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21歳の映像クリエイターが見据える、「次の時代のチームのあり方」

クマ財団の若き実力者たち #2 映像ディレクター/VJ 市川稜

1996年生まれ、21歳の市川稜は「ULTRA JAPAN」や「サマーソニック」などの音楽フェスティバルにてVJを担当し、トラックメイカーなどのMV制作も手がける映像クリエイターだ。テクノロジーによってアップデートされる映像表現に貪欲に挑戦する彼は、若きクリエイターを支援する「クマ財団」第1期生のメンバーでもある。そんな21歳の若きクリエイターは自らの映像表現をどのように捉え、クリエイターとして成長してきたのだろうか。

様々な映像表現に取り組む中で見つけた “自分らしさ”

ーーVJ・MV制作、インスタレーション、プロジェクションマッピングと幅広い映像制作に取り組まれています。様々な表現に挑戦し、自らのできることを広げようとしているのは意図的なのでしょうか?

市川さん:意図的に取り組んでいます。ある表現を突き詰めることも大切ですが、それしか知らないと盲目的な表現になりがちです。VJやプロジェクションマッピングの知見があるからこそ、実写の表現に新しい視点を持ち込めるかもしれない。VJとしてキャリアをスタートしましたが、それにとらわれずに「既視感のない表現」を達成することを意識しながら、新しい表現に挑戦しています。

 

ーー「映像」という分野では、新しい表現に挑戦する際にテクノロジーの影響は避けられないかと思います。市川さんのテクノロジーとの向き合い方を教えてください。

市川さん:テクノロジーそのものは特別視していません。野球で言うとバットやボールのようなもの。ただ、確かにテクノロジーによって新しく可能になった映像表現も多いです。新しいテクノロジーが登場する中で、どうすれば自分らしい使い方と表現ができるのかを常に考えていますね。

 

ーー今まで手がけられた映像の中で、最も“自分らしさ”が出たものを教えてください。

市川さん:TREKKIE TRAXやMaltine Recordsから楽曲をリリースしているアーティスト・Lolica Tonicaの「Eyes on you」という楽曲のMV制作ですね。今年の1月に公開したものなのですが、この作品から明確に自分の色がわかるようになってきたんです。大学1年生の頃にVJを始め、大学2年生の頃から映像制作を手がけるようになりました。様々な表現に挑戦する中で、自分がやっていきたいことを見つけたターニングポイントとなる作品です。

 

ーー「Eyes on you」のMVのどのような点が“自分らしく”感じていますか。

市川さん:「エモーショナルさ」です。この作品以降、エモーショナルさを全ての制作で意識するようになりました。

 

ーー「エモーショナルさ」とはどのようなものなのでしょうか。

市川さん:まだ完全に言語化できていないのですが、その根源的な部分には「光と影のあり方」が関係しているのでは、と考えています。これは実写映像に限らず、インスタレーションやプロジェクションマッピングでも同じこと。たとえば、実写映像をつくる時の影の入り方や、ULTRA JAPANでVJをしていて夜になった時の光と影の入り方を調整することで、エモーショナルさが生まれると考えています。

 

クリエイティブに、そして豊かに生きるために

ーー市川さんは学生時代からディレクターやプレイヤーとして様々な映像制作を手がけられています。どのように仲間を集めて、取り組んでいるのでしょうか。

市川さん:自身がプロジェクトオーナーの場合は、旗を立てて人を集めます。プレイヤーとして誰かのプロジェクトに参加することもありますね。最近担当したJALのプロジェクションマッピングの仕事は、自分がプロジェクトオーナーとなって人を集めていきました。一方で、ひとりのカメラマンとして現場に入ることもあります。

 

ーーディレクターとプレイヤーのどちらも担当するのはなぜでしょうか。

市川さん:まだ勉強不足の分野も多いので、新しいスキルを獲得するためにプレイヤーとして参加します。ディレクターとして入る時は「考える」能力にアップデートをかけるためです。両者で得られるスキルや経験値は異なり、プロジェクトへの参加を通じてスキルを更新していく中で、自分はどのような役割を果たせるかを常に考えていきたいですね。

 

ーーこれまで様々なプロジェクトに関わる中で、働きやすいチームや理想のチームのあり方は見えてきましたか。

市川さん:専門性を持った個人がプロジェクトごとに集まる働き方がいいのではないか、と考えています。いまの30歳前後の方はクリエイティブ集団をつくって仕事に取り組んできました。一方で僕ら20代は個人として成り上がり、個人の集合体で新しい表現に取り組んでいく。上の世代へのカウンターカルチャーとして働き方が変化している実感があります。

 

ーー強い個人が集まりプロジェクトを進める中で、気をつけていることはありますか。

市川さん:2つあります。1つは、関わるメンバーが自身の専門領域を広く持つことです。たとえば自分の場合はデジタルアートの方をMVにアサインできるというように、領域横断的な動きがしやすい。他の専門性のある人との共通言語を持つ上で、様々な表現ができるほうがいいと考えています。
もう1つは、自分たちがやらなくていいことは外部に切り出すこと。単純作業をチーム内で分け合うのではなく、外部のリソースを活用します。まわりに暇な学生がたくさんいるので、作業をお願いすることが多いです。僕がこのインタビューを受けている間にも作業は並行で進みますし、雇用も生まれますから。僕がひとりだけお金を持つよりも、皆でそれを分け合うほうがいい。

 

ーー自分がやるべきではないことを手放し、やるべきことにフォーカスするということでしょうか。

市川さん:そうですね。自分がプロジェクトオーナーだった場合は、手を動かすよりも、考えることに時間を割きます。リファレンスを探して、何を作るかを考えることが大事です。無駄を排除して、自分がやるべきことに集中する。今はいかに効率的に仕事を回していくかに挑戦しています。稼働率100パーセントで、人生を削りながら制作に取り組むことはしたくない。30パーセントの稼働で、豊かに生きることが大事ではないでしょうか。

 

他分野のクリエイターと交流する中で、「映像」という専門性を相対化できた

ーー市川さんがクマ財団に参加してもうすぐ1年が経ちます。クマ財団で出会ったクリエイターの特徴を教えてください。

市川さん:クマ財団には、ひとりで生きていこうと考えている独立志向のクリエイターが多い印象です。彼らの動き方から、自分もクリエイターとして「どのように生きていくか」を考えるようになりました。

 

ーー他のクリエイターの方の生き方やスタンスが参考になったということですよね。

市川さん:そうですね。クマ財団に所属する他分野のクリエイターと交流する中で、「映像」という自らの専門性を相対化できるようになりましたね。映像は同世代でやっている人が少なく、常にテクノロジーが更新されるので前例が少ない。そのため、専門性を持ってお金になりやすい分野なんですね。一方で、クマ財団にいる漆塗職人や日本画家の方はその分野に長い歴史がある中で生き抜いていかなければいけない。やっぱりタフさが違いますよね(笑)。

 

ーー「クマ財団」から様々なリソースや、交流機会の提供があったかと思います。参加して得られたものはなんですか。 

市川さん:2つあります。1つは、意識を高めてくれることですね。クマ財団のコンセプトは「5年以内に世界で活躍するクリエイターを世に送り出す」こと。その目標に向かって努力している同期と接していると、自分も世界で認められるクリエイターになるためにはどのように戦略的に動けばいいのかを考えるようになりました。好き勝手やって、生活ができる環境に甘んじていてはだめですよね(笑)。
もう1つは、お金です。いまは映像制作で稼いだお金は、機材を買ったりと自分への投資に使っています。それだとお金を貯めることができないので、来年以降のためにクマ財団の奨学金は貯金しています。

奨学金があることで、やりたい仕事にフォーカスできる

ーー市川さんはいま大学4年生ですよね。来年以降のために貯金しているとのことでしたが、卒業後の進路をどのように考えていますか。

市川さん:まず1年間は、映像制作を中心にフリーランスとして仕事をする予定です。フリーでやっていけるのか、やっていけたとしても好きなことができているのか、考えながら自分の進むべき道を選びたいですね。

 

ーーどの分野のクリエイターにも共通する課題かと思いますが、「楽しいけど稼げない。稼げるけど楽しくない」その仕事のバランスを考えていますか。 

市川さん:今もその壁にぶつかっています(笑)。クマ財団の奨学金を貯金しているのは、大学卒業後の生活費のことを多少は考えなくて済むようにです。「稼げるけど楽しくない」仕事をせずに、自分のやりたいことにフォーカスできるので。
ただ、大きなクライアントの仕事はお金にも、自身のブランディングにもなるので、そこは戦略的に取り組んでいきたいですね。「楽しくて稼げる」仕事はまだ多くないので、大切に育てていきます。

 

ーー最後に、今後挑戦したいことを教えてください。

市川さん:実は、最近悩んでいるんです。VJをメインに活動していた頃は、音楽フェスに出たいという夢がありました。去年サマーソニックとULTRA JAPANに出演させてもらって、その夢を達成してしまった。
続けていくことも大事ですが、音楽フェスのVJに取り組む時は、開催日に向かって数日はひとり合宿をして制作に集中するんです。出演後の完全燃焼が、達成感をより大きなものにしてしまって。

映像制作の分野では、メジャーアーティストのMVを撮りたいという目標はありますが、自分にとって夢になるようなものはまだ見つけられていません。これから「エモーショナルさ」を大切した実写映像に取り組みながら、それを見つけていきたいですね。

PROFILE

市川稜

Film Director/VJ。ULTRA JAPANのVJやハウステンボスでのプロジェクションマッピングをはじめ、MVやインスタレーションの制作など多角的に活動を行なっている。テクノロジーの中に存在する情報を自らの視点で解釈し、目で見ることの出来るものへの表現へ還元することを目指す。メディアとしての映像、グラフィックス、プログラミングを包括的に、分野に拘ることのない制作をしている。

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