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茨城県を実験の場にして、持続可能な地域社会の実現を目指す「if design project」

茨城県庁 × 株式会社リビタ × 茨城移住計画

さて質問。ブランド総合研究所が毎年実施している「全国都道府県魅力度ランキング」で5年連続最下位の県はどこ? 正解は茨城県。関東地方の北東部に位置するこの県は、なぜだか多くの国民から“魅力がない”と思われている。その一方で、多くの茨城県民はこの結果に疑問を持っているという。その理由は、多くの茨城県民が“魅力がある”ことを知っているからだ。たとえば、農業産出額は北海道に次ぐ全国第2位。研究拠点も豊富で、製造品出荷額は全国第8位を誇る。こうした状況があるからこそ、茨城県民は本気になってこなかった。だが、これからはそうも言っていられない。茨城県の人口は2016年に7年ぶりに社会増となったものの、2000年以降減少が続いている。そこで、この状況に歯止めをかけるべく、これまでと違った茨城県の魅力を発信していく計画が立ち上がった。「if design project」と名付けられたこのプロジェクトでは、東京と茨城を約3ヶ月間行き来しながら、自治体や地元企業と一緒にフィールドワークや講義、ワークショップにチームで取り組む。そのなかで茨城県の魅力をどうやって発信していくかを考えていくという。なにやら面白いことが起こりそうな予感。プロジェクトの発起人である茨城県政策企画部計画推進課の小森学さん(同・中央)、株式会社リビタの増田亜斗夢さん(写真・左)、茨城移住計画の鈴木高祥さん(同・右)に話を伺った。 

フィールドワーク×講義×ワークショップで茨城の可能性を考える

まずは、あらためてプロジェクトの概要から。この「if design project」には、茨城県にある3つの企業がパートナーとして参画する。サッカークラブの「水戸ホーリーホック」、生産量日本一を誇る茨城県のなかでも有数の産地である笠間の栗をブランド化している「あいきマロン」、筑波山頂入口でカフェの経営や観光スポットの紹介などをしている「日升庵」だ。参加者は3つのチームに分かれて、それぞれの企業が抱える課題と向き合っていくことになる。どうしてこの3社が選ばれたのだろうか?

小森さん:茨城県は、県北、県央、鹿行、県南、県西と5つに分けることができるのですが、どうせならすべてのエリアの魅力を楽しんでもらおう、と。そこでエリアごとに企業へ参画を呼びかけ、応えてくれたのが今回の3社だったんです。「地域」をテーマの軸に、それぞれ「スポーツ」「食」「山」と違った切り口で提案を考えられるようにしたいと企画を練っています。

そこでモデルケースにされたのが、リビタが企画・運営している「メーカーズキャラバン」だった。

増田さん:リビタでは、参加者が地域のものづくり企業と一緒にアイデアソンを行う「メーカーズキャラバン」というプロジェクトを企画・運営しているのですが、同じようなことを「if design project」でもできないかなとイメージを膨らませました。企業の課題を解決するだけでなく、それを踏まえて地域の社会をどう描いていくか。そこまで考えていけるような仕組みをつくっていければと思っています。

そして、プロジェクト期間が約3ヶ月と長めに取られているのも特徴のひとつ。参加者は、初回で各企業と一緒にフィールドワークを行い、そこでの気づきを踏まえて、残り3回のワークショップに取り組んでいく。しかも、それぞれのチームには、テーマとなっている分野に長けたメンターも付く。

増田さん:メンターにはテーマとなる軸だけでない幅広い視点で活動されている人を選びました。例えば「スポーツ×地域」のチームでは、ただスポーツに精通しているだけでなく、そこに農業やアートを掛け合わせた取り組みを行っている坂口淳さん(※)という方にメンターをお願いしています。それは「if design project」が多様なテーマを設けているからです。できれば「スポーツ」に興味を持って参加した人にも「食」や「観光」に興味を持ってほしいな、と。
※越後妻有アートトリエンナーレ大地の芸術祭で知られる新潟県越後妻有で女子サッカーリーグ「なでしこリーグ」への参戦を目指す、農業実業団「FC越後妻有」を立ち上げ、過疎や高齢化の進む地方の課題と、アマチュアスポーツの課題を同時に解決しようとしている

また、参加者同士の交流が深まる工夫もしていくそうだ。

鈴木さん:「if design project」は全4回のプログラムの合間にも、みんなで茨城に行く機会を設けるなど、任意参加のイベントも行おうと思っています。それぞれのチームメンバー同士はもちろんのこと、チームに関係なく交流できる仕掛けをしていければと。そこで横断的に仲が深まり、ここでしかないできない繋がりが今回のプロジェクトを通してできればいいなと考えています。

「茨城と言えばこれ」という枕詞をつくりたい

こうした機会を数多く設けるのには、ある理由が。それは「茨城県を実験場にしてほしい」という想いがあるからだ。

小森さん:茨城県にはやれることしかない、くらいの気持ちでいますから。だから、1回限りで終わりにしたくないんです。できれば、今回のプロジェクトへの参加をきっかけに、継続的な付き合いをしていければいいなと。そのためには、茨城県内のキーマンと繋げることが必要なのかなと思ったんです。何か思いついたときにこの人に相談したら物事が動く。そういう繋がりをつくりたいですね。でないと、茨城に来て楽しく学んでおしまいになってしまうなって。

鈴木さん:それに茨城県を持続可能な地域にしていくためには、きちんと理由を考えていかないといけないと思うんです。そのためには、「茨城と言えばこれ」という枕詞になるものをつくる必要があります。

増田さん:「全国都道府県魅力度ランキング」って質問項目が5段階評価なんですね。「魅力がある」で10点、「まあまあ」で5点、「どちらでもない」以下は0点。茨城県は「どちらでもない」が多いらしく、結果として点数が低いんです。

鈴木さん:つまり、茨城県ってこれというイメージがないんです。

小森さん:だからこそ、今回のプロジェクトでイメージをつくっていきたいなと。景色を見るときって、遠くを見るじゃないですか。それと同じで、茨城って東京から近すぎて選択肢から外れていることが多いと思うんです。だから、あらためて近くを見てみたら茨城があった、という状況をつくりたいですよね。それだけの魅力がある場所だと僕たちは思っているので。

そして、3人は「if design project」のその先についてもすでに考えている。

鈴木さん:僕たちは、このプロジェクトを通して人とアイデアが循環する仕組みをつくっていきたいんです。そのために県の内からも外からも良いシナジーを生み出したい。県内ではクリエイティブな瞬間に立ち会える。県外からは茨城がリデザインされていく姿が見える。そのなかで茨城を魅力的に思ってくれる人が増えていくことを期待しています。

増田さん:そうした過程を経て、人が人を呼ぶプロジェクトになってくれるといいですね。それこそ、「if design project」に参加しなかったことを後悔するくらいのものになってくれれば! それで「東京からこんな近くに実験の場があるんだったら自分も参加してみたい」と思ってくれる人がひとりでも増えたら、ポジティブな循環が起きるんじゃないかなって。

小森さん:最終的には移住に繋がってくれればと思っているのですが、そのためにまずは茨城県で何ができるのかを知ってほしい。そこで可能性が見えることで、関係性ができてくるのかなと思います。

 

茨城県はまだ開拓が進んでいないフロンティアだ!

ちなみに、どのような人に「if design project」へ参加してほしいのだろうか。

小森さん:参加してくれる人の層は3パターンくらいあると思っていて。ひとつは、それぞれのテーマに関心があり、何かしら取り組んでいるけれど、それを展開できるフィールドを持っていない人。ふたつ目は、何かしたらやりたいことは決まっているけれど仲間がいない人。そしてみっつ目は、茨城県出身者で、将来的に茨城県のために何かしようと思っていたけれど機会がなかった人。それぞれの属性の人が集まってくれると、うまくバランスが取れるんじゃないかなと期待しています。

鈴木さん:僕は、事務局の発想力を超える“訳がわかんない人”に来てほしいですね。例えば、笑顔のチカラで突破していける人とか、話していることをイラストに変換してくれる人とか。それこそ、自分たちにないスキルや価値観を持つ人が来てくれると、化学反応が起きて面白くなるんじゃないかなって思います。

増田さん:先ほど「茨城は実験場」という話がありましたが、まさにそうだなって。フロンティア感が強いんですよね。いろいろ良いところはあるんだけれど、それがまだ開拓されていない気がするんです。フロンティアを開拓することに面白さを感じてくれる方であれば楽しめるのかなと思います。

PROFILE

茨城県庁

「住みよさランキング」において茨城県内の多くの市町村が上位にランクイン。東京から近いうえに自然が豊かで,住宅敷地面積が全国第1位など暮らしやすい。太平洋に面しており国内最高峰のサーフィン大会が開催されるなどマリンスポーツを楽しめたり,山・湖や歴史的・文化的資産を楽しめる全長約180kmのサイクリングコースが整備されるなどスポーツも盛ん。最近では「活力があり,県民が日本一幸せな県」を基本理念に“人財”育成やIoT・AIを取り入れた新産業の育成などに力を入れている。

PROFILE

株式会社リビタ

「くらし、生活をリノベーションする」をコンセプトに、既存建物の改修・再生を手がける会社として設立。近年は、東京・神田のシェア型複合施設「the C」を地方自治体の移住相談窓口や東京事務所として活用しているほか、大人の部活が生まれる街のシェアスペース「BUKATSUDO」で展開する講座・部活などを通じた地方との関係人口創出など、地方と連携した事業展開なども多くなっている。また、日野市産業連携センター「PlanT」では、参加者と企業が、技術やサービスの新たな活用法を考えていくプロジェクト「メーカーズキャラバン」を展開。地域のものづくり企業へ実際に足を運んで工場見学(見て学ぶ経験)を行うほか、ものづくりワークショップ(製品に自ら触れる機会)やアイデアソンを実施している。それ以外にも、これまでさまざまな場で蓄積してきた「コンテンツ企画・運営」「集客・プロモーション企画」「コミュニケーションマネジメント」などのノウハウを活かし、街やその地域のプレイヤーと連携しながら地域活性化や関係人口創出へと繋げていく事業を展開している。

PROFILE

茨城移住計画

茨城県にゆかりのある有志で結成。「住む人」「働く人」「関わる人」を増やすため、県内でのコミュニティーデザインや働き方、暮らし方の魅力を伝え「移住のための空間づくり」を目指す。テーマはスポーツ×移住。

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