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クリエイターに愛される空間のつくり方とは?
トランジットジェネラルオフィス、リアルゲイト代表対談【前編】

中村貞裕(トランジットジェネラルオフィス)× 岩本裕(リアルゲイト)

東京カフェブームを牽引した「Sign」などのカフェやレストラン約100店舗を運営し、世界最速の移動美術館「GENBI SHINKANSEN」などの話題となる空間プロデュースを行う株式会社トランジットジェネラルオフィス。そして、2009年に設立され、デザインコンシャスな大型SOHOビル「the SOHO」の運営を皮切りに、現在は中目黒の「THE WORKS」や表参道の「PORTAL POINT AOYAMA」など、都内に約45棟のシェアオフィスやイベントスペースを企画から運営まで手掛ける株式会社リアルゲイト。同社の手がけるオフィスは、常に満室状態が続くほど、感度の高いクリエイター達からの支持を受けている。その二社を率いるのが中村貞裕氏、岩本裕氏の2人のプロデューサーだ。空間、不動産、それぞれのバックグラウンドを活かし、東京に新たな風を吹き込んでいる。

なぜ、両社はクリエイターからの支持を受け、空間プロデュースのリーディングカンパニーとなり得たのか?そして、その仕事のアイデアはどのように生み出されているのか? これからの東京を盛り上げる2人に話を聞いた。

クリエイターの理想の空間を実現したオフィスレジデンス「the SOHO」

ーー飲食を中心に幅広いプロデュース業を行うトランジットジェネラルオフィスは2001年、リアルゲイトは不動産事業を担うグループ会社として2009年に設立されました。お二人が一緒に仕事をされるきっかけはなんだったのでしょう? 

岩本さん:最初は、私が当時手がけていたクリエイター向けのオフィス「the SOHO」というプロジェクトのプロデュースをお願いしたんですよね。

中村さん:知人を介して知り合ったのが最初ですね。体育会系の、豪快な不動産屋という印象でした(笑)。

株式会社トランジットジェネラルオフィス 代表 中村貞裕氏(写真右)

岩本さん:中村は、基本的に今と全く変わらず、ノリのいい人間というイメージでした(笑)。「the SOHO」はクリエイター向けのオフィス400戸をつくるという大規模プロジェクトだったのですが、その立ち上げの真っ最中でした。ただ、当時は彼がどんな人間で、何ができる人なのかはわからなくって。クラスカのようなすごい空間をつくっているのは知っていたので、この人となら面白い場所がつくれるんじゃないかという期待はありました。

株式会社リアルゲイト 代表 岩本裕氏

岩本さん:「the SOHO」のプロデュースにあたって、中村はまずファッションやアートなど様々なジャンルのトップクリエイター40名を集めて議論をしたんですよ。彼らが考える理想の施設をヒアリングして企画書を出してくれたんですけれども、想像よりも豪華な内容で。そこまでの事業予算はなかったですし「この人に任せて大丈夫かな?」とは、正直思いましたね。

そうした僕の思いを察知したのか、中村が「今度ニューヨークとロサンゼルスに一緒に来て欲しい」と誘ってくださったんですよ。

中村さん:僕、よく取引先の人を誘って海外に行くんですよね。つくりたいものに近いイメージを見てもらうのが一番早いので。岩本を誘ったのは、ザ スタンダードホテル、ハドソンホテル、ソーホーハウスといった当時盛り上がっていた海外のホテルカルチャーに触れてもらいたかったからですね。今やホテル業界で注目を浴びているエースホテルが出来るずっと前だったんですが、その雰囲気を感じてもらいたいなと。

中でもハドソンホテルが面白くって。プロデューサーを務めるイアン・シュレーガー(Ian Schrager)が「ニューヨークに泊まる」っていうコンセプトを打ち出して、寝る部屋は小さくていいから、レストランやカフェといった共用スペースを充実させたホテルだったんですよ。「the SOHO」は住宅ですが、ホテルには多くのヒントが詰まっていたので片っ端から見てもらったんですね。

岩本さん:実際に現地に足を運んで、彼の言葉の意味がわかりましたね。五感で感じないと本質的なことは理解できない。現地で食事をして、音楽を聴いて、そこで楽しんでいる人の姿を見てイメージを膨らませる。映画でしか見たことのないようなお洒落な人を目の当たりにして彼はこういうのがつくりたかったんだなと、すぐに理解しました。

 

ーー当時の日本からは想像もできない空間だったと思うのですが、そうした要素を取り入れることに成功の確信は掴めたのでしょうか?

岩本さん:不動産業界の一般論としては、1000平米あったら1000平米をそのまま貸した方が、効率的に収益が上がるという考え方なんですよね。でも、面積を700平米にしても、残りの300平米に価値を生めば収益を1.5倍することができる。理屈上はですが。当時は確信までは持てませんでしたが、今振り返ると、こうした考えは間違ってなかったと思いますね。

the SOHO(提供:株式会社リアルゲイト)

中村さん:ハドソンホテルって、部屋は狭いのに、めちゃくちゃ高いんですよ。じゃあ何でそこが人気なのかというと、デザインが良く、共用スペースが充実している。そうした場所で楽しそうに過ごしている方々を見て、確信は持てずとも直感的に理解してくれたんじゃないでしょうか。

岩本さん:そうですね。特に海外のホテルを見て、やるなら徹底しなきゃダメだなというのは思いましたね。中途半端なのが一番良くないです。

中村さん:デザインやインテリアだけではなく、制服や、BGM、アート、全てに手を抜かないことで初めて空間が完成する。味気ないオフィスではなく、クリエイティブな人たちはそういう空間を求めているんですよね。

 

ーーそうしたディティールへのこだわりが付加価値を生むと。

岩本さん:中村のプロデュースするカフェに行くと、500円のコーヒーを提供するお店でも、カップや制服もオリジナルで、インテリアにも一切手を抜いていない。気遣いが違うんですよね。そうしたディティールを見るのが飲食店なんだと感じました。

不動産事業でここまで目の行き届く人は多くないので、そこはヒントをもらいましたね。

センスを磨くにはミーハーになれ

ータイプの違うお2人ですが、一緒に働くなかで、お互いどのような部分に刺激を受けていますか?

岩本さん:こだわっている点が違うからこそ、参考になる部分は多いですね。他の誰も気づかないような細部のデザインに関して、マメにフィードバックをしてくれるんです。不動産会社が気にしないようなことに、喝を入れてくれるので、そこに刺激を受けますよね。逆にそこに目を配れる不動産会社だからこうやって支持されているんだと、身が引き締まりますね。

中村さん:僕は飲食が事業のベースにあったからだと思うのですが、プロデュースの際はスタッフ、お客さんのいるシーンを完成形として描いているんですよ。お昼にはこういう会社の人がランチに来て、どういう会話がされて‥‥、そういう姿から考えてるので。不動産の人は空間をつくることをゴールにしてしまいがちなので、その目線が大きな違いでしょうね。逆に、他の部分は彼に任せているので僕がアドバイスできるのはディティールだけですね。

 

ーーディティールというと?

中村さん:例えば、元サッカー日本代表の中田英寿さんのオフィスに伺うと毎回違うお茶菓子が出てくるんですよ。それが、どれもこだわっていて、おいしい。聞くと来客用のお茶菓子を決めるミーティングをしているらしいんですね。仕事の中から「とりあえず」を無くすために。ここまでこだわるのは大変だけど、来客の方には絶対喜んでいただけますよね。

こうした細部はみんな手を抜いてしまいますが、僕自身はそういう部分に目を配っています。来客用のお茶、マグカップ、オフィスに気に入らないものは絶対置かない。手土産を渡すなら、喜んでもらえるもの、誰かに話したくなるようなものを提供する。社員にもそれを言い続けることで、頭の片隅にも残り、空間が良くなっていく。一番細かい部分にこそ口に出すのが大事です。

 

ーー中村さんのそうしたセンスやこだわりを事業として形にしていかなければいけませんよね。かなり厳しい水準だと思うのですが、社内のメンバーにはどのように伝えているのでしょうか?

中村さん:センスを磨くには、良いものに触れるしかないですね。良い映画、音楽、レストラン。無意識のうちにも蓄積するものだと思います。ただ、インプットするだけでは「情報オタク」にしかなれないんですよ。

なので、うちの社員には良いものを大量に見て、それを「アウトプットすること」が大切と言い続けていて。センスを磨くにはアウトプット力を高めて「目利き」にならないといけない。

 

ーーどういうことでしょう?

中村さん:例えば、メディアって良い情報を出し続けるからこそ、別の良い情報が入ってくるんですよ。すると、本当にいいものに触れ続けることができ、よりセンスが磨かれる。

今SNSで、美味しいものをアップし続けている人って、1年もすれば、自然といい情報が集まると思うんです。

僕は社内のグループラインにどんどん写真を送ってるんですよ。「ここ行った?」「あれ見た?」って。そういう情報合戦の中に身を置いていると、自然と情報通になりますし、アウトプットする癖がついていきます。同じ情報に触れているので、センスの水準も段々近づいていきますよね。

 岩本さん:今日も、昨夜に参加したクラブイベントの様子を送ってましたね。

中村さん:今週末も上海の新しいホテルに泊まりに行きます。情報収集にはお金をかけることが大事ですね。かなりのペースで海外に行っているので、日本の雑誌よりも新しい情報を持っているんですよ。ネットを通じて自分たちよりも早くに知っている人たちはいるかもしれませんが、実際に見ている人はあまりいないので。

昔はここまで動くのは僕ばっかりだったんですけど、最近はうちのスタッフの方がどんどん行っていて、僕の方が遅れをとることもありますね(笑)。

岩本さん:ホテルも毎日場所を変えて、一日あたり8、9ヶ所のレストランを回って。それで、その後はクラブにも行きますからね。

中村さん:でも、それは海外でも日本でも一緒ですね。ミーハー仲間が行くような場所は僕も行かなきゃまずいなって。

岩本さん:その仲間に、「今何がおもしろい?」って聞かれますもんね。

中村さん:トップオブミーハーとしては知らないとは言えないですから(笑)。社内でも、こういう話ばっかりずっとしていますね。

「作り込まない」自由な空間がクリエイターに愛される 。

ーーそうしたセンスは空間にどのように取り入れているのでしょう?

岩本さん:クリエイターの人がどう考えるか、何を望むか、それをまずは理解することですね。クリエイターの方って、ある程度自分の空間をつくり出したいんですよ。なので物件のデザインを完成させすぎず、自由度を確保しておいて、あとは入居者の方にアレンジしてもらうようにしています。

反対に、アウトプットとして一番格好悪いのが、手を加えすぎてダサくなってしまうこと。適正で、クールなものをつくればいいのに、お金かけて失敗するというパターンが日本では多いですね。

中村さん:リアルゲイトが独自のポジションを確立できているのは、業種、年齢、性別ではなく、テイストでマーケティングをしているからなんですよね。例えば、多くの百貨店は年齢別、男女別のフロア構成ですが、本当にお洒落な人はテイストで選びますよ。多様な入居者が入ってくださっているという意味では、リアルゲイトのテイストが社会に受け入れられているのかなと。

岩本さん:大勢の意見に合わせずに、自分たちの目指すものを徹底すれば、必ず支持者は見つかりますから。

中村さん:基本的に、僕らは今自分たちが働きたいような空間をつくっています。このオフィスはニューヨークの昔の新聞社をイメージした、レトロな空間というオーダーを出していて。

トランジットジェネラルオフィス 内観写真(提供:株式会社リアルゲイト)

岩本さん:すると、スツを着るような人は自然と入居しないんですよね。この空間が居心地良いと感じる人が集まる。いくら新しくて安いシェアオフィスが出てきても、このテイストを好きな人はうちに集まりますから、競合にはならないんですよ。このスタンスが今では弊社の社のみとなっています。中村の良いところは、こうしたアイデアを制しないんですよね。投げるだけ。

中村さん:それは岩本がしっかり収支を見てくれいるからこそ、ですね。反対されることもあるのですが、取捨選択が適切だからこそ利益を出すことが出来ている。彼と組むことで、僕のアイデアがよりスピーディに形にできるという実感はあります。ただ、組織の規模が大きくなるにつれて、できないことも増えている気がしています。

 

ー普通は組織が大きくなると出来ることが増えていくのではないですか?

中村さん:僕の場合「出来ることイコールやりたいこと」なんですよ。出来ることが増えると同時にやりたいことも同じだけ増えるのですが、それを全て実行するには手が足りないんです。以前は10のやりたいことがあっても5つしか動かせませんでした。今は50を動かせるんですが、やりたいことが100あるんです。出来ることは10倍に増えているけど、できないことも10倍になっている。今は目の前のやりたいことに最速で取り組んでいるのですが、それでも追いつかない。フラストレーションが溜まりますね(笑)。

岩本さん:欲張りな人でしょう(笑)。だからこそ、こんなに次々とアイデアが湧き出してくるのだと思いますけどね。彼のフラストレーションがなくなるよう、私もそのアイデアをどんどん具現化していくつもりです。

 

>>後編「2020年、東京のナイトシーンが盛り上がる」へ続く

 



CREDIT

Interviewee:Sadahiro Nakamura(TRANSIT GENERAL OFFICE INC.)
Interviewee:Yutaka Iwamoto(REALGATE INC.)

Editor / Writer / Interviewer:Naoki Takahashi
Photographer :Keta Tamamura

Producer / Account Executive:Yuki Yoshida (BAUS)
Project Manager :Koujirou Ichimura (BAUS)


 

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