕生したのは2009年4月のこと。まだiPhoneもAndroidも普及していない時代。Webマガジンというもの自体が稀有だった。それから9年の月日の中で、Qeticは媒体としての認知度を大きく広げてきた。その情報感度の高さから、常にウォッチしている人も少なくない。そして、今年の4月に10年の節目を迎えた。その運営母体であるQetic株式会社の屋台骨となっているのが、代表取締役の宍戸麻美さんとアートディレクターの工藤雄一さん。そして、数々のパートナーである。例えば、今回集まってもらった恵比寿にあるライブハウス兼クラブ「EBISU BATICA」の鈴木健さん、シャーロット株式会社の津田昌太朗さん、フォトグラファーの横山マサトさんは、関わり方は異なれど、Qeticを黎明期から支えてきた人たちである。そんな三人の目にはQeticという会社はどのように映っているのだろうか?  それぞれの証言をもとに紐解いていきたい。

EBISU BATICAディレクター鈴木健が語るQetic

「EBISU BATICA」でディレクターを務める鈴木健さん。じつはQeticの元社員でもある。

EBISU BATICA Director 鈴木 健さん Photo by Sakura nakayama

鈴木さん:あるとき、僕が好きだったアーティストのライブがあって、フィーチャリングで女性アーティストが参加していたんですね。それで、あれは誰だろうと思ってインターネットで検索したところ、唯一ヒットしたのがQeticの記事でした。それで「このメディアはすごい!」と思ってアーカイブをさかのぼってみたら、自分の好きな音楽や映画に関わる記事が大量にあって。それで働きたいと思うようになったんです。

ときは2010年。まだ社員募集もしていなかった時期だったので、インターンからのスタートだった。だが、とにかくがむしゃらだった。メディア運営に携わった経験はゼロだったが、宍戸さんの下で取材のノウハウや記事の編集方法を学び、いつしかQeticの中心人物に。後進の育成を任されるまでに成長する。

鈴木さん:それまで知らなかった知識を身につけていくのが楽しかったんですよね。あと一緒に切磋琢磨できる仲間と環境があったことが、自分にとって大きな励みになっていたと思います。

そんな鈴木さんが転職を考えたのは、Qeticに入社して4年が経った頃だった。仕事のキャリアが積み重なるなかで、個人として大成したいという思いが膨らみ、うまく折り合いをつけられなくなっていたという。

鈴木さん:Qeticという看板のおかげでいろんな出会いやチャンスに巡り合えました。知り合いから「Qeticに掲載してほしい」なんて頼まれることも徐々に増えてきて。でも、それは自分の力ではないじゃないですか。そのことに葛藤を覚えるようになったんです。そんなときに、ときどき趣味でイベントを開催していたEBISU BATICAの代表から「ぜひ鈴木くんの力を貸してほしい」と頼まれて。最初は戸惑ったんですけれど、これまでと違う視点で音楽のことを考えるのはアリだなと考えるようになったんです。

こうして鈴木さんはQeticを飛び出した。が、関係は途切れないままだった。そして今では、在籍当時とは違った形でシナジーを生み出すようになっている。Qeticではコンテンツ制作の一環で音楽イベントの企画にも携わるのだが、そのときの相談役が鈴木さんなのだ。「EBISU BATICA」の現場で、たくさんのアーティストとお客さんを見てきているからこそ、わかることがある。鈴木さんは、フィクサー的な仕事を相談されることが多いそうだ。

Photo by kazuma kobayashi

鈴木さん:僕、CIAの工作員みたいな立ち位置だと思っていて(笑)。今ってSNSで検索しても似たり寄ったりの情報しか出てこないじゃないですか。その中で次に来るアーティストは誰かっていうのは、やっぱり現場のことを知ってる人間の方が知っていると思うんです。だから、最近は「こういうアーティストがいるんですけどどうですか?」ってこちらからQeticに提案することもあります。ようやく恩返しできるようになったのかなって思いますね。自分の中の点と点を繋いで仕事をしている感覚があります。これからまた、こういった経験を活かして、若手アーティスをベットしていけるような立場になっていきたいですね。

シャーロット株式会社代表取締役・津田昌太朗が語るQetic

「Qeticは目標であり、憧れでもある」そう話すのは、さまざまな仕事をQeticと共にしているシャーロット株式会社の津田昌太朗さん。彼もまたQeticに在籍していた一人だ。しかし、鈴木さんとは少し毛色が異なる。

シャーロット株式会社 代表取締役 津田昌太朗さん Photo by ai matsuura

津田さん:僕はもともと広告代理店に勤務していたのですが、そろそろ別のことがやりたいと思うようになって2013年に退職したんです。そのときに貯めたお金を使って、2年くらいかけて海外の音楽フェスティバルを巡ろうと考えていたのですが、そのタイミングで知り合ったのが宍戸さんでした。共に音楽が好きだということもあり、すぐに意気投合。僕が海外に行くって話をしたら「良かったらコラム書いてみない?」って誘われたんです。

その後、ヨーロッパに渡った津田さんは、世界で開催される様々なフェスティバルをめぐり、自らで発信し続けた。Qeticとは、コラムや海外在中のライターとして仕事をした期間だった。そして約2年後、Qeticで一緒にプロジェクトをやらないかと誘われることに

津田さん:ちょうど貯金が底をついたタイミングで宍戸さんから「今度、あるメディアを立ち上げるんだけど一緒にやれないかな」と連絡があって。ただ、僕自身もすでに自分のメディアを持っていたのでどうしようかと考えていました。そこで、プロジェクトベースで関わりメディアを立ち上げるという話になりました。このタイミングだと思い、帰国することを決断しました。ただ、当時は本当にお金がなかったので、行く予定だったオランダのフェスのチケットを売って日本行きの航空券を買って帰国したんです。

Photo by ai matsuura

当初から津田さんは、独立をする構想があり半年間Qeticに在籍する形となった。代理店時代の知見と、フェスに関する豊富な経験と知識は、特にQeticに在籍する若い社員に大きな影響を及ぼした。また、津田さん自身もこの期間で、メディアを運営していくノウハウを収穫できたという。そして現在、津田さんは日本最大級の音楽フェスサイト「Festival Life」を運営する会社の代表として事業を展開しているラジオや雑誌など、メディアにも数多く出演。Qeticとは現在も、プロジェクトベースで仕事をともにしているそう。

津田さん:Qeticにはフックアップの精神が根付いてるんですよ。それこそ、何の実績もない僕にコラムを書かせてくれたこともそうですし。経営陣がうまくバランスを取ってくれるから、若い子たちががむしゃらになれるんですよね。

 

フォトグラファー横山マサトが語るQetic

横山マサトさん

Qeticの特徴のひとつが、若手を積極的に起用すること。現在、フォトグラファーとして活躍する横山マサトさんもQeticが見出した才能の一人だ。しかし、その始まりは悲惨なものだった。というのも、横山さんが一発目の仕事で大失態を起こしたのだ。

横山さん:僕がQeticで初めて仕事をしたのは、フォトスタジオでアシスタントをしていた頃でした。ここにいる鈴木健くんが大学の同級生で、そのよしみでライブ撮影を任せてくれたんです。でも、その頃は未熟だったからうまく撮れなくて。なんとか仕上げて納品したんですけれど、宍戸さんから「プロとしてありえないクオリティです」と叱責されたのを覚えています。

通常であれば、その時点で仕事が来なくなってもおかしくない。が、宍戸さんは以後も横山さんに写真を依頼し続けた。そこにはある想いが。宍戸さんがQeticを立ち上げた2009年頃は、Webメディアというものがまだ世間に認知されていなかった。「ブログと何が違うの?」そんな言葉を受けることもあったという。どのように差別化していくか。それを考えた末に出した結論のひとつが、新しいデザイン、ビジュアル、コンテンツを作ることだった。ルールのない自由なコンテンツを作りたい、それを実現するには、“ベテランに相談しないこと”だった。まだ名前のない人と一緒にメディアをつくっていく。そして、一緒に成長していく。そう決めた。だから、ただ一度の失敗で見限ることはQeticそのものを否定してしまうことになると宍戸さんは考えたのだ。

Qeticの特集で撮影した横山さんの写真
特集「水曜日のカンパネラと日光市の共同プロジェクト『名画ニッコウ座』より
https://qetic.jp/music/meiga-nikko-za/280029/

横山さん:僕、自分の名前で写真が掲載されたのはQeticが初めてだったんですけれど、何者でもない僕をフォトグラファーとして起用し続けてくれたのはすごいことですよね。

現在、横山さんは著名なアーティストやタレント、企業案件も含めを数々の撮影をこなす人気カメラマンに。もちろん、Qeticでも重要な撮影を任されている。これはフォトグラファーに限ったことではない。若手のライターを起用するときには、きちんとした記事になるまで宍戸さんは朱字を入れ続けるという。これは両者にとってとてもしんどいやりとりだが、現在では多くのライターがQeticだけでなく、他メディアでも活躍している。パートナーと一緒に成長していきたいという想いは結実しているわけだ。

 

変わること、変わらないこと。Qeticのこれから

三人のような協力者のおかげもあり、順調に規模を拡大しているQetic。来年にはメディア立ち上げから10年の節目を迎えるわけだが、次のフェーズに進むために新たに取り組んでいることがあるという。

宍戸さん:ひとつは「QETISCHOOL(ケティスクール)」という勉強会の開催。会社以外のメンバーから学ぶ機会を増やすために開いています。前回は津田さんにも登壇してもらったんですけれど、そうやって外部からゲスト講師を招いて、講義やグループディスカッションをしています。もうひとつは「QETINIGHTYOUNG(ケティナイトヤング)」というイベントの運営。今年の6月にEBISU BATICAで初めて開催しました。これは Qeticにいる若い子たちにすべてを任せているんです。ブッキングはもちろん、フライヤーの制作とかも。あと出演している子もいましたね。

会社の規模やフェーズが変わってくると、企業文化を伝えるのが難しくなってくる。またコミュニケーションも希薄になりがちに。そういった課題を補うための施策が「QETISCHOOL」と「QETINIGHTYOUNG」というわけだ。

宍戸さん:いわゆる編集とかデザインの仕事って、どこの会社も同じようなことをしていると思うんです。じゃあ、Qeticは何が違うのかという話になったときに、「QETISCHOOL」や「QETINIGHTYOUNG」みたいなものがうまく機能すればいいなと考えています。

そうした会社としての変化がある一方で、いつまでも変わらない、変えないと決めていることもある。それが真面目に取り組みつつも遊び心を忘れないことだ。

工藤さん:Qeticの仕事は、大きくメディア運営とクライアント案件のふたつに分かれるのですが、その両輪をうまく動かしつつも、遊び心を忘れないことが大切だと思っています。例えば、メディア運営で実験的なことをして、それをクライアント案件に還元することもあって。

Qetic Inc. 工藤 雄一さん

鈴木さん:確かにそれはありますよね。クライアント案件でも普通だったら提案できないちょっと尖った企画を2割くらい盛り込んでたりしますし。その攻めと守りのバランスをうまく取りながら回しているのがQeticらしいですよね。

工藤さん:そうですね。それが社風にも表れているんじゃないかなと思います。

宍戸さん: 今日なぜこの三人に集まってもらったのかというと、そのQeticらしさでいうところの人との繋がりを大切にして仕事をしていることを知ってほしかったからなんです。その価値観が合わないと違和感を感じながら働くことになってしまうと思うので。そして、仮に会社を離れることになったとしても、鈴木くんや津田さんのように一緒に仕事をしてQeticのことを考えてくれるような会社として、ずっと続いていけたらと思っています。すごく失礼な話ですけれど、伝統って100年くらい続けていたら勝手にできるものじゃないですか。それで言えば、10年なんてまだヒヨコみたいなもの。だからこそ、これからもQeticらしさを忘れずにいけたらと思います。

 



<Recruit Information>
Qeticでは下記の職種を募集しています。
・フロントエンドエンジニア
・編集者
・インターン

募集内容については下記よりご確認ください。
>>https://qetic.jp/recruit/

Qetic Inc. 代表取締役 宍戸 麻美さん

PROFILE

宍戸麻美

20代前半より海外系の音楽を扱うレーベル兼イベンターを経て、2009年4月に某IT企業へ転職。新規事業部にて「ニュースメディアQetic」を開設。以降同サイトの編集長を努める。2011年にQetic株式会社として独立。ユーザー解析を通してエンタメ情報全般を発信するメディアへと成長させる。現在は自社のメディア以外に、企業やブランドのメディア構築運用、デザイン制作、コンテンツ制作を行う。地域自治体とのプロジェクトにも関わるなど、多岐の分野に渡る、コンテンツマーケティング事業を展開している。

PROFILE

工藤雄一

2008年から2011年まで、自身の事業を立ち上げ経営者として会社を運営。新しい事業展開を実現するために、自らの会社を解散。2012年、Qetic株式会社にジョインする。アートディレクターとしてクリエイティブ面を統括。また、フロントエンドエンジニアとして、UI・UX設計、コーディングまで担う。

PROFILE

鈴木健

KEN SUZUKI profile 1985/10/15 Think Global,Act Local. from EBISU BATICA.

PROFILE

津田昌太朗

世界最大級の音楽フェス「グラストンベリー」に参加したことがきっかけで、2013年に博報堂を退社後、活動拠点をイギリスに移し、海外フェス横断プロジェクト「Festival Junkie」を旗揚げ。現在は、自社メディア「Festival Life https://www.festival-life.com/ 」を運営するほか、エンタテインメントを軸とした事業コンサルティングを行っている。2019年4月に初の著書「THE WORLD FESTIVAL GUIDE」を出版予定。

PROFILE

横山マサト

フォトグラファー

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